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第三章 解き放たれるゴーレム
第二十七話 ゴーレム、お客様を出迎える
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どのくらい時間が経ったか・・・わからない。
オレの全身は苔で覆われて長いツタが幾重にも絡みついていた。
待機を命じられて、身動きが取れなかったせいだ。
探知と感知を使って洞窟内や森の中の様子は見て取れていた。オレに出来たのはそれだけだ。
じじいは相変わらず洞窟の奥。
その洞窟も草と木に覆われて、半分以上入り口が塞がっていた。
眠ることも、死ぬことも。動くことも出来ないオレだが、変わらず立ち続けていた。
きっと精神も病んでいるだろう。
そんなある日、変化が起きた。
森の東側から、人の気配を感じる。
冒険者だろうか。こっちに向かってくる。
数は5。
オレのこと破壊してくれねえかな・・・無理か。
せめてじじいを殺してくれねえかな。
「やはり・・・国崩し!先生の仇!!」
オレを追って来たのか。5人の人間がオレの前で立ち止まった。
金髪の青年がそこに立って剣を抜いた。
恰好いいなあこいつ。前に見た勇者は野武士っぽいイメージだったけど。こいつはなんか絵に描いたような勇者だ。
や、装備は前見た勇者サマの方が豪勢でしたけどね。
「これは・・・壊れているのか?」
青年の横の男が呟いた。こいつは茶色い短髪の、戦士?かな。どでかい斧を持ってる。
結構禍々しいけど、それ呪いのアイテムじゃないよね?
ああ、そういえばツタまみれだった。動かないと思われるかもしれない。
「壊れているなら好都合!切り捨てる!」
「こいつ動き出したら逃げるからな」
「同じく」
「同じくにゃ」
「ん」
その言葉に青年が肩を落とす。
「そこは、ほら。共に戦うって言ってくれるところじゃないのかな?」
「無理だろ。先代でも傷一つ付けられなかったって話なんだ。オレ達が束になったところでどうにもならんだろ」
「三カ月もの間休みなく破壊の限りを尽くした人類の天敵よ?自然災害に近いって意見も出てるくらいなのに。私たちには荷が重いわ」
「つよい」
「下手に刺激しないほうがいいにゃー」
「それよりも後ろを見て、洞窟じゃないかしら?」
洞窟に気づいたのは弓を持ってるエルフの女性だ。やっぱエルフといえば弓なのかな。
この人見覚えがある。一番最初の村の人だ。
「門番かもしれないにゃ。洞窟に近づいただけでドーン!って動き出したら間違いにゃくにゃーはにゃみだ目になるにゃ」
この女の人は聖職者だな。うん。
絶対そうだ、The僧侶だ。真っ黒の長い髪を伸ばした、蒼い眼の女性。
でもって猫耳?か。尻尾も見える。
あと胸がおっきい。
胸がおっきい。
「・・・・・」
もう一人の・・・小さい女の子は魔法使いかな?ちっこい。じっとこっちを見ている。
少し大きな杖を持ってる。透き通った薄い白髪の女の子。
ショートカットなのがおしいね、そこはツインテでは?
あれ?オレ普通に思考出来てるじゃん?
もっと壊れてるかと思った。まあいいか。
「動かないなら好都合だ。話によるとこちらの攻撃はほとんど通じないらしいからな」
戦士風の男が言った。
確かにそうだね。
「自分は、4年前とは違います」
「4年でお前の先生を超えられたのか?それなら斬ってみればいいさ」
「それは・・・」
「はいはい、敵の前でおしゃべりしないの」
「そうですにゃ、動き出したらどうするんですにゃ?」
「アイ、あほ」
あほは言い過ぎでは?
「メル、アホは酷くないかい?」
「んーん」
「・・・でも本当に動かないわね?」
動かないんではなくて動けないんです。いまなら攻撃し放題ですよ?ダメージぷりーず。
「念の為、警戒しながら洞窟に入りましょう。挟み撃ちが怖いですけど、最悪メルの時空魔法で逃げればいい」
「あら、アイにしてはいい考えね」
「それしかねえか。じゃあそんな感じでいくか」
「了解にゃ!」
「ん!」
5人組は話しながら、洞窟の中へと向かっていった。
メルと呼ばれた女の子がこっちに戻ってくる?
どうした?
「・・・・・・・・・」
オレの目の前でその子が止まる。オレを見上げている。なんだ?
「ありがと!」
は?ありがと?何?感謝されるようなことなんかしてないけど?
あ、行っちゃった。何なんだ?
・・・しかし『ありがとう』だって?人に感謝されるなんていつ以来だろうか。
なんかジーンとこみ上げるものがあるね。
しばらくすると、合流出来たようだ。まあ一本道だもんね。オレでかくて途中から通れないけど。
洞窟の奥に向かっていくのを探知と感知を合わせて観察する。
いいぞ、じじいとご対面だ。
地下から振動が聞こえだした。
どうやら戦闘が開始されたらしい。
だが、すぐに戦闘の気配が感知出来なくなった。
この体になって初めて、意識を手放すことがオレは出来た。
オレの全身は苔で覆われて長いツタが幾重にも絡みついていた。
待機を命じられて、身動きが取れなかったせいだ。
探知と感知を使って洞窟内や森の中の様子は見て取れていた。オレに出来たのはそれだけだ。
じじいは相変わらず洞窟の奥。
その洞窟も草と木に覆われて、半分以上入り口が塞がっていた。
眠ることも、死ぬことも。動くことも出来ないオレだが、変わらず立ち続けていた。
きっと精神も病んでいるだろう。
そんなある日、変化が起きた。
森の東側から、人の気配を感じる。
冒険者だろうか。こっちに向かってくる。
数は5。
オレのこと破壊してくれねえかな・・・無理か。
せめてじじいを殺してくれねえかな。
「やはり・・・国崩し!先生の仇!!」
オレを追って来たのか。5人の人間がオレの前で立ち止まった。
金髪の青年がそこに立って剣を抜いた。
恰好いいなあこいつ。前に見た勇者は野武士っぽいイメージだったけど。こいつはなんか絵に描いたような勇者だ。
や、装備は前見た勇者サマの方が豪勢でしたけどね。
「これは・・・壊れているのか?」
青年の横の男が呟いた。こいつは茶色い短髪の、戦士?かな。どでかい斧を持ってる。
結構禍々しいけど、それ呪いのアイテムじゃないよね?
ああ、そういえばツタまみれだった。動かないと思われるかもしれない。
「壊れているなら好都合!切り捨てる!」
「こいつ動き出したら逃げるからな」
「同じく」
「同じくにゃ」
「ん」
その言葉に青年が肩を落とす。
「そこは、ほら。共に戦うって言ってくれるところじゃないのかな?」
「無理だろ。先代でも傷一つ付けられなかったって話なんだ。オレ達が束になったところでどうにもならんだろ」
「三カ月もの間休みなく破壊の限りを尽くした人類の天敵よ?自然災害に近いって意見も出てるくらいなのに。私たちには荷が重いわ」
「つよい」
「下手に刺激しないほうがいいにゃー」
「それよりも後ろを見て、洞窟じゃないかしら?」
洞窟に気づいたのは弓を持ってるエルフの女性だ。やっぱエルフといえば弓なのかな。
この人見覚えがある。一番最初の村の人だ。
「門番かもしれないにゃ。洞窟に近づいただけでドーン!って動き出したら間違いにゃくにゃーはにゃみだ目になるにゃ」
この女の人は聖職者だな。うん。
絶対そうだ、The僧侶だ。真っ黒の長い髪を伸ばした、蒼い眼の女性。
でもって猫耳?か。尻尾も見える。
あと胸がおっきい。
胸がおっきい。
「・・・・・」
もう一人の・・・小さい女の子は魔法使いかな?ちっこい。じっとこっちを見ている。
少し大きな杖を持ってる。透き通った薄い白髪の女の子。
ショートカットなのがおしいね、そこはツインテでは?
あれ?オレ普通に思考出来てるじゃん?
もっと壊れてるかと思った。まあいいか。
「動かないなら好都合だ。話によるとこちらの攻撃はほとんど通じないらしいからな」
戦士風の男が言った。
確かにそうだね。
「自分は、4年前とは違います」
「4年でお前の先生を超えられたのか?それなら斬ってみればいいさ」
「それは・・・」
「はいはい、敵の前でおしゃべりしないの」
「そうですにゃ、動き出したらどうするんですにゃ?」
「アイ、あほ」
あほは言い過ぎでは?
「メル、アホは酷くないかい?」
「んーん」
「・・・でも本当に動かないわね?」
動かないんではなくて動けないんです。いまなら攻撃し放題ですよ?ダメージぷりーず。
「念の為、警戒しながら洞窟に入りましょう。挟み撃ちが怖いですけど、最悪メルの時空魔法で逃げればいい」
「あら、アイにしてはいい考えね」
「それしかねえか。じゃあそんな感じでいくか」
「了解にゃ!」
「ん!」
5人組は話しながら、洞窟の中へと向かっていった。
メルと呼ばれた女の子がこっちに戻ってくる?
どうした?
「・・・・・・・・・」
オレの目の前でその子が止まる。オレを見上げている。なんだ?
「ありがと!」
は?ありがと?何?感謝されるようなことなんかしてないけど?
あ、行っちゃった。何なんだ?
・・・しかし『ありがとう』だって?人に感謝されるなんていつ以来だろうか。
なんかジーンとこみ上げるものがあるね。
しばらくすると、合流出来たようだ。まあ一本道だもんね。オレでかくて途中から通れないけど。
洞窟の奥に向かっていくのを探知と感知を合わせて観察する。
いいぞ、じじいとご対面だ。
地下から振動が聞こえだした。
どうやら戦闘が開始されたらしい。
だが、すぐに戦闘の気配が感知出来なくなった。
この体になって初めて、意識を手放すことがオレは出来た。
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