上 下
5 / 84
切り札チャージ! 登場! 切り札戦線シャッフラー!

第4話 切り札チャージ! 登場! 切り札戦線シャッフラー! 1

しおりを挟む
「およ、あれは揉め事ですか?」

 学園が終わり無事に魔界から人間界から移動してきた私は、越後屋の前に出ると人だかりが目につきます。

「なんでしょうね?」

 魔界では静かな物だったのに、人間界に戻ったら揉め事とはどうなんでしょう? とか思わないでもないが、魔界も魔界で秩序ある世界だ。人間界の方が混沌としているとどこかで聞いたことがあったりします。

「オレ様達は! 暴走宇宙族っ愛羅武路雨怒(あいらぶろーど)だっ! 突然だがこの直線は素晴らしい! オレ様達は大層この直線距離が気に入った! 早速だがこの直線道路を征服させて頂こう!」

 ファンキーな角型(リーゼントの様に先の丸まった角)を持った特攻服や甚兵衛を着た一つ目の宇宙人軍団がそこにはいました。
 代表と思しき宇宙人は中々の筋肉質、声が少し高いのが残念だが悪役らしい良い出で立ちです。特攻服ではなくタンクトップ姿だったらサインを貰いに行ったかも知れませんね。

「この素晴らしい直線距離には似つかない邪魔な物が多いな! お前ら! ここの制限速度の看板を全部∞のマークに変えて信号機をすべて青色に染め直してしまえっ!」
「「「ブンブーン!!」」」

 甚兵衛服の戦闘員の皆さんが地面に書いてある『60』の文字を『∞』に書き直して看板を差し替え、信号機を真っ青に塗り直し始めた。
 プロ戦闘員達の素早い行動ですね。
 辺りに急ブレーキの音がこだまし始める、信号機のランプ部分がすべて青く塗られた為に交通がマヒし始めたのだ!

「やめないかっ!」
「誰だ!?」

 降って沸いた静止の声に、暴走宇宙人やギャラリーの視線がそちらに集中する。

「たとえ看板を塗り替えようとも! ここの制限速度は変わらない!」
「信号機を塗りなおしても! 左から青、黄色、赤と冷静に判断すれば信号は守れる!」
「平和に暮らすドライバー達の急ブレーキという名の悲鳴を! 私たちは止めてみせる!」
「どーろこーつーほーと、こーきょーぶつ? 破壊の罪、つぐなって?」
「お前たち宇宙人達の好き勝手にはさせるわけにはいかないんだの!」

 そこには5人の男女が立っています。

「ふんっ! たかが人間風情が! オレ様達の邪魔が出来ると思うなよ! やっちまえ! 戦闘員達!!」

 その暴走宇宙人の幹部かな? の言葉に、懸命に道路の舗装や看板を直していた戦闘員達が道具を地面に置いて一斉に幹部の前に並んだ。

「「「ブンブーン!」」」
「みんな! いくぞ!」
「おう!」

 5人は突撃してくる戦闘員達の攻撃をかいくぐり、素手で反撃を行っていきます。
 いくらなんでも素手の人間ではプロ戦闘員の相手をするのは難しいのでは? と思っていましたが、上手く戦闘員達の攻撃をいなし見事な体捌きで反撃に転じています。

「埒が明かぬな、現れよ! 暴走改造マシン、クラクション!」

 暴走宇宙人が声を上げると、地面から黒い光と共に全身にバイクのクラクションボタンとラッパのようなものが括りつけられた人型サイズのロボが現れた!

「ラーッパッパッパ!!」

 ラッパって言っちゃってるよ! 大丈夫かこいつ。

「ラッパーーーーー!」

 その顔に括りつけられた大きなラッパの部分からビームの様な物が飛び出して5人組を襲った! これは流石に吹き飛ばされる5人組。だが、5人に致命傷はないようだ。

「ち、仕方ない! やるぞみんな!」
「「「「おう!」」」」
「「「「「切り札チャージ!」」」」」

 5人がポケットから何かカードを……よく見るとトランプだ。それを出してカードをそれぞれ1枚抜き出しました。
 その瞬間5人は赤・青・黄・ピンク・白い色の光に包まれると、全身のラインが見やすいそれぞれの色を全面に押し出した5色の戦闘スーツを纏っています!

「赤き剣の切り札! シャッフルレッド!」
「青き槌の切り札! シャッフルブルー!」
「ピンクの弓の切り札! シャッフルピンク!」
「白き拳の切り札! シャッフルホワイト!」
「黄色き短剣の切り札! シャッフルイエロー!」
『切り札戦線! シャッフラー!!』

 5色の爆発を背後に、5人組は変身を完了させてポーズを決めていた。
 最近おもちゃも発売され始めていた新しい戦線シリーズのシャッフラーだったようです。彼らは戦線シリーズと呼ばれる正義のHERO集団の新入りですね。1か月前にテレビで特集が組まれていたのを見たことがあります。まだC級のHEROですが戦線シリーズのHEROはA級に半年くらいで上がることが多いので期待の新人って奴ですね。

「シャッフラーだ! シャッフラーが来てくれたぞ!」
「頼んだぞ! シャッフラー!」
「俺達の平和な街を救ってくれ!」
『シャッフラー! シャッフラー! シャッフラー! シャッフラー!』

 辺りにシャッフラーコールがこだまします。うん、戦線HEROは人気ですね。私もシャッフルブルーの筋力には少し興味があります。

「おのれシャッフラー共め! だがオレ様の邪魔はさせん! やれっ! クラクション!」
「ラッパー!」

 暴走改造マシン、クラクションは再度ラッパの部分からビームを打ち出す!
 しかし、シャッフラー達はそのビームを見事にかいくぐり回避!
 そして、それぞれが腰につけた武器を取り出して構えた。

「キングハンマー! 砕っ!」

 シャッフルブルーは大きなハンマーを取り出すと、地面に叩きつけた! 大地がひび割れ、クラクションの体にその破片が降り注ぐ!

「ラ、ラッパ……」

「クイーンアロー! はっ!」

 シャッフルピンクが弓から矢を放出! クラクションの肩口に桃色の矢が突き刺さり、その矢は爆発しクラクションにダメージを与えます。

「ジャックナックルだの! ラッシュ! ラッシュ! ラッシュ!」

 爆風を切り裂いてシャッフルホワイトが拳を振るいクラクションを吹き飛ばします。

「ジョーカーダガー! くらえー」

シャッフルイエローは飛び上がって、その両手の短剣でクラクションの背中を切り付けました。前と後ろから攻撃を受けたクラクションの体は傾き、膝から崩れ落ちそうです。

「エースブレード! エーススラッシュ!」

 まさに倒れそうになった時、シャッフルレッドがトドメの剣撃を振り下ろしました。

「ラ……ラッパ…………」

 クラクションが爆散しました。
 中々の連携ですね。戦線HEROの連携攻撃は馬鹿に出来ません。
 しかし、このままでは暴走宇宙人の幹部がやられてしまいそうです。あの筋肉ならいきなり負けるような事は無いと思いますが……念のため加勢しておきましょう。あの暴走宇宙人の筋力トレーニングも教えてもらいたいですからね。
 応援している人垣をしり目に、建物と建物の間に移動して周りに人がいないことを確認。

「大丈夫そうですね」

 私は魔力を集中させてポケットに入れた端末の操作を行います。
 『The 越後屋』で開発してもらった専用のアプリを使い魔法を発動させました。
間もなく足元には光輝く奇怪な魔法陣が浮かび上がります。私の体は魔法陣から発生した黒い靄に包まれると、私の思い描いていた姿を形作っていきます。

「……ダークネスマッスル、参る」

 変身を完了させた私はその場で跳躍をすると、人垣の上を飛び越えてシャッフラーと暴走宇宙人の間に着地をしました。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

私のお父様とパパ様

ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。 婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。 大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。 ※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。 追記(2021/10/7) お茶会の後を追加します。 更に追記(2022/3/9) 連載として再開します。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

処理中です...