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エルアーラ遺跡編
episode401
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超古代文明時代の遺物であるエルアーラ遺跡。
遺跡は今から10年ほど前に、アルケラ研究機関ケレヴィルの研究員シ・アティウスが発見した。そこからずっとケレヴィル管轄の元、調査はしている。ケレヴィルの管轄に置かれた時点で、詳細が公に知らされることはない。
「ベルトルド卿は、エルアーラ遺跡がどんなものか、知っているんでしょうか?」
「知ってる」
淀みなくあっさりと返答が返ってきて、カーティスは鼻白んだ。ベルトルドはケレヴィルの所長も兼任している。当然詳細は知っているだろう。カーティスが聞きたかったのはそういう意味ではないのだが、ベルトルドは見透かした上で、必要以上のことは言わなかった。
「だから戦争などという小細工を弄してまで、取り返しに行くんだ」
尊大な態度でキッパリ断言する。
「アレは俺のだいじな玩具だ。ジジイどもを叩きだして、アレで遊ぶんだ、俺は」
それ以上は教えてやらん、とベルトルドは口を閉じた。
ソレル国王は黄ばんだ紙束を丁寧にめくった。ソレル国王メリロット王家が先祖代々受け継いできた文献である。
そこには1万年前にあった惑星ヒイシの歴史と、ヴィプネン族の種族統一国家を治めてきた、ヤルヴィレフト王家のことが記されていた。
メリロット王家は元々ヤルヴィレフト王家の分家筋で、現在唯一ヤルヴィレフト王家の血筋を細々と受け継いでいる。そしてソレル王国のある地は、かつてヤルヴィレフト王家が治めていた、神王国ソレルの首都があった場所だ。
文献に書かれていることは、もう何十年も読み込んできていた。今では暗記できるほどに。
「あの召喚士の少女を手に入れれば、我が長年の望みが叶い、神王国ソレルが復活するのだ」
神々の世界アルケラから、神獣を一度に沢山召喚してみせたキュッリッキという娘。自国で保護をしている召喚スキル〈才能〉を持つ者たちには、けして出来なかったことを、あの娘はいとも簡単にやってのけたのである。召喚士としての素質が素晴らしく高い証拠だ。
「それにしても、不甲斐ない者ばかりで立ち行かぬ」
キュッリッキを手に入れるために放った傭兵たちは、ことごとく失敗している。そしてハワドウレ皇国の軍総帥が、エルアーラ遺跡に乗り込んでこようとしている情報も掴んでいた。
件の召喚士の娘を伴って。
「まあ、ここで手に入れれば良いだろう。もうすぐだ」
ソレル国王は文献を閉じると、丁寧に箱にしまった。そして顔を上げると、目の前の巨大なスクリーンには青い空が映っている。いっけん何もない空だが、ソレル国王には視えていた。
なぜならソレル国王のスキル〈才能〉は、サイ《超能力》だからだ。
遺跡は今から10年ほど前に、アルケラ研究機関ケレヴィルの研究員シ・アティウスが発見した。そこからずっとケレヴィル管轄の元、調査はしている。ケレヴィルの管轄に置かれた時点で、詳細が公に知らされることはない。
「ベルトルド卿は、エルアーラ遺跡がどんなものか、知っているんでしょうか?」
「知ってる」
淀みなくあっさりと返答が返ってきて、カーティスは鼻白んだ。ベルトルドはケレヴィルの所長も兼任している。当然詳細は知っているだろう。カーティスが聞きたかったのはそういう意味ではないのだが、ベルトルドは見透かした上で、必要以上のことは言わなかった。
「だから戦争などという小細工を弄してまで、取り返しに行くんだ」
尊大な態度でキッパリ断言する。
「アレは俺のだいじな玩具だ。ジジイどもを叩きだして、アレで遊ぶんだ、俺は」
それ以上は教えてやらん、とベルトルドは口を閉じた。
ソレル国王は黄ばんだ紙束を丁寧にめくった。ソレル国王メリロット王家が先祖代々受け継いできた文献である。
そこには1万年前にあった惑星ヒイシの歴史と、ヴィプネン族の種族統一国家を治めてきた、ヤルヴィレフト王家のことが記されていた。
メリロット王家は元々ヤルヴィレフト王家の分家筋で、現在唯一ヤルヴィレフト王家の血筋を細々と受け継いでいる。そしてソレル王国のある地は、かつてヤルヴィレフト王家が治めていた、神王国ソレルの首都があった場所だ。
文献に書かれていることは、もう何十年も読み込んできていた。今では暗記できるほどに。
「あの召喚士の少女を手に入れれば、我が長年の望みが叶い、神王国ソレルが復活するのだ」
神々の世界アルケラから、神獣を一度に沢山召喚してみせたキュッリッキという娘。自国で保護をしている召喚スキル〈才能〉を持つ者たちには、けして出来なかったことを、あの娘はいとも簡単にやってのけたのである。召喚士としての素質が素晴らしく高い証拠だ。
「それにしても、不甲斐ない者ばかりで立ち行かぬ」
キュッリッキを手に入れるために放った傭兵たちは、ことごとく失敗している。そしてハワドウレ皇国の軍総帥が、エルアーラ遺跡に乗り込んでこようとしている情報も掴んでいた。
件の召喚士の娘を伴って。
「まあ、ここで手に入れれば良いだろう。もうすぐだ」
ソレル国王は文献を閉じると、丁寧に箱にしまった。そして顔を上げると、目の前の巨大なスクリーンには青い空が映っている。いっけん何もない空だが、ソレル国王には視えていた。
なぜならソレル国王のスキル〈才能〉は、サイ《超能力》だからだ。
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