405 / 882
モナルダ大陸戦争開戦へ編
episode386
しおりを挟む
「うん、なあに?」
「リッキーさんの膝枕で、少しお昼寝させてください」
「そのくらいお安い御用よ」
キュッリッキはにっこり笑うと、アルカネットが寝やすいように座り直した。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて」
アルカネットはキュッリッキの前に座り直し、膝に頭を乗せて横たわった。
宿を警備するダエヴァたちは、遠巻きに2人の様子をちらちら見ていたが、いきなり魔法部隊長官が少女の膝枕で寝そべったのには、仰天して目を見張った。
周りの無言のどよめきも意に介さず、アルカネットは気持ちよさそうにキュッリッキの膝の感触を堪能していたが、そのままコテッと眠りに落ちてしまった。
速攻寝入ってしまったアルカネットを、キュッリッキはまじまじと見つめた。
「ベルトルドさんといいアルカネットさんといい、寝付くの早いんだなあ…」
キュッリッキは若干寝つきの悪い体質だった。とくに枕が変わると妙に眠れない。よほど眠くて眠くてしょうがないときはすぐに寝られるが、こんなふうにすぐ眠りに落ちることは稀なのだ。
端整な寝顔を見おろし、つられるようにウトウトとしかかったとき――
「そこへ直れ!! 成敗してくれるわっ!!!」
「うわああああっ! よく判らないけどスンマセンッ!!!」
宿の方から突然ベルトルドの怒号と、困惑するルーファスの悲鳴が聞こえてきて、キュッリッキはハッと顔を上げ「なんだなんだ」とキョロキョロ周りを見た。
「貴様が余計なことをリッキーに教えるから、俺がとばっちりを受けるじゃないか!」
ベルトルドの喧しい怒号のあとに、窓を突き破ってソファが外に飛び、
「必要なことしか教えてませんよー!?」
ルーファスの言い訳の後に、窓を突き破ってテーブルが外に飛ぶ。
庭にゴロロンと転がるソファとテーブルを見て、キュッリッキは小さく乾いた笑いを浮かべた。
ベルトルドを起こすために、股間を蹴り上げた件で怒っているのだろう。
「蹴ったのはアタシなんだから、アタシに怒ればいいのに……。ルーさんにあたらなくても」
と、キュッリッキはげっそりしたように呟いた。
「妹のおいたで叱られるのは兄の役目、てぇ、昔から決まってるのよ~ん?」
聴き慣れたのんびりした声が、背後から聞こえて振り向く。
「マリオン! ペルラも」
「お久しぶりぃ~、キューリちゃ~ん」
軍服姿の2人を見上げて、キュッリッキの顔がぱっと明るく笑顔になった。
荷物をぽいっと放り出し、マリオンがキュッリッキに抱きついた。ペルラも笑顔で片手を上げて挨拶を返す。
キュッリッキに抱きついたまま、マリオンは首を伸ばして膝の上を覗き込む。
「アルカネットさん、随分とぐっすり寝ちゃってるじゃな~い?」
「うん。寝不足なんだって」
「あ~らら」
「対照的に、向こうは元気いっぱいなようだな……」
宿の方を向いて、呆れたようにペルラが言う。
ドシャン、ガシャンと、派手な音が盛大に外に轟いている。調度品など無残に破壊されていそうだった。
「なんでおっさん、あんなに怒ってんの?」
ニヤニヤとするマリオンに、キュッリッキはため息混じりに今朝の出来事を話す。すると、
「ギャッハハハハハ!!」
「マジそれ、ちょーウケんだけどっ」
いきなり背後でギャリーとザカリーの爆笑が聞こえてきて、3人は振り返った。
「リッキーさんの膝枕で、少しお昼寝させてください」
「そのくらいお安い御用よ」
キュッリッキはにっこり笑うと、アルカネットが寝やすいように座り直した。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて」
アルカネットはキュッリッキの前に座り直し、膝に頭を乗せて横たわった。
宿を警備するダエヴァたちは、遠巻きに2人の様子をちらちら見ていたが、いきなり魔法部隊長官が少女の膝枕で寝そべったのには、仰天して目を見張った。
周りの無言のどよめきも意に介さず、アルカネットは気持ちよさそうにキュッリッキの膝の感触を堪能していたが、そのままコテッと眠りに落ちてしまった。
速攻寝入ってしまったアルカネットを、キュッリッキはまじまじと見つめた。
「ベルトルドさんといいアルカネットさんといい、寝付くの早いんだなあ…」
キュッリッキは若干寝つきの悪い体質だった。とくに枕が変わると妙に眠れない。よほど眠くて眠くてしょうがないときはすぐに寝られるが、こんなふうにすぐ眠りに落ちることは稀なのだ。
端整な寝顔を見おろし、つられるようにウトウトとしかかったとき――
「そこへ直れ!! 成敗してくれるわっ!!!」
「うわああああっ! よく判らないけどスンマセンッ!!!」
宿の方から突然ベルトルドの怒号と、困惑するルーファスの悲鳴が聞こえてきて、キュッリッキはハッと顔を上げ「なんだなんだ」とキョロキョロ周りを見た。
「貴様が余計なことをリッキーに教えるから、俺がとばっちりを受けるじゃないか!」
ベルトルドの喧しい怒号のあとに、窓を突き破ってソファが外に飛び、
「必要なことしか教えてませんよー!?」
ルーファスの言い訳の後に、窓を突き破ってテーブルが外に飛ぶ。
庭にゴロロンと転がるソファとテーブルを見て、キュッリッキは小さく乾いた笑いを浮かべた。
ベルトルドを起こすために、股間を蹴り上げた件で怒っているのだろう。
「蹴ったのはアタシなんだから、アタシに怒ればいいのに……。ルーさんにあたらなくても」
と、キュッリッキはげっそりしたように呟いた。
「妹のおいたで叱られるのは兄の役目、てぇ、昔から決まってるのよ~ん?」
聴き慣れたのんびりした声が、背後から聞こえて振り向く。
「マリオン! ペルラも」
「お久しぶりぃ~、キューリちゃ~ん」
軍服姿の2人を見上げて、キュッリッキの顔がぱっと明るく笑顔になった。
荷物をぽいっと放り出し、マリオンがキュッリッキに抱きついた。ペルラも笑顔で片手を上げて挨拶を返す。
キュッリッキに抱きついたまま、マリオンは首を伸ばして膝の上を覗き込む。
「アルカネットさん、随分とぐっすり寝ちゃってるじゃな~い?」
「うん。寝不足なんだって」
「あ~らら」
「対照的に、向こうは元気いっぱいなようだな……」
宿の方を向いて、呆れたようにペルラが言う。
ドシャン、ガシャンと、派手な音が盛大に外に轟いている。調度品など無残に破壊されていそうだった。
「なんでおっさん、あんなに怒ってんの?」
ニヤニヤとするマリオンに、キュッリッキはため息混じりに今朝の出来事を話す。すると、
「ギャッハハハハハ!!」
「マジそれ、ちょーウケんだけどっ」
いきなり背後でギャリーとザカリーの爆笑が聞こえてきて、3人は振り返った。
0
お気に入りに追加
151
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる