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モナルダ大陸戦争開戦へ編
episode369
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むすっとした表情でベルトルドは腕を組んで座したまま、きっぱりと言った。しかし報告にきたダエヴァの男は一瞬怯んだあと、軽く首を横に振って手振りで阻止しようとした。
「閣下の御手を煩わせるほどのことではありません!」
「ヤダ! 俺が全部ぶっ殺す!」
断固として言い張るベルトルドに視線を投げかけ、呆気に取られたダエヴァの男を憐れむように見ると、アルカネットはため息混じりに首を振った。
「やらせておあげなさい、暴れたくてしょうがないようですから。――あなたがたは汽車の守りを徹底し、けしてアサシンなどの侵入を許さないように。そして、ベルトルド様の邪魔になるので、誰も外には出ないように指示を徹底しなさい」
「承りました!」
報告にきた男は鯱張って敬礼すると、すぐさま走り去っていった。
アルカネットは正面を向くと、冷静に指示を出していく。
「メルヴィンはすり抜けてくるアサシンを感知次第処理、ルーファスはこの室内の守りをしてください」
はい、と歯切れよく答え、メルヴィンは座したまま爪竜刀を構えて目を閉じた。アサシンの気配を探るために、意識を集中させる。ルーファスは室内に力を張り巡らせた。
アルカネットは斜め前方の座席に座る、2匹の仔犬に視線を向ける。
じゃれあうのはやめていたが、2匹ともおとなしく座ってキュッリッキのほうを見ている。キュッリッキに危険が迫れば、すぐさま動けるようにしているのだろう。
キュッリッキに視線を向けると、メルヴィンの膝枕でよく眠っている。この室内にいる限りなにも危険はないだろうし、無理にメルヴィンから引き剥がせば、あとでまた泣かれそうで手を出しあぐねていた。
小さく息をついてベルトルドに顔を向けると、ベルトルドはすでに戦闘準備に入っていた。
「あまり派手に周りを破壊しないようにしてくださいね」
「自分のことを棚に上げて偉そうに言うな!! 俺は遠慮なんかしないぞ!!!」
不機嫌度はそのままに、車内中に轟くほどの大声でベルトルドが断言した。
これを聞いた全ての人々が、「はぁ…」と疲れたようなため息をもらしていた。
人間で自由に宙を飛べるのは、アイオン族以外では魔法使いとサイ《超能力》使いだけである。もっとも、宙を飛べる術(すべ)をマスターしている者に限られたが、概ね宙を飛べる者はAランク以上だ。
自らをコントロールしながら宙を飛びつ、移動する物体に速度を合わせて、攻撃を加える操作は中々に難しい。
そうすることの出来る傭兵たちが選りすぐられて、差し向けられた奇襲部隊だ。
奇襲部隊に与えられた任務は、召喚士の少女キュッリッキを”捕えろ”だった。そこに生死が関係あるか無いかは念押しされていない。
もちろん命令を下した者は、当然無傷で生かして捕えろ、と言ったつもりだった。しかし、命令が伝達されていく中で、次第に”無傷で生かして”という意味合いは消え失せ、生死を問わずと勝手な解釈で届けられてしまっていた。
かくしてキュッリッキに差し向けられた刺客には遠慮がなくなり、こうして汽車に向かってきた奇襲部隊も、汽車を破壊し、死体を持ち帰る気満々でいた。
「元気にちょろちょろ飛びおって、鬱陶しいハエだな。本当にハエみたいだ!」
「閣下の御手を煩わせるほどのことではありません!」
「ヤダ! 俺が全部ぶっ殺す!」
断固として言い張るベルトルドに視線を投げかけ、呆気に取られたダエヴァの男を憐れむように見ると、アルカネットはため息混じりに首を振った。
「やらせておあげなさい、暴れたくてしょうがないようですから。――あなたがたは汽車の守りを徹底し、けしてアサシンなどの侵入を許さないように。そして、ベルトルド様の邪魔になるので、誰も外には出ないように指示を徹底しなさい」
「承りました!」
報告にきた男は鯱張って敬礼すると、すぐさま走り去っていった。
アルカネットは正面を向くと、冷静に指示を出していく。
「メルヴィンはすり抜けてくるアサシンを感知次第処理、ルーファスはこの室内の守りをしてください」
はい、と歯切れよく答え、メルヴィンは座したまま爪竜刀を構えて目を閉じた。アサシンの気配を探るために、意識を集中させる。ルーファスは室内に力を張り巡らせた。
アルカネットは斜め前方の座席に座る、2匹の仔犬に視線を向ける。
じゃれあうのはやめていたが、2匹ともおとなしく座ってキュッリッキのほうを見ている。キュッリッキに危険が迫れば、すぐさま動けるようにしているのだろう。
キュッリッキに視線を向けると、メルヴィンの膝枕でよく眠っている。この室内にいる限りなにも危険はないだろうし、無理にメルヴィンから引き剥がせば、あとでまた泣かれそうで手を出しあぐねていた。
小さく息をついてベルトルドに顔を向けると、ベルトルドはすでに戦闘準備に入っていた。
「あまり派手に周りを破壊しないようにしてくださいね」
「自分のことを棚に上げて偉そうに言うな!! 俺は遠慮なんかしないぞ!!!」
不機嫌度はそのままに、車内中に轟くほどの大声でベルトルドが断言した。
これを聞いた全ての人々が、「はぁ…」と疲れたようなため息をもらしていた。
人間で自由に宙を飛べるのは、アイオン族以外では魔法使いとサイ《超能力》使いだけである。もっとも、宙を飛べる術(すべ)をマスターしている者に限られたが、概ね宙を飛べる者はAランク以上だ。
自らをコントロールしながら宙を飛びつ、移動する物体に速度を合わせて、攻撃を加える操作は中々に難しい。
そうすることの出来る傭兵たちが選りすぐられて、差し向けられた奇襲部隊だ。
奇襲部隊に与えられた任務は、召喚士の少女キュッリッキを”捕えろ”だった。そこに生死が関係あるか無いかは念押しされていない。
もちろん命令を下した者は、当然無傷で生かして捕えろ、と言ったつもりだった。しかし、命令が伝達されていく中で、次第に”無傷で生かして”という意味合いは消え失せ、生死を問わずと勝手な解釈で届けられてしまっていた。
かくしてキュッリッキに差し向けられた刺客には遠慮がなくなり、こうして汽車に向かってきた奇襲部隊も、汽車を破壊し、死体を持ち帰る気満々でいた。
「元気にちょろちょろ飛びおって、鬱陶しいハエだな。本当にハエみたいだ!」
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