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番外編1
クリスマス準備・4
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メルヴィンに手を引かれながら、キュッリッキは一店舗一店舗ゆっくりと見て回った。
ぬいぐるみ、木彫りの置物、ガラス細工、食器、クリスマスツリーのミニチュア、クリスマスカード、全てその店のオリジナルで手作り品。見ているだけでも心躍るものがいっぱいだった。
昼間は静かなエルダー街と違い、たくさんの人々が買い物に訪れている。家族連れ、恋人同士、友達同士、一人など、ごった返すマーケットには、明るい声が飛び交い賑やかだ。
家族連れを見ると今でも心が寂しくなるが、でも今日はそれを上回るほど温かい気持ちになっている。
ちらりと手元を見る。
はぐれないようにと言いながら、しっかりとメルヴィンが手を握ってくれているのだ。
メルヴィンの手は大きく力強くて温かい。手袋なんていらないほどに、キュッリッキの小さな手を包み込んでくれている。
こうして一緒に手をつないで歩く姿は、周りにはどんな風に見えるんだろう? そんなことがふと気になってしまう。
(仲良しの兄妹とか? それとも、こ、こ、こぃ…恋人同士!? とか…)
もし恋人同士に見えていたらいいな、などと思いながら、キュッリッキはここへ来た目的も頭から蒸発して忘れそうなほど、顔を真っ赤にして俯いた。
(顔がトマトになっちゃうよぅ)
最近慣れてきた筈なのに、と思いつつも、胸のドキドキは止まらない。
「何がいいですかね~、迷うなあ」
キュッリッキの切ない乙女心にも気づかず、メルヴィンは店舗を色々眺めては、どれにしようかと決めあぐねているようだった。その呟く声に顔を上げると、ふと目に飛び込んできたものがある。
手作りのアクセサリー店のようだ。薄いガラスケースに特別に納められているそれは、綺麗な銀細工のペンダントだった。
なにかの葉を模した銀細工に、ただ一つだけ小さな粒のような宝石がついている。
青と白が柔らかく重なった、とろりとした半透明の石。
無言でメルヴィンの手から離れ、ケースの前に行く。
吸いこまれるようにそのペンダントを見つめていると、店主の男が声をかけてきた。
「ねーちゃんそれ、気に入ったのかい?」
「うん、綺麗な宝石がついてるのね。ちょっと変わってる」
「ああ。『エイルの涙』っていう珍しい石さ。これを首に下げてると、怪我も治るってぇご利益があるんだそうだぜ」
戦乙女ヴァルキュリアのひとり、エイルの名を冠した宝石。それと関連付ければご利益もあながちと思えなくもないが、キュッリッキは無性にこのペンダントが気に入ってしまった。こういうのを、一目惚れとでも言うのだろうか。
「買うかい?」
無理にすすめるわけでもなく、ただ聞いてみたといった口調の店主に促され、キュッリッキはコートのポケットから取り出した財布を開いてみた。
(うっ……予算オーバー)
ペンダントを買ってしまうと、プレゼントが買えなくなってしまう恐れがある。たとえ両方買えたとしても、明らかにプレゼントの質を落とす事になるだろう。
「今日はちょっとお金……足らないから、出直してくる」
心底ガッカリした様子のキュッリッキを見て、店主は気さくに笑った。
「クリスマス終わるまではここで店開いてっから、また来てくれ」
後ろ髪を引かれる思いで、待っているメルヴィンのもとへ戻る。
「ごめんね、プレゼント選びに戻ろ」
「ええ」
落ち込んでいるキュッリッキの手を取り、メルヴィンはちらりとアクセサリー店に目を向ける。
ケースに納まったままのペンダントを見て、どうやら買えなかったのだと察し、他の店へ促した。
ぬいぐるみ、木彫りの置物、ガラス細工、食器、クリスマスツリーのミニチュア、クリスマスカード、全てその店のオリジナルで手作り品。見ているだけでも心躍るものがいっぱいだった。
昼間は静かなエルダー街と違い、たくさんの人々が買い物に訪れている。家族連れ、恋人同士、友達同士、一人など、ごった返すマーケットには、明るい声が飛び交い賑やかだ。
家族連れを見ると今でも心が寂しくなるが、でも今日はそれを上回るほど温かい気持ちになっている。
ちらりと手元を見る。
はぐれないようにと言いながら、しっかりとメルヴィンが手を握ってくれているのだ。
メルヴィンの手は大きく力強くて温かい。手袋なんていらないほどに、キュッリッキの小さな手を包み込んでくれている。
こうして一緒に手をつないで歩く姿は、周りにはどんな風に見えるんだろう? そんなことがふと気になってしまう。
(仲良しの兄妹とか? それとも、こ、こ、こぃ…恋人同士!? とか…)
もし恋人同士に見えていたらいいな、などと思いながら、キュッリッキはここへ来た目的も頭から蒸発して忘れそうなほど、顔を真っ赤にして俯いた。
(顔がトマトになっちゃうよぅ)
最近慣れてきた筈なのに、と思いつつも、胸のドキドキは止まらない。
「何がいいですかね~、迷うなあ」
キュッリッキの切ない乙女心にも気づかず、メルヴィンは店舗を色々眺めては、どれにしようかと決めあぐねているようだった。その呟く声に顔を上げると、ふと目に飛び込んできたものがある。
手作りのアクセサリー店のようだ。薄いガラスケースに特別に納められているそれは、綺麗な銀細工のペンダントだった。
なにかの葉を模した銀細工に、ただ一つだけ小さな粒のような宝石がついている。
青と白が柔らかく重なった、とろりとした半透明の石。
無言でメルヴィンの手から離れ、ケースの前に行く。
吸いこまれるようにそのペンダントを見つめていると、店主の男が声をかけてきた。
「ねーちゃんそれ、気に入ったのかい?」
「うん、綺麗な宝石がついてるのね。ちょっと変わってる」
「ああ。『エイルの涙』っていう珍しい石さ。これを首に下げてると、怪我も治るってぇご利益があるんだそうだぜ」
戦乙女ヴァルキュリアのひとり、エイルの名を冠した宝石。それと関連付ければご利益もあながちと思えなくもないが、キュッリッキは無性にこのペンダントが気に入ってしまった。こういうのを、一目惚れとでも言うのだろうか。
「買うかい?」
無理にすすめるわけでもなく、ただ聞いてみたといった口調の店主に促され、キュッリッキはコートのポケットから取り出した財布を開いてみた。
(うっ……予算オーバー)
ペンダントを買ってしまうと、プレゼントが買えなくなってしまう恐れがある。たとえ両方買えたとしても、明らかにプレゼントの質を落とす事になるだろう。
「今日はちょっとお金……足らないから、出直してくる」
心底ガッカリした様子のキュッリッキを見て、店主は気さくに笑った。
「クリスマス終わるまではここで店開いてっから、また来てくれ」
後ろ髪を引かれる思いで、待っているメルヴィンのもとへ戻る。
「ごめんね、プレゼント選びに戻ろ」
「ええ」
落ち込んでいるキュッリッキの手を取り、メルヴィンはちらりとアクセサリー店に目を向ける。
ケースに納まったままのペンダントを見て、どうやら買えなかったのだと察し、他の店へ促した。
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