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初恋の予感編
episode269
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「戦争…」
腕を組み、カーティスはぽつりと呟く。
(ケレヴィルの連中に手を出したこと、派手に国内で軍を動かしたことといい、ソレル王国の動向は、オッサンの勘に引っかかるモノが多かったらしいぜ)
「それでなのか、徹底的に首都を制圧してましたしねえ」
(キューリちゃんをエグザイル・システムに通すため、てのもあったようだけどぉ。あれはちっと、やりすぎぃ~)
「まあなんにせよ、今日明日ドンパチ始まる話じゃねえし、もっと状況がハッキリしてきてから悩もうぜ」
ギャリーが締め括ると、皆頷いた。
キュッリッキを元気づける目的もある見舞いで、キナ臭い話で深刻になっては意味がない。詳しい話は、ザカリーたちが帰ってきてからすればいいだけだ。
その後は飲み食いしながら、みんなの近況やら、脳筋組み――とくにガエル、ヴァルト、タルコットの3名――の腕自慢話で盛り上がった。
そうして楽しく賑やかな時間は、あっという間に過ぎ去っていく。
すでに空は夕焼けでオレンジと紫色に染まり、薄暗くなった部屋には灯りがともされ、それをきっかけにしたようにカーティスが立ち上がった。
「そろそろ、おいとましましょうか。夕飯時ですしね」
豪華な食事――途中で酒も大量に追加させられた――が振舞われ、ドンちゃん騒いでいたみんなは、そうだな~などとぼやきながら、ぽつぽつ腰を上げる。
「晩ご飯も食べていったらいいのに」
身を乗り出しながら、至極残念そうにキュッリッキが言うと、
「アルカネットの野郎と鉢合わせる前に、オレら帰るぜ」
「アイツの顔見て飯が食えるかー!!」
ギャリーとヴァルトが、心底嫌々そうに言う。
「また来ますよ。というより、早く元気になって戻ってきてください。みんなで待ってますから」
にこやかに言うカーティスに、キュッリッキは大きく頷いた。
「戻ってきてください」という言葉が、キュッリッキの心を強く励ました。
何時までも弱気になっていられない、早く元気にならなきゃ。そう心の中で誓う。
「オレ、みんなを下まで見送ってくるよ。メルヴィンはキューリちゃんのそばにいてあげて」
「はい」
「またな、キューリ」
皆口々にキュッリッキにさよならを言いながら、入ってきた時と同じように、ガヤガヤと賑やかに部屋を出ていった。
彼らの後ろ姿を見送り、メルヴィンは部屋の扉を閉める。賑やかな声が次第に聞こえなくなると、室内は驚く程静まり返った。
「一気に静かになりましたね」
苦笑混じりに言われ、キュッリッキはクスッと笑う。
「みんな元気そうでよかった。ザカリーの怪我も、大丈夫だったみたいだし」
「そうですね。あとはリッキーさんが、元気になるだけですよ」
「うん」
(怪我の治りは順調なんだもの、いつまでも病人みたいに、寝てばかりじゃダメなんだから)
この頃は過去の辛い記憶に翻弄されて、ずいぶん気弱になってしまっていた。でも、仲間たちの顔を見て、早く元気になろうと強く思った。
腕を組み、カーティスはぽつりと呟く。
(ケレヴィルの連中に手を出したこと、派手に国内で軍を動かしたことといい、ソレル王国の動向は、オッサンの勘に引っかかるモノが多かったらしいぜ)
「それでなのか、徹底的に首都を制圧してましたしねえ」
(キューリちゃんをエグザイル・システムに通すため、てのもあったようだけどぉ。あれはちっと、やりすぎぃ~)
「まあなんにせよ、今日明日ドンパチ始まる話じゃねえし、もっと状況がハッキリしてきてから悩もうぜ」
ギャリーが締め括ると、皆頷いた。
キュッリッキを元気づける目的もある見舞いで、キナ臭い話で深刻になっては意味がない。詳しい話は、ザカリーたちが帰ってきてからすればいいだけだ。
その後は飲み食いしながら、みんなの近況やら、脳筋組み――とくにガエル、ヴァルト、タルコットの3名――の腕自慢話で盛り上がった。
そうして楽しく賑やかな時間は、あっという間に過ぎ去っていく。
すでに空は夕焼けでオレンジと紫色に染まり、薄暗くなった部屋には灯りがともされ、それをきっかけにしたようにカーティスが立ち上がった。
「そろそろ、おいとましましょうか。夕飯時ですしね」
豪華な食事――途中で酒も大量に追加させられた――が振舞われ、ドンちゃん騒いでいたみんなは、そうだな~などとぼやきながら、ぽつぽつ腰を上げる。
「晩ご飯も食べていったらいいのに」
身を乗り出しながら、至極残念そうにキュッリッキが言うと、
「アルカネットの野郎と鉢合わせる前に、オレら帰るぜ」
「アイツの顔見て飯が食えるかー!!」
ギャリーとヴァルトが、心底嫌々そうに言う。
「また来ますよ。というより、早く元気になって戻ってきてください。みんなで待ってますから」
にこやかに言うカーティスに、キュッリッキは大きく頷いた。
「戻ってきてください」という言葉が、キュッリッキの心を強く励ました。
何時までも弱気になっていられない、早く元気にならなきゃ。そう心の中で誓う。
「オレ、みんなを下まで見送ってくるよ。メルヴィンはキューリちゃんのそばにいてあげて」
「はい」
「またな、キューリ」
皆口々にキュッリッキにさよならを言いながら、入ってきた時と同じように、ガヤガヤと賑やかに部屋を出ていった。
彼らの後ろ姿を見送り、メルヴィンは部屋の扉を閉める。賑やかな声が次第に聞こえなくなると、室内は驚く程静まり返った。
「一気に静かになりましたね」
苦笑混じりに言われ、キュッリッキはクスッと笑う。
「みんな元気そうでよかった。ザカリーの怪我も、大丈夫だったみたいだし」
「そうですね。あとはリッキーさんが、元気になるだけですよ」
「うん」
(怪我の治りは順調なんだもの、いつまでも病人みたいに、寝てばかりじゃダメなんだから)
この頃は過去の辛い記憶に翻弄されて、ずいぶん気弱になってしまっていた。でも、仲間たちの顔を見て、早く元気になろうと強く思った。
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