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初恋の予感編
episode241
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「戻りました」
食器を片付けに行っていたメルヴィンが戻ってきて、キュッリッキの心臓が一瞬ドクンッと跳ねた。
「お、おかえりなさいっ」
なんだか慌てた物言いと、妙に赤らんだ顔で出迎えられて、メルヴィンは小さく首をかしげる。
(び、びっくりしちゃったのっ)
「もっと、メルヴィンのこと知りたい」などと言っていたら当人が戻ってきたので、聞かれたんじゃないかと内心焦っていた。
「顔が赤いですよ。熱でもあるのかなあ」
メルヴィンはそう言いながら、キュッリッキの額に大きな掌をあてる。
「んー、ちょっと熱いけど、大丈夫ですか? 身体を起こしてるとまだまだ辛いのかな。横になりますか?」
顔を覗きこまれて、キュッリッキは首を横にブンブン振った。その拍子に傷口に響いて顔が歪む。
「だいじょうぶなの!」
モロ痛そうな顔で大丈夫と言われても、そう内心で思いながらも、メルヴィンは身体を起こして、ベッドの傍らの椅子に座る。
「横になりたい時は、すぐ言ってくださいね」
「うん、ありがとう」
キュッリッキは心の中で、大仰に溜息をついた。
(アタシ、何をそんなに慌ててるの…。ヘンなの)
チラリとメルヴィンを見ると、穏やかな表情で、新聞を広げて読んでいる。
この屋敷では、新聞はアルカネットが一番最初に読んで、それから執事代理のセヴェリが必要欄だけ目を通す。ベルトルドは「出仕したら大量の書類を読まねばならんのに、出仕前に細かい文字の羅列なんか読む気になれん!」と言って、全く読まない。それで、最近ではメルヴィンが新聞を借りてきて読んでいた。
背筋を伸ばし、長い脚を組んで新聞を読む姿が、素敵で格好良い。そんな風に思って、キュッリッキは更に顔を赤くした。
(ばっ、やっぱりアタシの頭の中、ヘンになっちゃったかもっ!)
今までドキドキしながら、誰かのことをこんなに意識するなんて、一度だってなかったのに。急に自分は、どうしてしまったんだろう。意味もなくジタバタしたい衝動に襲われた。
(ヘンっ! ヘンっ! ヘンなのっ!!)
キュッリッキは左手をギュッと握ると、ベッドをポスッと叩いた。
「ん? どうしました?」
新聞から顔を上げたメルヴィンと目が合ってしまい、キュッリッキは笑顔と焦りを同居させた奇妙な表情をした。
「ううううんっ、なんでもナイの!」
「そ、そうですか…」
挙動不審、という四文字熟語がメルヴィンの頭を過ぎったが、必死に否定してくるので小さく頷いた。深く追求したら、物が飛んできそうな雰囲気なのだ。
(女の子は、難しい生き物)
新聞の続きを読むために、メルヴィンはそう自己完結してしまった。
難しい生き物にされてしまったキュッリッキは、
(穴があったら、入りたいの…)
ジワジワと恥ずかしさがこみ上げてきて、ガックリとショートしてしまっていた。
食器を片付けに行っていたメルヴィンが戻ってきて、キュッリッキの心臓が一瞬ドクンッと跳ねた。
「お、おかえりなさいっ」
なんだか慌てた物言いと、妙に赤らんだ顔で出迎えられて、メルヴィンは小さく首をかしげる。
(び、びっくりしちゃったのっ)
「もっと、メルヴィンのこと知りたい」などと言っていたら当人が戻ってきたので、聞かれたんじゃないかと内心焦っていた。
「顔が赤いですよ。熱でもあるのかなあ」
メルヴィンはそう言いながら、キュッリッキの額に大きな掌をあてる。
「んー、ちょっと熱いけど、大丈夫ですか? 身体を起こしてるとまだまだ辛いのかな。横になりますか?」
顔を覗きこまれて、キュッリッキは首を横にブンブン振った。その拍子に傷口に響いて顔が歪む。
「だいじょうぶなの!」
モロ痛そうな顔で大丈夫と言われても、そう内心で思いながらも、メルヴィンは身体を起こして、ベッドの傍らの椅子に座る。
「横になりたい時は、すぐ言ってくださいね」
「うん、ありがとう」
キュッリッキは心の中で、大仰に溜息をついた。
(アタシ、何をそんなに慌ててるの…。ヘンなの)
チラリとメルヴィンを見ると、穏やかな表情で、新聞を広げて読んでいる。
この屋敷では、新聞はアルカネットが一番最初に読んで、それから執事代理のセヴェリが必要欄だけ目を通す。ベルトルドは「出仕したら大量の書類を読まねばならんのに、出仕前に細かい文字の羅列なんか読む気になれん!」と言って、全く読まない。それで、最近ではメルヴィンが新聞を借りてきて読んでいた。
背筋を伸ばし、長い脚を組んで新聞を読む姿が、素敵で格好良い。そんな風に思って、キュッリッキは更に顔を赤くした。
(ばっ、やっぱりアタシの頭の中、ヘンになっちゃったかもっ!)
今までドキドキしながら、誰かのことをこんなに意識するなんて、一度だってなかったのに。急に自分は、どうしてしまったんだろう。意味もなくジタバタしたい衝動に襲われた。
(ヘンっ! ヘンっ! ヘンなのっ!!)
キュッリッキは左手をギュッと握ると、ベッドをポスッと叩いた。
「ん? どうしました?」
新聞から顔を上げたメルヴィンと目が合ってしまい、キュッリッキは笑顔と焦りを同居させた奇妙な表情をした。
「ううううんっ、なんでもナイの!」
「そ、そうですか…」
挙動不審、という四文字熟語がメルヴィンの頭を過ぎったが、必死に否定してくるので小さく頷いた。深く追求したら、物が飛んできそうな雰囲気なのだ。
(女の子は、難しい生き物)
新聞の続きを読むために、メルヴィンはそう自己完結してしまった。
難しい生き物にされてしまったキュッリッキは、
(穴があったら、入りたいの…)
ジワジワと恥ずかしさがこみ上げてきて、ガックリとショートしてしまっていた。
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