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記憶の残滓編
episode216
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泣きつかれていたのもあり、ウトウトしていると、賑やかな言い合いをしながら、ベルトルドとアルカネットが寝間着に着替えて戻ってきた。
2人は張り合うようにしてベッドまでくると、いきなりジャンケンを始めた。真剣、かつ睨み合いながら、赤いオーラのようなものが見えて、キュッリッキは目を見張る。
「絶対に負けんぞ!」
「ふんっ。せいぜいサイ《超能力》でも駆使なさるがいいでしょう」
「お前ごときにサイ《超能力》など必要ないわっ!!」
せーのっ! と元気よく2人は掛け声を合わすと、あいこを5回繰り返して、勝負はアルカネットの勝ち。悔しそうにベルトルドが地団駄を踏んだ。
「きいいいいいいいいいいいっ」
「これも愛の差というもの」
目を瞬かせながら、一体何事だと二人を見上げていると、
「リッキーさんの左右どちら側で寝るか、決めていたのですよ」
にっこりとアルカネットが説明する。
「……」
つまり、2人とも一緒に寝るのか。
(こ…これも、愛なの、かな…)
ここに愛について講義する人がいれば、これも一種の愛だと言うだろう。しかし愛を知った初日に、この2人の行動を理解するのは、まだまだ難しかった。キュッリッキからしてみたら、単に張り合っているだけにしか見えないのだ。
キュッリッキを真ん中に挟んで、左側にアルカネット、右側にベルトルドが寝た。そしてこの争奪戦に参戦したフェンリルは、キュッリッキの腹の上に丸くなった。まさか2人が腹の上で寝るという暴挙に出るわけにもいかないので、勝負はフェンリルの勝ちだろう。フェンリルは勝ち誇って、尻尾をパタリと振った。それを見て、ベルトルドとアルカネットはこめかみをヒクつかせる。
「おのれ犬…」
「生意気ですね…」
キュッリッキの右上半身は、怪物に切り裂かれて大怪我を負っている。そのため包帯でキツく縛られ、身動きがとれない。更に、触れると痛がるから、少し距離を置かないといけない。
ピッタリとくっついて寝たい2人は、それで左右どちらで寝るかを決めていたのだ。
「おいアルカネット、お前くっつきすぎだろ!」
「別にいいじゃありませんか。ね、リッキーさん」
「……えっと」
今はまだ身体が動かせないからあまり関係なかったが、実はこの無駄に広いベッドが気に入っている。怪我が治って身体が自由に動かせたら、寝相を気にせず思う存分寝転がりたいと思っていた。
(怪我が治っても、このまま一緒に寝るのかなあ…)
ベルトルドもアルカネットも、横になりながら頭を上げて、何やら言い合いを続けている。先程までの感動は、もはや時間とともに過去に消え去っていた。
「アタシ、眠いからもう寝るの。おやすみなさい」
呆れたような声で言われて、ベルトルドとアルカネットは黙り込むと、泣きそうな顔をキュッリッキに向けた。しかしキュッリッキは、呆れ顔のまま目を閉じて取り合ってくれない。
お互い顔を見合わせ溜息をつくと、同時にキュッリッキの頬にキスをして、おとなしく眠りに就いた。
2人は張り合うようにしてベッドまでくると、いきなりジャンケンを始めた。真剣、かつ睨み合いながら、赤いオーラのようなものが見えて、キュッリッキは目を見張る。
「絶対に負けんぞ!」
「ふんっ。せいぜいサイ《超能力》でも駆使なさるがいいでしょう」
「お前ごときにサイ《超能力》など必要ないわっ!!」
せーのっ! と元気よく2人は掛け声を合わすと、あいこを5回繰り返して、勝負はアルカネットの勝ち。悔しそうにベルトルドが地団駄を踏んだ。
「きいいいいいいいいいいいっ」
「これも愛の差というもの」
目を瞬かせながら、一体何事だと二人を見上げていると、
「リッキーさんの左右どちら側で寝るか、決めていたのですよ」
にっこりとアルカネットが説明する。
「……」
つまり、2人とも一緒に寝るのか。
(こ…これも、愛なの、かな…)
ここに愛について講義する人がいれば、これも一種の愛だと言うだろう。しかし愛を知った初日に、この2人の行動を理解するのは、まだまだ難しかった。キュッリッキからしてみたら、単に張り合っているだけにしか見えないのだ。
キュッリッキを真ん中に挟んで、左側にアルカネット、右側にベルトルドが寝た。そしてこの争奪戦に参戦したフェンリルは、キュッリッキの腹の上に丸くなった。まさか2人が腹の上で寝るという暴挙に出るわけにもいかないので、勝負はフェンリルの勝ちだろう。フェンリルは勝ち誇って、尻尾をパタリと振った。それを見て、ベルトルドとアルカネットはこめかみをヒクつかせる。
「おのれ犬…」
「生意気ですね…」
キュッリッキの右上半身は、怪物に切り裂かれて大怪我を負っている。そのため包帯でキツく縛られ、身動きがとれない。更に、触れると痛がるから、少し距離を置かないといけない。
ピッタリとくっついて寝たい2人は、それで左右どちらで寝るかを決めていたのだ。
「おいアルカネット、お前くっつきすぎだろ!」
「別にいいじゃありませんか。ね、リッキーさん」
「……えっと」
今はまだ身体が動かせないからあまり関係なかったが、実はこの無駄に広いベッドが気に入っている。怪我が治って身体が自由に動かせたら、寝相を気にせず思う存分寝転がりたいと思っていた。
(怪我が治っても、このまま一緒に寝るのかなあ…)
ベルトルドもアルカネットも、横になりながら頭を上げて、何やら言い合いを続けている。先程までの感動は、もはや時間とともに過去に消え去っていた。
「アタシ、眠いからもう寝るの。おやすみなさい」
呆れたような声で言われて、ベルトルドとアルカネットは黙り込むと、泣きそうな顔をキュッリッキに向けた。しかしキュッリッキは、呆れ顔のまま目を閉じて取り合ってくれない。
お互い顔を見合わせ溜息をつくと、同時にキュッリッキの頬にキスをして、おとなしく眠りに就いた。
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