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混迷の遺跡編
episode173
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「魔法もサイ《超能力》も、奥が深いのね。あたし単純な戦闘スキル〈才能〉だから、別次元の話だわ」
ため息混じりにファニーが言う。そういったスキル〈才能〉を持つ相手と、仕事を組んだこともない。
「オレもそうさ。難しいことなんざ、判んねえよっ」
ギャリーは鼻を鳴らす。
「そうですね。でも、リッキーが無事に帰り着くなら、ありがたいことです」
ハドリーがしみじみと言うと、
「判っているじゃないか、そこの髭」
そうベルトルドに褒められ、ハドリーは薄く笑った。髭面だから髭か、と内心ガッカリする。
段々と目の前に海が迫って来て、目指す漁港も視界に入ってきた。
「うわー、はやーい」
大声を張り上げたファニーは、漁港に大きな黒いものを見つけて目を眇める。
「何、あの黒いの?」
「アレは、正規部隊の軍艦ですね」
メガネをクイッとあげてブルニタルが答える。
「ぐ…軍艦…」
小さすぎる漁港に横付けされた、黒い大きな艦艇。それを見て、ルーファスが小さく首をかしげた。
「ねえベルトルドさまあ、あれって、転移させてきたんです?」
「そうだ。重いったらないぞ全く」
「……」
「ありゃ主力艦だな」
ギャリーは懐かしそうに呟いた。全長210mほどの戦艦だ。
「飛ばさないと到底間に合わん。なんせ惑星の反対側になるからな、ここは」
――恐ろしい人
皆ボソリと胸中で呟いた。
戦艦の前には、ズラリと軍人たちが並び、ベルトルドに向けて敬礼している。
漁港に到着した一同は、その場にストンッと落とされ、地面に尻餅をついた。
「痛いよーもー」
ハーマンが抗議の声を上げると、ベルトルドはフンッと鼻を鳴らす。
「所詮貴様らはオマケだ、たわけ」
「閣下、出航の準備は整っております」
高級士官らしき男が、列からスッと前に出た。
「ご苦労アークラ大将。わざわざアルイールから出向いていたのか」
「閣下とお嬢様をお乗せするのですから、当然です」
「感謝する」
精悍な顔に笑みを称えるアークラ大将に、ベルトルドは不敵な笑みを向けた。
「それとな、オマケがぞろぞろいるが、片隅にでもついでに乗せてやってくれ」
「承知いたしております。では、皆様乗船下さい。まもなく出航させます」
「うむ」
キュッリッキを担架から抱き上げ、ベルトルドは戦艦に乗り込んだ。そのあとを一同はぞろぞろとついていく。
「総員、出航だ! アルイールへ向けて発進させよ!」
アークラ大将の指示で、戦艦は漁港を静かに離れた。
「アルイールまでは2時間ほどの航程となります。艦内は自由に見学していただいて構いませんが、艦橋へは入らないように」
キュッリッキを抱いたまま、ベルトルドは甲板へと出ていて、残された一同はアークラ大将直々に、丁寧な説明を受けていた。
「それと…、見知った顔がいくつかあるな。元気にしていたか、ギャリー、タルコット」
「うっす」
「おかげさまで」
アークラ大将の元部下だったギャリーとタルコットは、口の端を引きつらせながら笑顔を無理やり作る。
「3年前は、キュラ平原で世話になったが…。まあ、この件に関しては、閣下直々に謝罪があったゆえ、見逃すことにしている。無理やり、な」
凄みのある笑みに、ギャリーもタルコットも背中で大量の汗を流しまくった。
3年前のキュラ平原では、二重にも三重にも、色々な思い出が詰まりすぎている。それをいきなり蒸し返されて、2人以外にも、ライオン傭兵団は酢を飲んだ顔になっていた。話についていけないのは、ハドリー、ファニー、ケレヴィルの研究者、医師たちだ。
「短い時間の船旅を、ゆっくり楽しんでくれ。では失礼する」
にこやかに敬礼をしたあと、アークラ大将は船室を出て行った。
「心臓に悪いな…」
「もう二度と会わないと思っていたんだケド」
ギャリーとタルコットは、肩を落としながら溜息をついた。
ため息混じりにファニーが言う。そういったスキル〈才能〉を持つ相手と、仕事を組んだこともない。
「オレもそうさ。難しいことなんざ、判んねえよっ」
ギャリーは鼻を鳴らす。
「そうですね。でも、リッキーが無事に帰り着くなら、ありがたいことです」
ハドリーがしみじみと言うと、
「判っているじゃないか、そこの髭」
そうベルトルドに褒められ、ハドリーは薄く笑った。髭面だから髭か、と内心ガッカリする。
段々と目の前に海が迫って来て、目指す漁港も視界に入ってきた。
「うわー、はやーい」
大声を張り上げたファニーは、漁港に大きな黒いものを見つけて目を眇める。
「何、あの黒いの?」
「アレは、正規部隊の軍艦ですね」
メガネをクイッとあげてブルニタルが答える。
「ぐ…軍艦…」
小さすぎる漁港に横付けされた、黒い大きな艦艇。それを見て、ルーファスが小さく首をかしげた。
「ねえベルトルドさまあ、あれって、転移させてきたんです?」
「そうだ。重いったらないぞ全く」
「……」
「ありゃ主力艦だな」
ギャリーは懐かしそうに呟いた。全長210mほどの戦艦だ。
「飛ばさないと到底間に合わん。なんせ惑星の反対側になるからな、ここは」
――恐ろしい人
皆ボソリと胸中で呟いた。
戦艦の前には、ズラリと軍人たちが並び、ベルトルドに向けて敬礼している。
漁港に到着した一同は、その場にストンッと落とされ、地面に尻餅をついた。
「痛いよーもー」
ハーマンが抗議の声を上げると、ベルトルドはフンッと鼻を鳴らす。
「所詮貴様らはオマケだ、たわけ」
「閣下、出航の準備は整っております」
高級士官らしき男が、列からスッと前に出た。
「ご苦労アークラ大将。わざわざアルイールから出向いていたのか」
「閣下とお嬢様をお乗せするのですから、当然です」
「感謝する」
精悍な顔に笑みを称えるアークラ大将に、ベルトルドは不敵な笑みを向けた。
「それとな、オマケがぞろぞろいるが、片隅にでもついでに乗せてやってくれ」
「承知いたしております。では、皆様乗船下さい。まもなく出航させます」
「うむ」
キュッリッキを担架から抱き上げ、ベルトルドは戦艦に乗り込んだ。そのあとを一同はぞろぞろとついていく。
「総員、出航だ! アルイールへ向けて発進させよ!」
アークラ大将の指示で、戦艦は漁港を静かに離れた。
「アルイールまでは2時間ほどの航程となります。艦内は自由に見学していただいて構いませんが、艦橋へは入らないように」
キュッリッキを抱いたまま、ベルトルドは甲板へと出ていて、残された一同はアークラ大将直々に、丁寧な説明を受けていた。
「それと…、見知った顔がいくつかあるな。元気にしていたか、ギャリー、タルコット」
「うっす」
「おかげさまで」
アークラ大将の元部下だったギャリーとタルコットは、口の端を引きつらせながら笑顔を無理やり作る。
「3年前は、キュラ平原で世話になったが…。まあ、この件に関しては、閣下直々に謝罪があったゆえ、見逃すことにしている。無理やり、な」
凄みのある笑みに、ギャリーもタルコットも背中で大量の汗を流しまくった。
3年前のキュラ平原では、二重にも三重にも、色々な思い出が詰まりすぎている。それをいきなり蒸し返されて、2人以外にも、ライオン傭兵団は酢を飲んだ顔になっていた。話についていけないのは、ハドリー、ファニー、ケレヴィルの研究者、医師たちだ。
「短い時間の船旅を、ゆっくり楽しんでくれ。では失礼する」
にこやかに敬礼をしたあと、アークラ大将は船室を出て行った。
「心臓に悪いな…」
「もう二度と会わないと思っていたんだケド」
ギャリーとタルコットは、肩を落としながら溜息をついた。
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