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ナルバ山の遺跡編
episode67
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別名、傭兵街と呼ばれるエルダー街の昼間は、人通りが少ない。仕事のない傭兵たちは夜遅くまで酒を飲み、夕方近くまで寝ている。それに、夜の商売をする人々も住んでいるので、普通の暮らしを営む家庭が、あまり多くないこともある。
今日のように天気のいい明るい日中には、子供たちが外で元気に遊びまわっているものだ。その風景がこの街には欠けていた。
露店前や茶屋に人が少ないと感じたことを口にしたキュッリッキに、果物の露店を営んでいる老いたオヤジが、豪快に笑い飛ばした。
「朝まで飲んでた仕事にあぶれた連中が、今は大いびきかいて寝てるのさ」
「昼間動いてるのは、アタシらみたいに、真っ当な人間だけさね」
小柄で太った女将は、紙袋にオレンジを入れて、キュッリッキに手渡してくれた。
「ありがと、おばさん」
オレンジの代金を支払うと、キュッリッキはニコリと笑顔を返した。
アジトから徒歩10分ほどの距離にある、露店が多く出店するエルダー街唯一のマーケット広場だ。この広場では、昼も夜も店を出している。だいたい0時くらいまで店が開いているので、夜間行動する傭兵たちに、多く利用されていた。
「夕方頃になると、ここの広場も賑わい出すよ。今度その頃来てごらん」
「うん、そうしてみる」
キュッリッキが素直に返事をすると、オヤジは嬉しそうに笑った。
「また来ておくれね」
「またな、ねーちゃん」
笑顔の老夫婦に見送られ、手を振りながら露店の前をあとにした。
「頼まれたものは、全部買ったよね……」
腕に抱えた紙袋の中を覗き込んで、そして顔をずらして足元に声をかける。銀色の毛並みが美しい仔犬が、キュッリッキの声に応じて小さくのどを鳴らした。
「よし。じゃあ帰ろっ」
マーケット広場を小走りに出て行く。
ライオン傭兵団に腰が落ち着いて、早2週間が過ぎようとしていた。その間、何も仕事はなかったが、衣食住に困らない生活になったことで、のんびりとした時間も好ましく思えていた。
水を飲みに台所へ来たキュッリッキは、ちょうど昼食の準備で動けないキリ夫人の頼みをきいて、買い出しに来ていた。普段食材の買い出しは週に2回、キリ夫妻と一緒に、馬車を借りて数名で行く事になっている。荷物の量が半端ではないからだ。
力を持て余しているヴァルトと、きっちり仕切るメルヴィンは、仕事で出ていない限りは、毎回ついていく。しかし、それでも足りない食材が出たりすると、キリ夫人は誰かにおつかいを頼んでいた。
あまり重いものではなかったので、広場を出たあとは、のんびりと歩いてアジトに戻った。
「あ、キューリさん」
「キュッリッキです」
カーティスから呼ばれ、反射的に訂正をする。
ヴァルトから”キューリ”などと、不名誉なあだ名を進呈され、以来メルヴィン以外からは”キューリ”と呼ばれ続けていた。
こうして反射的に訂正をするが、この1週間改善されていない。
「はいはい。で、キューリさん、これから出かけますので、支度してください」
まるで相手にしていないカーティスは、簾のような前髪を軽く手で払いながら、穏やかな表情で言った。
「? アタシも? ドコ行くの?」
「道中お話ししますから、取り敢えず急いでくださいな」
「ああ、はい」
キュッリッキは急いで台所へ行った。慌てて荷物とつり銭をキリ夫人に渡すと、玄関ロビーにとんぼ返りした。
今日のように天気のいい明るい日中には、子供たちが外で元気に遊びまわっているものだ。その風景がこの街には欠けていた。
露店前や茶屋に人が少ないと感じたことを口にしたキュッリッキに、果物の露店を営んでいる老いたオヤジが、豪快に笑い飛ばした。
「朝まで飲んでた仕事にあぶれた連中が、今は大いびきかいて寝てるのさ」
「昼間動いてるのは、アタシらみたいに、真っ当な人間だけさね」
小柄で太った女将は、紙袋にオレンジを入れて、キュッリッキに手渡してくれた。
「ありがと、おばさん」
オレンジの代金を支払うと、キュッリッキはニコリと笑顔を返した。
アジトから徒歩10分ほどの距離にある、露店が多く出店するエルダー街唯一のマーケット広場だ。この広場では、昼も夜も店を出している。だいたい0時くらいまで店が開いているので、夜間行動する傭兵たちに、多く利用されていた。
「夕方頃になると、ここの広場も賑わい出すよ。今度その頃来てごらん」
「うん、そうしてみる」
キュッリッキが素直に返事をすると、オヤジは嬉しそうに笑った。
「また来ておくれね」
「またな、ねーちゃん」
笑顔の老夫婦に見送られ、手を振りながら露店の前をあとにした。
「頼まれたものは、全部買ったよね……」
腕に抱えた紙袋の中を覗き込んで、そして顔をずらして足元に声をかける。銀色の毛並みが美しい仔犬が、キュッリッキの声に応じて小さくのどを鳴らした。
「よし。じゃあ帰ろっ」
マーケット広場を小走りに出て行く。
ライオン傭兵団に腰が落ち着いて、早2週間が過ぎようとしていた。その間、何も仕事はなかったが、衣食住に困らない生活になったことで、のんびりとした時間も好ましく思えていた。
水を飲みに台所へ来たキュッリッキは、ちょうど昼食の準備で動けないキリ夫人の頼みをきいて、買い出しに来ていた。普段食材の買い出しは週に2回、キリ夫妻と一緒に、馬車を借りて数名で行く事になっている。荷物の量が半端ではないからだ。
力を持て余しているヴァルトと、きっちり仕切るメルヴィンは、仕事で出ていない限りは、毎回ついていく。しかし、それでも足りない食材が出たりすると、キリ夫人は誰かにおつかいを頼んでいた。
あまり重いものではなかったので、広場を出たあとは、のんびりと歩いてアジトに戻った。
「あ、キューリさん」
「キュッリッキです」
カーティスから呼ばれ、反射的に訂正をする。
ヴァルトから”キューリ”などと、不名誉なあだ名を進呈され、以来メルヴィン以外からは”キューリ”と呼ばれ続けていた。
こうして反射的に訂正をするが、この1週間改善されていない。
「はいはい。で、キューリさん、これから出かけますので、支度してください」
まるで相手にしていないカーティスは、簾のような前髪を軽く手で払いながら、穏やかな表情で言った。
「? アタシも? ドコ行くの?」
「道中お話ししますから、取り敢えず急いでくださいな」
「ああ、はい」
キュッリッキは急いで台所へ行った。慌てて荷物とつり銭をキリ夫人に渡すと、玄関ロビーにとんぼ返りした。
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