片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

文字の大きさ
上 下
63 / 882
ナルバ山の遺跡編

episode60

しおりを挟む
 ハワドウレ皇国の軍隊は、大きく分けて2つある。

 一つは、正規部隊。第一から第十まである1個軍で、約6万人ほどが一つの正規部隊に所属している。

 正規部隊を統括するのは、10人の大将たち。その下に色々な階級を持つ部下たちが、それぞれ従っていた。その正規部隊全部を統括・指揮するのは、将軍ただ一人。将軍が実質、正規部隊の長になる。

 もう一つは、特殊部隊。ダエヴァ第一から第三部隊、魔法部隊、警務部隊、尋問・拷問部隊、親衛隊。

 正規部隊には戦闘などに関するスキル〈才能〉を持たない者も徴兵され組み込まれるが、特殊部隊には、その部隊に見合ったスキル〈才能〉保持者のみが配属される。そして特殊部隊の上に将軍はいない。

 これら正規部隊と特殊部隊を統括する全軍総帥が、軍における最高指揮官となる。

 総帥の地位は代々皇王が就き、正規部隊と違って、特殊部隊は総帥の直轄に入る。そのため、正規部隊の長である将軍でも、直接特殊部隊は動かせない。総帥を経由して、要請や救援を求めることになる。しかし、戦場などでは比較的柔軟にスルーされることが多かった。

 キャラウェイ将軍の野望は、将軍職に収まることではない。総帥の地位に就くことだ。

 過去、皇王が総帥の地位を下賜して、代行させた例がいくつかある。その下賜された例では、主に将軍職を務めた者だった。その為に、キャラウェイは将軍職を欲した。

「ククク、将軍の地位なんぞ、わが輩の野望を成就するための踏み台にしか過ぎん。わが輩は総帥の地位を手に入れ、アイオン族の惑星ペッコ、トゥーリ族の惑星タピオをも征服し、ワイズキュール家を蹴落とし、世界の王となる!」

 壮大な野望を謳い、キャラウェイ将軍は大きくせり出した腹を揺すって高笑いした。すでに、一部の貴族や官僚たちを抱き込み、水面下で動き始めている。

 上下関係、命令が絶対の軍組織を掌握すれば、野望達成など容易い。

 そして、もう一つ潰しておかなければならない存在がある。

 若くして副宰相の地位に居る、ベルトルドだ。本来なら宰相マルックが有していたはずの、あらゆる権限を委譲された行政の長。軍への影響力はないが、行政のトップにいるベルトルドは、目の上のたんこぶに等しい。

 全てが完璧と称されるベルトルドの弱点を、キャラウェイは握っている。その弱点を突いて、即刻ベルトルドを排除する。

 幼い頃からの夢。キャラウェイは、世界征服を夢見て育った。

 しがない食料品雑貨店の子供として生まれ、授かったスキル〈才能〉は大工である。世界征服など無縁のスタートラインだったが、子供時代いじめられ続け、見返したい一心でターヴェッティ学院に入学。卒業して軍に入り、せっせと努力して中将まで上り詰めた。

 小さかった夢は大きく膨らみ、キャラウェイは邁進する。

「さあ、ベルトルドの小僧を叩きのめしてやろうぞ!」
しおりを挟む

処理中です...