片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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ライオン傭兵団編

episode52

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 キュッリッキとギャリーが仲直りして、団の雰囲気も和やかになったところで、またもや問題が発生した。正確には、キュッリッキだけには大問題である。

 仕事で出ていたザカリーやルーファスたちが、仕事を終え5日ほどで戻ってきて、アジトで打ち上げを開いていたときのことである。

 酒が足りねえ、つまみを寄越せ、オレサマ武勇伝、などと盛り上がる中、突如ヴァルトが大声を上げて立ち上がった。

「やい、こら、てめー! その舌噛みそうな名前をどうにかしろ!!」

 ビシッと人差し指を突きつけた先に、キュッリッキがぽかんと口を開けて座っている。どうやらキュッリッキの前に置かれた料理の皿を、取って欲しいとキュッリッキに言おうとして、名前を噛んだようだ。

 いきなりキレられて、キュッリッキは頭上にクエスチョンマークを点滅させた。

「なにキレてんだ? おめーは…」

 ギャリーがボソリとツッコむと、ヴァルトは腕を組んでふんぞり返る。

「とにかくお前の名前は言いにくくて困る!」

「べ、別にアタシが自分でつけたわけじゃないもん!」

 つられて憤慨すると、キュッリッキは拳をぎゅっと握って立ち上がった。

「この俺様が、ジキジキにお前にあだ名を授けてやる!」

「授けてくれなくってもいいわよ!」

「よし! お前は今日から”キューリ”だ!!!」

 食堂が一斉に静まり返る。

 暫し間を空けたあと、ルーファスが真っ先に吹き出した。

「それ、イイ!」

 その言葉に、キュッリッキも我を取り戻す。

「全然良くないわよっ!」

「あー、確かにそれイイな」

「言いやすいですねえ」

「可愛いじゃなぁ~い」

 同意する声が次々とあがる。

 得意満面に「ふふーん」とするヴァルトに、キュッリッキは噛み付かんばかりに叫ぶ。

「アタシには”リッキー”ってあだ名があるの! そんな野菜の名前で呼ばれたくないんだから!」

「却下だ! お前は今日から”キューリ”で決まりなのだ!」

「絶対に、嫌だもん!!」

 認めないキュッリッキは置き去りに、みんな”キューリ”というあだ名がお気に召したようだった。

「あだ名ってイイよね、結束感が高まるっていうか」

 ルーファスがニコニコ言うと、

「ほ、本当にそれでみなさん、イイんですか…」

 メルヴィンが困ったように肩をすくめた。

「あのヴァルトにしては、中々にナイスネーミングですよ」

 カーティスがご機嫌で頷く。

「キューリなんて、絶対嫌なの~~~~!」

 キュッリッキは必死に言うが、結局メルヴィンを除いた全員が、ヴァルト考案の”キューリ”を採用して、以降”キューリ”と呼ばれることになってしまうのだった。
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