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フリングホルニ編
episode764
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「いやぁ~、ラクチン~、ラクチンっ」
ふかふかな黒い毛並みに座り、マリオンは鼻歌を歌いながら上機嫌に笑う。それにつられるように、タルコットも深々と頷いた。
「始めっからこうしていたら、もっと早かったんだよ」
「うるさいぞーオマエタチ! キュッリッキの命令じゃなかったら、絶対乗せてなんてやらないんだからナー」
フローズヴィトニルは大きな狼形態になって、その背にマリオン、タルコット、ヴァルト、ランドン、ブルニタルを乗せている。
「文句言わないの!」
前を向いたままのキュッリッキに叱られて、フローズヴィトニルはブスッと眉間に皺を刻んだ。
レディトゥス・システムからキュッリッキを救い出し、フェンリルも救い出したメルヴィンたちは、状況が把握できないアルカネットサイドのほうへ、急いで向かっていた。
キュッリッキの命令で、フェンリルとフローズヴィトニルは大きな狼の姿に戻り、それぞれライオンのメンバーと、シ・アティウスを乗せて走っていた。
「ナビゲートは、その……いりませんか?」
フローズヴィトニルに乗ってるブルニタルが、恐る恐る誰にともなく問いかける。
「問題ない。あの男の気配を辿っている」
「は、はい」
フェンリルの低い声が応じて、ブルニタルは思わず背筋を伸ばした。いつもの仔犬姿のフェンリルに見慣れていて、しかも喋るものだから、ブルニタルは調子が狂う思いでひっそりとため息をついた。以前ナルバ山で狼形態に乗せてもらったことはあるが、さすがに怖い、と思ってしまうからだった。
フェンリルの言うあの男とは、急に姿をくらませたベルトルドのことである。
まさにメルヴィンの息の根を止めようとしていた矢先、突如空間転移で動力部から姿を消してしまったのだ。そのベルトルドはアルカネットのほうへ行っており、そちらは大パニックに陥っているらしい。
マリオンがあちらのメンバーと連絡を取ろうと念話を試みていたが、ノイズが激しく、また、ルーファスも混乱していて送受信できないという。
化け物級の二人が集えば、それは大パニックになるだろう。
無駄に広すぎる艦内の通路を、風のように駆け抜け、目的地に到着する。
「着いたぞ」
エグザイル・システムの部屋へ飛び込んだフェンリルとフローズヴィトニルは、思わず急ブレーキをかけて立ち止まった。その拍子に、シビルが前に投げ出されて、床をコロコロと転がる。
「うにゃ~~ん、キューに止まらないでくださいよー」
「いや、それどころじゃねーし」
「はえ?」
軽く頭を振って見上げると、すぐそばにザカリーが立っていた。そのザカリーが向けている目線を辿るように前方に目を向け、シビルは尻尾を逆立てて仰天した。
「ンなっ! なななななななんですかアレ!?」
タルコットもランドンも、思わず目を見張ってそれを凝視した。しかし、ヴァルトは目をキラキラさせながら、勢いよくフローズヴィトニルから飛び降りる。
「でっけートカゲ!!」
「しかもぉ、プラチナで出来てるじゃなあ~ぃ、あの鱗ぉ」
マリオンも目をキラキラさせながら、胸の前で手を合わせた。売れば一枚いくらだろう、とその目が物語っていた。
「オメーらの発想は、どこのベクトルを向いてやがんだええ!?」
大声でギャリーに怒鳴られて、ヴァルトとマリオンは口を尖らせる。急いで駆けつけてきたが、どうやら元気そうだ。
「あら~ん、生きてたのぉ」
「ったりめーだ!」
「なーよ、アレまじでなんだ?」
呑気そうにヴァルトが言うと、ギャリーは肩をすくめる。
「御大だ」
「へ?」
ヴァルトとマリオンは揃って固まった。
ふかふかな黒い毛並みに座り、マリオンは鼻歌を歌いながら上機嫌に笑う。それにつられるように、タルコットも深々と頷いた。
「始めっからこうしていたら、もっと早かったんだよ」
「うるさいぞーオマエタチ! キュッリッキの命令じゃなかったら、絶対乗せてなんてやらないんだからナー」
フローズヴィトニルは大きな狼形態になって、その背にマリオン、タルコット、ヴァルト、ランドン、ブルニタルを乗せている。
「文句言わないの!」
前を向いたままのキュッリッキに叱られて、フローズヴィトニルはブスッと眉間に皺を刻んだ。
レディトゥス・システムからキュッリッキを救い出し、フェンリルも救い出したメルヴィンたちは、状況が把握できないアルカネットサイドのほうへ、急いで向かっていた。
キュッリッキの命令で、フェンリルとフローズヴィトニルは大きな狼の姿に戻り、それぞれライオンのメンバーと、シ・アティウスを乗せて走っていた。
「ナビゲートは、その……いりませんか?」
フローズヴィトニルに乗ってるブルニタルが、恐る恐る誰にともなく問いかける。
「問題ない。あの男の気配を辿っている」
「は、はい」
フェンリルの低い声が応じて、ブルニタルは思わず背筋を伸ばした。いつもの仔犬姿のフェンリルに見慣れていて、しかも喋るものだから、ブルニタルは調子が狂う思いでひっそりとため息をついた。以前ナルバ山で狼形態に乗せてもらったことはあるが、さすがに怖い、と思ってしまうからだった。
フェンリルの言うあの男とは、急に姿をくらませたベルトルドのことである。
まさにメルヴィンの息の根を止めようとしていた矢先、突如空間転移で動力部から姿を消してしまったのだ。そのベルトルドはアルカネットのほうへ行っており、そちらは大パニックに陥っているらしい。
マリオンがあちらのメンバーと連絡を取ろうと念話を試みていたが、ノイズが激しく、また、ルーファスも混乱していて送受信できないという。
化け物級の二人が集えば、それは大パニックになるだろう。
無駄に広すぎる艦内の通路を、風のように駆け抜け、目的地に到着する。
「着いたぞ」
エグザイル・システムの部屋へ飛び込んだフェンリルとフローズヴィトニルは、思わず急ブレーキをかけて立ち止まった。その拍子に、シビルが前に投げ出されて、床をコロコロと転がる。
「うにゃ~~ん、キューに止まらないでくださいよー」
「いや、それどころじゃねーし」
「はえ?」
軽く頭を振って見上げると、すぐそばにザカリーが立っていた。そのザカリーが向けている目線を辿るように前方に目を向け、シビルは尻尾を逆立てて仰天した。
「ンなっ! なななななななんですかアレ!?」
タルコットもランドンも、思わず目を見張ってそれを凝視した。しかし、ヴァルトは目をキラキラさせながら、勢いよくフローズヴィトニルから飛び降りる。
「でっけートカゲ!!」
「しかもぉ、プラチナで出来てるじゃなあ~ぃ、あの鱗ぉ」
マリオンも目をキラキラさせながら、胸の前で手を合わせた。売れば一枚いくらだろう、とその目が物語っていた。
「オメーらの発想は、どこのベクトルを向いてやがんだええ!?」
大声でギャリーに怒鳴られて、ヴァルトとマリオンは口を尖らせる。急いで駆けつけてきたが、どうやら元気そうだ。
「あら~ん、生きてたのぉ」
「ったりめーだ!」
「なーよ、アレまじでなんだ?」
呑気そうにヴァルトが言うと、ギャリーは肩をすくめる。
「御大だ」
「へ?」
ヴァルトとマリオンは揃って固まった。
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