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フリングホルニ編
episode732
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突き出された爪竜刀の刃を、ベルトルドの剣が迷いなく受け止める。そして衝撃波が二人を中心に、円のように周りに広がって、煙を勢いよく払った。
額をつきつけるほどの至近距離で二人は睨み合い、交差した刃がギチギチと小刻みに振動し、力が押し合う。
「戦闘スキル〈才能〉はないが、俺にも心得があるんでな」
小馬鹿にするように笑い含みながら言われ、メルヴィンは柄を握る手に力を込める。
戦闘スキル〈才能〉を持つ者は、腕力や反射神経などが常人より優れている。そのメルヴィンの爪竜刀を、拮抗するほどの力で受け止めているベルトルドは、恐らくサイ《超能力》で全面的にフォローしているのだろうと、メルヴィンは内心舌打ちした。
サイ《超能力》を封じてしまえば、戦闘スキル〈才能〉を持つメルヴィンのほうが、圧倒的に優位になる。しかし、これでは一筋縄ではいきそうもなかった。
室内の白煙が薄れてくると、メルヴィンの後方に無事なライオン傭兵団が姿を現した。しかし、マリオンとシビルが、くたびれたようにうずくまっていた。
「頭の中がぁ…バチバチぃ~~ってスパークしてるわぁ……」
「ホントにもう、なんて力でしょう…」
「お疲れ、二人とも」
ランドンが苦笑を浮かべながら、ベルトルドの猛攻を防いだ二人を労わる。
「メルヴィンのヤロー、いいとこソッコー持っていったな」
両腕を組んで悔しそうにヴァルトがぼやくと、髪をサッと払い除けながらタルコットが頷いた。
目を開けていられないほどのサンダー・スパークの発光に、ヴァルトもタルコットも構えるのが遅れたが、メルヴィンはずっと機会を伺っていたのだろう。爆発と同時に飛び出していったのだった。
「愛の力なのよぉ、愛のん」
マリオンがしたり顔で頷くと、メガネをクイッと押し上げながら、ブルニタルも同意するように頷いた。
「そうです、愛の力です」
「だからテメーが愛とか口にしてんじゃねーよ! マジ腹よじれるほどウケっから!」
「にゃっ!」
ヴァルトがガハハハッと大笑いして、ブルニタルは心外そうに尻尾を立てた。
二人は一歩も譲らず、その場に踏みとどまり続けた。
「何故、リッキーを裏切ったんです」
たまりかねて、メルヴィンが口を開く。
会ったら、問い詰めようとずっと思っていた。
誰よりもキュッリッキの味方であり続けてきたこの男が、最も最低なやり方で彼女を裏切ったのだ。下劣極まりない行いで、キュッリッキの心と信頼をズタズタに引き裂いた。
「裏切った覚えはない。俺の企てに、協力してもらっているだけだ」
ベルトルドの声に淀みはなく、素っ気ない言葉に淡々とした口調が、メルヴィンの神経を苛立たせた。
「彼女の心を無視して、力尽くで何が協力ですか!」
「そうだ。力尽くでリッキーをモノにして、システムに押し込めた」
熱を帯びるメルヴィンの声音とは対照的に、ベルトルドの声は冷え冷えと冷め切っていた。まるで自らの行いを、肯定しているかのように。
この男にとって、キュッリッキはその程度の存在だったのだろうか。
「リッキーはあなたを、父親のように慕っていた。それなのに」
ベルトルドは不快そうに、口元を歪める。
「俺は父親ではない。一人の男として、リッキーを愛しているんだ」
「愛しているなら、何故陵辱した! リッキーを汚したその口で、ぬけぬけと愛しているなどと言うな!!」
額をつきつけるほどの至近距離で二人は睨み合い、交差した刃がギチギチと小刻みに振動し、力が押し合う。
「戦闘スキル〈才能〉はないが、俺にも心得があるんでな」
小馬鹿にするように笑い含みながら言われ、メルヴィンは柄を握る手に力を込める。
戦闘スキル〈才能〉を持つ者は、腕力や反射神経などが常人より優れている。そのメルヴィンの爪竜刀を、拮抗するほどの力で受け止めているベルトルドは、恐らくサイ《超能力》で全面的にフォローしているのだろうと、メルヴィンは内心舌打ちした。
サイ《超能力》を封じてしまえば、戦闘スキル〈才能〉を持つメルヴィンのほうが、圧倒的に優位になる。しかし、これでは一筋縄ではいきそうもなかった。
室内の白煙が薄れてくると、メルヴィンの後方に無事なライオン傭兵団が姿を現した。しかし、マリオンとシビルが、くたびれたようにうずくまっていた。
「頭の中がぁ…バチバチぃ~~ってスパークしてるわぁ……」
「ホントにもう、なんて力でしょう…」
「お疲れ、二人とも」
ランドンが苦笑を浮かべながら、ベルトルドの猛攻を防いだ二人を労わる。
「メルヴィンのヤロー、いいとこソッコー持っていったな」
両腕を組んで悔しそうにヴァルトがぼやくと、髪をサッと払い除けながらタルコットが頷いた。
目を開けていられないほどのサンダー・スパークの発光に、ヴァルトもタルコットも構えるのが遅れたが、メルヴィンはずっと機会を伺っていたのだろう。爆発と同時に飛び出していったのだった。
「愛の力なのよぉ、愛のん」
マリオンがしたり顔で頷くと、メガネをクイッと押し上げながら、ブルニタルも同意するように頷いた。
「そうです、愛の力です」
「だからテメーが愛とか口にしてんじゃねーよ! マジ腹よじれるほどウケっから!」
「にゃっ!」
ヴァルトがガハハハッと大笑いして、ブルニタルは心外そうに尻尾を立てた。
二人は一歩も譲らず、その場に踏みとどまり続けた。
「何故、リッキーを裏切ったんです」
たまりかねて、メルヴィンが口を開く。
会ったら、問い詰めようとずっと思っていた。
誰よりもキュッリッキの味方であり続けてきたこの男が、最も最低なやり方で彼女を裏切ったのだ。下劣極まりない行いで、キュッリッキの心と信頼をズタズタに引き裂いた。
「裏切った覚えはない。俺の企てに、協力してもらっているだけだ」
ベルトルドの声に淀みはなく、素っ気ない言葉に淡々とした口調が、メルヴィンの神経を苛立たせた。
「彼女の心を無視して、力尽くで何が協力ですか!」
「そうだ。力尽くでリッキーをモノにして、システムに押し込めた」
熱を帯びるメルヴィンの声音とは対照的に、ベルトルドの声は冷え冷えと冷め切っていた。まるで自らの行いを、肯定しているかのように。
この男にとって、キュッリッキはその程度の存在だったのだろうか。
「リッキーはあなたを、父親のように慕っていた。それなのに」
ベルトルドは不快そうに、口元を歪める。
「俺は父親ではない。一人の男として、リッキーを愛しているんだ」
「愛しているなら、何故陵辱した! リッキーを汚したその口で、ぬけぬけと愛しているなどと言うな!!」
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