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フリングホルニ編
episode724
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「私とハーマンの竜巻を凍らせるとは、やるようになりましたねカーティス」
表情をそのままに、アルカネットは目を眇めた。
イスベル・ヴリズンも、形状や使い方に応用の利く魔法である。カーティスがやってのけた方法は、風の中に冷気を取り込ませ、瞬時に凍らせる高度な応用だ。風の力を押さえ凍らせるためには、魔力のコントロールが優れていないと出来ない。
ハーマンもカーティスも、優秀な魔法使いだ。アルカネットと比べると、全ての魔法使いが足元にも及ばないが、攻撃魔法の扱いに関しては引けを取らない。
アルカネットにとって、本当に誤算の多い戦いである。
「アルカネットさん、もうこんな戦い止めませんか? 戦いは無意味だと、オレたちのよく知るアルカネットさんが叫んでる!」
いきなり叫びだしたルーファスに、何事かと室内の視線が全て集まる。
同様に意味を測り兼ねたアルカネットは、眉間にシワを刻んでルーファスを見た。
「キューリちゃんのことを本気で好きで、愛してたのに、昔の想い人と混同して、レイプ紛いのことをして傷つけて……そのことで自分を責めてるじゃん!」
「なにを判らないことを、言っているのですか…」
アルカネットの表情が、ますます不可解そうに歪む。
「自分で判んない? 今のあんたが支配しているせいかな、オレたちのよく知るアルカネットさんが、心の奥底で叫んでいるんだよ」
「おいルー、一体なんの話をしてるんだ?」
「意味が判りません…?」
ギャリーとカーティスが、怪訝そうな声を上げる。それをスルーして、ルーファスは続けた。
「リュリュさんが言ってた、本当のアルカネットさんの人格の上に、かぶらされた仮面(ペルソナ)ってのが、オレたちの知ってるアルカネットさんだ。そっちのペルソナのアルカネットさんが、もう戦うなと叫んでる。それが、伝わってきたんだ」
透視の力で知ることができた、アルカネットのもうひとつの人格の声。
リューディアの死で精神崩壊しかかったアルカネットが、この先生きていくためにかぶらされた仮面(ペルソナ)。
そのペルソナのアルカネットこそが、皆がよく知るアルカネットその人なのだ。
ペルソナのアルカネットは、本来の人格に壊され消えたとリュリュは言っていた。しかし、まだアルカネットの心の奥底で、ペルソナは生きていた。
今のアルカネット自身は気づいていないようだが、ルーファスには視えている。
キュッリッキを愛し、慈しみ、大切に想っていた人格のペルソナ。そのペルソナが今の人格を支配することができれば、もうこんな戦いはせずに済むだろう。
もっともこのチャンスに、これまでの鬱憤を晴らしたいメンツが、納得しないだろうが。
このまま戦いを、長引かせることはしたくない。ベルトルドのようなタフな精神力でもなければ、アルカネットのように底なしの魔力でもない。攻めるにしても体力には限界があり、守る側の精神と魔力が尽きれば終わりだ。
それこそ情に訴えてでも、戦いを終わらせ、早くキュッリッキを救い出したい。
ルーファスの根は優しく、あまり好戦的なタイプではない。
剣と念力で戦うこともあるが、サイ《超能力》はもっぱら支援や防御に使うことが多い。言われてすることもあるが、ほぼ自主的にみんなのサポートに回る。
アルカネットの中に、微かな可能性を見出したからには、戦いを避けて現状を打開したかった。
一方、アルカネットの頭の中は、ルーファスが考える以上の混乱を招いていた。
ルーファスの呼びかけにより、アルカネットの主人格に、ペルソナ人格が干渉し始めていたのだ。
(なんだ……一体?)
片手で額を抑え、アルカネットは内なる声に耳を傾ける。
(彼らを放っておいて、今すぐベルトルドを止めるのです!)
表情をそのままに、アルカネットは目を眇めた。
イスベル・ヴリズンも、形状や使い方に応用の利く魔法である。カーティスがやってのけた方法は、風の中に冷気を取り込ませ、瞬時に凍らせる高度な応用だ。風の力を押さえ凍らせるためには、魔力のコントロールが優れていないと出来ない。
ハーマンもカーティスも、優秀な魔法使いだ。アルカネットと比べると、全ての魔法使いが足元にも及ばないが、攻撃魔法の扱いに関しては引けを取らない。
アルカネットにとって、本当に誤算の多い戦いである。
「アルカネットさん、もうこんな戦い止めませんか? 戦いは無意味だと、オレたちのよく知るアルカネットさんが叫んでる!」
いきなり叫びだしたルーファスに、何事かと室内の視線が全て集まる。
同様に意味を測り兼ねたアルカネットは、眉間にシワを刻んでルーファスを見た。
「キューリちゃんのことを本気で好きで、愛してたのに、昔の想い人と混同して、レイプ紛いのことをして傷つけて……そのことで自分を責めてるじゃん!」
「なにを判らないことを、言っているのですか…」
アルカネットの表情が、ますます不可解そうに歪む。
「自分で判んない? 今のあんたが支配しているせいかな、オレたちのよく知るアルカネットさんが、心の奥底で叫んでいるんだよ」
「おいルー、一体なんの話をしてるんだ?」
「意味が判りません…?」
ギャリーとカーティスが、怪訝そうな声を上げる。それをスルーして、ルーファスは続けた。
「リュリュさんが言ってた、本当のアルカネットさんの人格の上に、かぶらされた仮面(ペルソナ)ってのが、オレたちの知ってるアルカネットさんだ。そっちのペルソナのアルカネットさんが、もう戦うなと叫んでる。それが、伝わってきたんだ」
透視の力で知ることができた、アルカネットのもうひとつの人格の声。
リューディアの死で精神崩壊しかかったアルカネットが、この先生きていくためにかぶらされた仮面(ペルソナ)。
そのペルソナのアルカネットこそが、皆がよく知るアルカネットその人なのだ。
ペルソナのアルカネットは、本来の人格に壊され消えたとリュリュは言っていた。しかし、まだアルカネットの心の奥底で、ペルソナは生きていた。
今のアルカネット自身は気づいていないようだが、ルーファスには視えている。
キュッリッキを愛し、慈しみ、大切に想っていた人格のペルソナ。そのペルソナが今の人格を支配することができれば、もうこんな戦いはせずに済むだろう。
もっともこのチャンスに、これまでの鬱憤を晴らしたいメンツが、納得しないだろうが。
このまま戦いを、長引かせることはしたくない。ベルトルドのようなタフな精神力でもなければ、アルカネットのように底なしの魔力でもない。攻めるにしても体力には限界があり、守る側の精神と魔力が尽きれば終わりだ。
それこそ情に訴えてでも、戦いを終わらせ、早くキュッリッキを救い出したい。
ルーファスの根は優しく、あまり好戦的なタイプではない。
剣と念力で戦うこともあるが、サイ《超能力》はもっぱら支援や防御に使うことが多い。言われてすることもあるが、ほぼ自主的にみんなのサポートに回る。
アルカネットの中に、微かな可能性を見出したからには、戦いを避けて現状を打開したかった。
一方、アルカネットの頭の中は、ルーファスが考える以上の混乱を招いていた。
ルーファスの呼びかけにより、アルカネットの主人格に、ペルソナ人格が干渉し始めていたのだ。
(なんだ……一体?)
片手で額を抑え、アルカネットは内なる声に耳を傾ける。
(彼らを放っておいて、今すぐベルトルドを止めるのです!)
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