781 / 882
フリングホルニ編
episode718
しおりを挟む
(あれだけ万能に近い形で防がれては、かえって俺たちの持ち味が活かせない。互を気遣いながらでは、攻撃を当てられずストレスを溜めるだけになる)
(そうですねえ)
(ギャリーはカーティスと組め。俺が不利になってきたら交代だ)
(判った)
(了解です)
(ザカリーとペルラ)
(おう)
(うん)
(付き崩せるポイントを見出したら、俺に遠慮なく撃ちまくれ)
(マカセトケ)
(任せて)
(ハーマンも俺に遠慮せず、得意な攻撃魔法をどんどん撃て。防御はルーがするから)
(うん! ガンガンいくよー!!)
(宣言した1分はとっくに過ぎた。いくぞ)
普段寡黙なガエルだが、こと戦闘のことになると饒舌になる。更に現場も仕切り出す。とは言っても、現場を仕切るときは相手次第で、アルカネットのような相手になれば本気になる。
ガエルが仕切り出したときは、皆黙って従う。
見栄を張ったり見せつけるためといった、下卑たことは一切しないからだ。的確に戦いのポイントを抑え、作戦を考え、提案する。
篭手をカシャカシャと直しながら、ガエルが皆の前に立った。
身長はゆうに2メートルを超え、ガッシリとした筋肉質の体躯は威圧感に満ち、鋭い眼光をたたえる目が、正面のアルカネットをしっかりと見据えていた。
熊のトゥーリ族であるガエルは、トゥーリ族の種族統一国家ロフレス王国の、元親衛隊員である。しかし、戦いと、己の腕を磨いて更に高みを目指すことを望んでいたガエルは、顔見知りだったペルラに誘われてライオン傭兵団へ入った。
まだ新興の傭兵団だったが、傭兵団とは名ばかりの少ない団員たちに、ガエルは満足している。
一騎当千のツワモノ達。各々が得意な分野を極め、自信と実力を兼ね備えていた。もちろん完璧ではないが、そこはガエルも同じだ。互いに切磋琢磨し、高め合っていける仲間たち。
色々と性格的問題はあるにしろ、実力は確かな後ろ盾だったベルトルドとアルカネット。かつて旧コッコラ王国では痛い思いを味わわされたが、いつかもう一度戦ってみたいと願っていた。
大事な仲間であるキュッリッキが捕らわれて、こんな形で対決する羽目になったが、またとない機会だ。
魔法と格闘技、異なるタイプだが、相手はアルカネットだ。不足もないし、遠慮する必要もない。
否、遠慮している余裕などないだろう。
「まずは、あなたが相手ですか、ガエル。あなたが相手では、少々本気を出さないといけませんね」
憎々しいまでの、優美な笑みを浮かべるアルカネットを見据え、ガエルは鼻で笑う。
「少々と言わず、全力でかかってくるがいい。手を抜かれて勝ったとなれば、俺の経歴に傷が付く」
「相変わらず負ける気はないのですね。いいでしょう、あなたのプライドが傷つかない程度には、力を出して戦ってあげましょう」
アルカネットの右掌から、太縄ほどの光が伸びた。そしてそれを掴むと、鞭のようにしならせ床を勢いよく叩いた。
「獣を躾けるには、鞭が一番です。さあ、いらっしゃい」
「やはりアイオン族は、度し難いな」
口の端をニヤリと歪め、ガエルは床を蹴ってアルカネットに飛びかかった。
(そうですねえ)
(ギャリーはカーティスと組め。俺が不利になってきたら交代だ)
(判った)
(了解です)
(ザカリーとペルラ)
(おう)
(うん)
(付き崩せるポイントを見出したら、俺に遠慮なく撃ちまくれ)
(マカセトケ)
(任せて)
(ハーマンも俺に遠慮せず、得意な攻撃魔法をどんどん撃て。防御はルーがするから)
(うん! ガンガンいくよー!!)
(宣言した1分はとっくに過ぎた。いくぞ)
普段寡黙なガエルだが、こと戦闘のことになると饒舌になる。更に現場も仕切り出す。とは言っても、現場を仕切るときは相手次第で、アルカネットのような相手になれば本気になる。
ガエルが仕切り出したときは、皆黙って従う。
見栄を張ったり見せつけるためといった、下卑たことは一切しないからだ。的確に戦いのポイントを抑え、作戦を考え、提案する。
篭手をカシャカシャと直しながら、ガエルが皆の前に立った。
身長はゆうに2メートルを超え、ガッシリとした筋肉質の体躯は威圧感に満ち、鋭い眼光をたたえる目が、正面のアルカネットをしっかりと見据えていた。
熊のトゥーリ族であるガエルは、トゥーリ族の種族統一国家ロフレス王国の、元親衛隊員である。しかし、戦いと、己の腕を磨いて更に高みを目指すことを望んでいたガエルは、顔見知りだったペルラに誘われてライオン傭兵団へ入った。
まだ新興の傭兵団だったが、傭兵団とは名ばかりの少ない団員たちに、ガエルは満足している。
一騎当千のツワモノ達。各々が得意な分野を極め、自信と実力を兼ね備えていた。もちろん完璧ではないが、そこはガエルも同じだ。互いに切磋琢磨し、高め合っていける仲間たち。
色々と性格的問題はあるにしろ、実力は確かな後ろ盾だったベルトルドとアルカネット。かつて旧コッコラ王国では痛い思いを味わわされたが、いつかもう一度戦ってみたいと願っていた。
大事な仲間であるキュッリッキが捕らわれて、こんな形で対決する羽目になったが、またとない機会だ。
魔法と格闘技、異なるタイプだが、相手はアルカネットだ。不足もないし、遠慮する必要もない。
否、遠慮している余裕などないだろう。
「まずは、あなたが相手ですか、ガエル。あなたが相手では、少々本気を出さないといけませんね」
憎々しいまでの、優美な笑みを浮かべるアルカネットを見据え、ガエルは鼻で笑う。
「少々と言わず、全力でかかってくるがいい。手を抜かれて勝ったとなれば、俺の経歴に傷が付く」
「相変わらず負ける気はないのですね。いいでしょう、あなたのプライドが傷つかない程度には、力を出して戦ってあげましょう」
アルカネットの右掌から、太縄ほどの光が伸びた。そしてそれを掴むと、鞭のようにしならせ床を勢いよく叩いた。
「獣を躾けるには、鞭が一番です。さあ、いらっしゃい」
「やはりアイオン族は、度し難いな」
口の端をニヤリと歪め、ガエルは床を蹴ってアルカネットに飛びかかった。
0
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした
月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。
それから程なくして――――
お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。
「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」
にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。
「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」
そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・
頭の中を、凄まじい情報が巡った。
これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね?
ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。
だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。
ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。
ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」
そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。
フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ!
うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって?
そんなの知らん。
設定はふわっと。
クラスで一人だけ男子な僕のズボンが盗まれたので仕方無くチ○ポ丸出しで居たら何故か女子がたくさん集まって来た
pelonsan
恋愛
ここは私立嵐爛学校(しりつらんらんがっこう)、略して乱交、もとい嵐校(らんこう) ━━。
僕の名前は 竿乃 玉之介(さおの たまのすけ)。
昨日この嵐校に転校してきた至極普通の二年生。
去年まで女子校だったらしくクラスメイトが女子ばかりで不安だったんだけど、皆優しく迎えてくれて ほっとしていた矢先の翌日……
※表紙画像は自由使用可能なAI画像生成サイトで制作したものを加工しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる