片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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フリングホルニ編

episode717

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 アルカネットを倒し、ベルトルドの股間に魔弾をブチ込むことを、今回最大の目標としていた。

(きゅーりを汚した、あのでっけぇブツを、オレが魔弾でぶっ潰す!)

 握り拳全開で、心に誓う。

 先日の温泉旅行で、あの立派な暴れん棒を直に見た。それを思い出して、こめかみに青筋が走る。バーニングしたアレは、男として妬ましいほどデカかった。

(ムカツクほどでけぇんだから、マジぶっ潰す!!)

(ちょっとザカリー、思考のベクトルがどんどん別の方向イッテルヨ)

 ルーファスの念話が割り込んできて、ザカリーはハッとなった。

(気持ちは判る。ベルトルド様のアレ、ほんとデカイんだよね……羨ましい)

(うっ羨ましくなんかねえよ! きゅーりを傷つけた忌まわしいブツだ!!)

(ホントだよね。メルヴィンのも負けず劣らず立派だけど、処女でいきなりアレじゃ、びっくりして痛かっただろうに……)

「おめーら真面目にやれよ!! 何脱線してやがるゴルァ!!」

 殺気立った顔を振り向けて、ギャリーが声を荒らげて怒鳴る。

「ひっ」

「すまんすっ」

 ルーファスとザカリーが、首をすくめて頭を下げた。

 この場にいるメンバーの意識を、ルーファスが念話で繋げている。アルカネットは念話が使えないので、念話で作戦のやり取りをするためだ。

「まったく……」

 ペルラが小さくため息をついた。

「カーティス、ハーマン、援護頼む。行くぞギャリー」

 構えていたガエルが、しょうもない会話をスルーして言った。

「おう」

 ガエルとギャリーが正面から向かい、攻撃体勢に入る。

 ガエルが右拳を振り上げ、アルカネットの頭上に狙いを定めて振り下ろす。そしてギャリーは肩に担いでいたシラーを、アルカネットの肩に目掛けて、素早く振り下ろした。

 二人の攻撃が繰り出される瞬間を利用し、カーティスの氷魔法スヴァード・イスと、ハーマンの氷魔法フロスト・キテートが襲いかかる。更にペルラがアルカネットの両脚の太ももを狙って、短剣を数本投げつけた。

「攻撃の数を増やしたところで、当てなければ無意味なのですよ」

 アルカネットは腰を沈めると、漆黒の翼でガエルの巨体を払い除け、

「トイコス・トゥルバ!」

 土魔法で瞬時に土壁を築いて、ギャリーの魔剣シラーとペルラの短剣を防ぎ、

「トゥリ・タンシ」

 火魔法で自身の周囲へ、炎を舞い上がらせた。これにより、氷の剣スヴァード・イスと、無数に突き伸びた氷の柱フロスト・キテートが、炎に溶かされ飲み込まれる。

「無詠唱で魔法連打ずるいいいいい!!」

 ぎゃーすかと癇癪を起こして、ハーマンが悔しそうに喚く。

「何度も言っているでしょう、あなたの魔法は威力ばかりが強くて、コントロールが甘いのです」

「むっきいいいい」

 命をかけて戦っている場面になっても、アルカネットに説教されて、ハーマンの頭の中は怒りで噴火寸前だった。

「前に出るあなたたちを傷つけないよう、攻撃魔法を選ばないとですが……もう、巻き込む勢いで撃っても構いませんよね?」

 にこやかに、しかし、こめかみに筋が走っている。

 カーティスの怒りにも、火が付いたようである。

「………まあ、かまわねーけどよ……。おい、ルー、オレたちの防御、マジ頼むわ」

「おっけー、頑張るよ」

 肩を落とすギャリーに、ルーファスはにっこり笑った。

 連携がとりづらいのだ。

 相手が平凡な魔法使いなら、今の連携で防がれる心配は100%ナイ。だが相手はアルカネットであり、これまで見たこともなかった翼まで生やしている。

 ヴァルトのように、攻撃を翼で払いのけるやりかたは同じだが、ガエルが勢いよく吹っ飛ばされた様子から、翼には強力な強化魔法が施されているようだった。

(俺とハーマンで組もう)

 立ち上がったガエルが、念話で提案する。
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