片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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奪われしもの編 彼女が遺した空への想い

episode706

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「ホントにねえ…。まあそんな前例のおかげで、躊躇いなんてものはなかったのね」

「きっと、巫女にも恋愛の自由を与えていたのでしょう、神は。腫れ物のように扱われるだけじゃなく、本当に想い合う相手と時間を共有できるように」

 真剣な顔で言ったブルニタルを、皆驚いたように見つめていた。

「な、なんですか!?」

 メガネを押し上げながら、ブルニタルは肩をそびやかした。

「いや、ブルニタルの口から、そんな言葉が出てくるのが驚きってゆーか……」

「恋愛とか、似合わねー!」

 ザカリーとヴァルトに言われて、ブルニタルは怒って尻尾を逆立てた。

「確かに、似合わないわね」

「にゃっ」

 リュリュにまで言われて、ブルニタルはシュンッと項垂れた。その肩をペルラが無言で慰める。

「まあ、そんな酷い方法で神々の元へ行くために、フリングホルニは作られたわ。どのくらいの旅程になるか判らないから、船の中にはあらゆる設備が設けられ、小国がまるごと移築されたようなものね。あれが足りない、これを増やそう、そんなことやっていたから、船の規模がモナルダ大陸の3分の1の大きさになっちゃって。別の場所で作られていたレディトゥス・システムだけは、設置される前に、ユリディスの抵抗にあって結界が張られ手出しができなくなり、フェンリルの大暴走で船は飛び立つこともなく、地中に埋まってしまったわ」

「でもよ、地中に埋まってたエルアーラ遺跡…フリングホルニを、御大たちはどうやって知ることになったんで? それが見つからなきゃキューリに手出ししなかっただろ」

 ギャリーの言うことに、ルーファスも頷く。

「シ・アティウスとの出会いね。あのエロメガネはアルケラのことに関するフィールドワークをしてたから。世界中を歩き回って、些細な痕跡も何もかも調べまくってたわ。そのおかげでベルの計画も加速したってわけ。もっとも、小娘を道具のように扱うことだけには、反対していたようだけど」

「じゃあ、キューリさんを助けてくれてるかも?」

 シビルが身を乗り出して言うと、リュリュは首を横に振った。

「コキ使われてるでしょうね。――シ・アティウスにも夢があるのよ。フィールドワークで得た全てを、後世に遺して、語り継ぐっていうね。彼は、アルケラのことがなんでも知りたいの、どんな小さな情報でも全て。だからベルたちに協力しているの」

「そんなあ……」

「でも、あーたたちの助けにはなると思うわ」

 瞬時に「え!?」という空気が車内に満ちる。

「確約は出来ないけど、たぶん、助けてくれるはずよ」
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