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奪われしもの編 彼女が遺した空への想い
episode695
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1万年前、この世界には、国と呼べるものは3つしかなかった。
トゥーリ族が治める惑星タピオに、種族統一国家ロフレス王国。
アイオン族が治める惑星ペッコに、種族統一国家イルマタル帝国。
そして、ヴィプネン族が治める惑星ヒイシに、種族統一国家神王国ソレル。
太陽を中心に、3つの惑星が等間隔で囲み、遠く離れているというのに、3つの国は戦争をしていた。
発展を極めた文明は、宇宙空間へも自由自在に行くことができた。
各惑星間は途方もない距離があり、それを短時間に航行するために、空間跳躍システムも開発されていた。そのため宇宙空間を舞台に、小競り合いや大規模な戦闘まで、飽きずに繰り広げられていたのだった。
3種族は互いに、種族としての尊厳をかけて戦っていた。
その戦争のきっかけは、本当に些細な口喧嘩だった。
アイオン族の美意識過剰な偏見、トゥーリ族の種族優位性の奢り、ヴィプネン族の平凡な劣等感。それらが外交パーティーの場で論争になり、喧嘩を起こしたのが種族の代表たちだったため、戦争にまで膨れ上がってしまったのだ。
更に、ここ何代かアルケラの巫女が、ヴィプネン族の中から連続で輩出していることも、また他種族の妬みを買っている。巫女を長く擁していたことで、神王国などと称したことが、より反感を買っていた。
神々の言葉を人間たちに伝え、人間たちを正しく導くことを役目としているアルケラの巫女。アルケラとは神々の居ます世界の名称、神から選ばれた巫女を、アルケラの巫女と称している。
巫女は代々千年の時を生き、役目を終える1年前に次代の巫女を神から告げられ、手元に引き取り役目を引き継がせる。そして、新たに巫女となった少女は、初潮を迎える頃になると外見の年齢が止まり、女の身体に成長することなく長い時を生きた。
次代が他種族の少女であっても、引継ぎには関係なく巫女は少女を引き取る。そして引継ぎが終わると、祖国へ帰して、そこで新たな巫女は役目を全うした。巫女に国境は存在せず、全ての人間たちのために巫女は存在するのだ。
それなのに、神王国ソレルを治めるヤルヴィレフト王家は、何代もヴィプネン族から輩出される巫女の存在を、まるで自分たちの占有物のように思っていた。
「ヤルヴィレフト王家最後の王クレメッティは、戦争に勝って他惑星を支配下に置くために、あるものを建造させた。国民に重税を課し、苦役を強いて、必死に作り上げたものが、フリングホルニ。リッキーも仕事で訪れただろう、エルアーラ遺跡のことだ」
「フリング……ホルニ…」
聞き覚えのある名前だった。
そう、エルアーラ遺跡で、ヒューゴと名乗るユーレイから聞いたのだ。
「ヤルヴィレフト王家の歪んだ野望……ヒューゴが言ってた」
ぽつりと呟いたキュッリッキの言葉に、ベルトルドとアルカネットは視線をかわした。
トゥーリ族が治める惑星タピオに、種族統一国家ロフレス王国。
アイオン族が治める惑星ペッコに、種族統一国家イルマタル帝国。
そして、ヴィプネン族が治める惑星ヒイシに、種族統一国家神王国ソレル。
太陽を中心に、3つの惑星が等間隔で囲み、遠く離れているというのに、3つの国は戦争をしていた。
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3種族は互いに、種族としての尊厳をかけて戦っていた。
その戦争のきっかけは、本当に些細な口喧嘩だった。
アイオン族の美意識過剰な偏見、トゥーリ族の種族優位性の奢り、ヴィプネン族の平凡な劣等感。それらが外交パーティーの場で論争になり、喧嘩を起こしたのが種族の代表たちだったため、戦争にまで膨れ上がってしまったのだ。
更に、ここ何代かアルケラの巫女が、ヴィプネン族の中から連続で輩出していることも、また他種族の妬みを買っている。巫女を長く擁していたことで、神王国などと称したことが、より反感を買っていた。
神々の言葉を人間たちに伝え、人間たちを正しく導くことを役目としているアルケラの巫女。アルケラとは神々の居ます世界の名称、神から選ばれた巫女を、アルケラの巫女と称している。
巫女は代々千年の時を生き、役目を終える1年前に次代の巫女を神から告げられ、手元に引き取り役目を引き継がせる。そして、新たに巫女となった少女は、初潮を迎える頃になると外見の年齢が止まり、女の身体に成長することなく長い時を生きた。
次代が他種族の少女であっても、引継ぎには関係なく巫女は少女を引き取る。そして引継ぎが終わると、祖国へ帰して、そこで新たな巫女は役目を全うした。巫女に国境は存在せず、全ての人間たちのために巫女は存在するのだ。
それなのに、神王国ソレルを治めるヤルヴィレフト王家は、何代もヴィプネン族から輩出される巫女の存在を、まるで自分たちの占有物のように思っていた。
「ヤルヴィレフト王家最後の王クレメッティは、戦争に勝って他惑星を支配下に置くために、あるものを建造させた。国民に重税を課し、苦役を強いて、必死に作り上げたものが、フリングホルニ。リッキーも仕事で訪れただろう、エルアーラ遺跡のことだ」
「フリング……ホルニ…」
聞き覚えのある名前だった。
そう、エルアーラ遺跡で、ヒューゴと名乗るユーレイから聞いたのだ。
「ヤルヴィレフト王家の歪んだ野望……ヒューゴが言ってた」
ぽつりと呟いたキュッリッキの言葉に、ベルトルドとアルカネットは視線をかわした。
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