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召喚士編
episode629
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後ろに居た他の軍人もやってきて、倒れたアンティアの髪をグイッと乱暴に掴んで、無理やり立たせた。
「痛いわっ! 止めてちょうだい」
「グズのうえに口答えするか。穀潰しどもが」
侮蔑を込めた目でアンティアを見下ろすと、若い軍人は容赦のない力でアンティアの頬を左右叩いた。
「なん…いやよ……おかあさまあ」
ついに堪えていたものがこみ上げてきて、アンティアは泣き声をあげた。しかし、
「五月蝿いガキが」
今度は軍靴のつま先で腹を蹴られ、アンティアは喉をつまらせ目を見開いた。胃から這い上ってきたものが、口から外へ吐き出された。その様子を見ていた少女たちは、今度は自分がそうなるかもしれないという恐怖で、怖気付く足で急いで前に進んだ。
「おい、そのガキを止まらせるな、急いで歩かせろ!」
先頭の方から声がかかり、若い軍人は敬礼すると、アンティアの髪を掴んで引きずって進んだ。
(なぜわたくしが……わたくしが!)
「遅くなりまして、申し訳ありません!」
「ご苦労だったな」
ねぎらいの言葉をかける上司の前で、恐縮を貼り付けた顔をしたエーベルハルド長官は敬礼した。
「なに、深窓のご令嬢どもの護送だったんだ、大変だったろうに」
両手を腰に当てて、ベルトルドはニヤリと口元を歪めた。
「おつかれさまでした。引き続き、近辺の監視をお願いします」
アルカネットに言われ、エーベルハルド長官は更に姿勢を正して敬礼する。
地位的には同格なのだが、ダエヴァにとってアルカネットの存在はベルトルドと同格である。
特殊部隊の括りに入っているダエヴァは、大きく分けて三部隊ある。
部隊長が長官としての地位をいただき、別の特殊部隊の長官たちと席を同じくする。しかしダエヴァはベルトルドの私兵部隊とも噂され、実際ベルトルドの私的な戦力として動くことも多い。特殊部隊の更に特殊な立場にあった。
部下たちを指揮するためにその場を後にしたエーベルハルド長官を見送り、ベルトルドは両腕を組んで、地面に座り込んでいる少女たちを見おろした。
「ドレスにヒールか。まあ、どこへ連れて行くとは言っていなかったが、歩きづらい服装をしてきたもんだな、どいつもこいつも」
あっぱれな女子力根性に呆れてしまい、わざとらしく肩をすくめた。
「遠足でも、もうちょっと動きやすい服装をするものですが」
アルカネットも同様に呆れ果てていた。
自分たちの為にめかしこんできたとは気づいているが、そんなことはどうでもいいことだ。目の前の少女たちに色目を使われても、迷惑にしか感じないからだ。
少女たちは、憧れの2人が目の前にいても、もはや目を輝かせる元気がなかった。
身体中くたくたで、足は棒のように固くなり、今はとにかく柔らかな自分のベッドで休みたい気分なのだ。喉だって渇いている。暖かいミルクティーが飲みたい。そんな思いが表情を覆っていた。
「さて貴様たち、遠路はるばる来てもらったが、ここがどこだか判る……わけないか。ここは旧ソレル王国にある、ナルバ山の跡地だ」
誰ひとり興味がわかず、途方にくれたように地面に視線を落としている。
「……無反応過ぎて切ないな」
ベルトルドは拗ねたように口を尖らせた。
「痛いわっ! 止めてちょうだい」
「グズのうえに口答えするか。穀潰しどもが」
侮蔑を込めた目でアンティアを見下ろすと、若い軍人は容赦のない力でアンティアの頬を左右叩いた。
「なん…いやよ……おかあさまあ」
ついに堪えていたものがこみ上げてきて、アンティアは泣き声をあげた。しかし、
「五月蝿いガキが」
今度は軍靴のつま先で腹を蹴られ、アンティアは喉をつまらせ目を見開いた。胃から這い上ってきたものが、口から外へ吐き出された。その様子を見ていた少女たちは、今度は自分がそうなるかもしれないという恐怖で、怖気付く足で急いで前に進んだ。
「おい、そのガキを止まらせるな、急いで歩かせろ!」
先頭の方から声がかかり、若い軍人は敬礼すると、アンティアの髪を掴んで引きずって進んだ。
(なぜわたくしが……わたくしが!)
「遅くなりまして、申し訳ありません!」
「ご苦労だったな」
ねぎらいの言葉をかける上司の前で、恐縮を貼り付けた顔をしたエーベルハルド長官は敬礼した。
「なに、深窓のご令嬢どもの護送だったんだ、大変だったろうに」
両手を腰に当てて、ベルトルドはニヤリと口元を歪めた。
「おつかれさまでした。引き続き、近辺の監視をお願いします」
アルカネットに言われ、エーベルハルド長官は更に姿勢を正して敬礼する。
地位的には同格なのだが、ダエヴァにとってアルカネットの存在はベルトルドと同格である。
特殊部隊の括りに入っているダエヴァは、大きく分けて三部隊ある。
部隊長が長官としての地位をいただき、別の特殊部隊の長官たちと席を同じくする。しかしダエヴァはベルトルドの私兵部隊とも噂され、実際ベルトルドの私的な戦力として動くことも多い。特殊部隊の更に特殊な立場にあった。
部下たちを指揮するためにその場を後にしたエーベルハルド長官を見送り、ベルトルドは両腕を組んで、地面に座り込んでいる少女たちを見おろした。
「ドレスにヒールか。まあ、どこへ連れて行くとは言っていなかったが、歩きづらい服装をしてきたもんだな、どいつもこいつも」
あっぱれな女子力根性に呆れてしまい、わざとらしく肩をすくめた。
「遠足でも、もうちょっと動きやすい服装をするものですが」
アルカネットも同様に呆れ果てていた。
自分たちの為にめかしこんできたとは気づいているが、そんなことはどうでもいいことだ。目の前の少女たちに色目を使われても、迷惑にしか感じないからだ。
少女たちは、憧れの2人が目の前にいても、もはや目を輝かせる元気がなかった。
身体中くたくたで、足は棒のように固くなり、今はとにかく柔らかな自分のベッドで休みたい気分なのだ。喉だって渇いている。暖かいミルクティーが飲みたい。そんな思いが表情を覆っていた。
「さて貴様たち、遠路はるばる来てもらったが、ここがどこだか判る……わけないか。ここは旧ソレル王国にある、ナルバ山の跡地だ」
誰ひとり興味がわかず、途方にくれたように地面に視線を落としている。
「……無反応過ぎて切ないな」
ベルトルドは拗ねたように口を尖らせた。
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