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美人コンテスト編
episode615
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サイ《超能力》というスキル〈才能〉があることを、アルッティは思い出していた。
(念…力)
意志の力で物体を動かし、破壊するサイ《超能力》の力の一つ。
彼の周りには、そんな凄いレアスキル〈才能〉を持つ者はいない。まさか今宿に泊まりに来ている客たちのほとんどが、レアスキル〈才能〉持ちだらけだとは知らない。
そして目の前に立つ男が、Overランクという、前代未聞の力を備えているとは想像も出来ないことだ。
本来ランク付けはトリプルSまでで、Overランクなど他にアルカネットの魔法スキル〈才能〉があるだけなのだ。
(僕は、殺されるのか…。目の前の、この男に)
幼い頃の過ちのせいで。
キュッリッキという、片翼の無様な同族を殺しかけた罪で。
(誰が、詫びてやるもんか)
修道女(おとな)たちだって、孤児(なかま)たちだって、誰も自分を責めたりしなかった。褒めてくれた。
(死んで当然だった!)
そう思った瞬間、胴が突然反り始めた。
「うが……が…」
背骨がバキッと音を立てて折れた。
折れた骨が身体を突き破り、内蔵を傷つけ、大量の血を吐き出した。それなのに、意識はしっかりと保たれ、痛みはあるが、麻痺はしない。
(殺してくれ……殺してくれ…)
アルッティは死を願った。この想像を絶する苦痛から解放されたくて。狂って、何もかも手放して、魂すら手放し解放されたい。
「奇岩の上から地面に叩きつけられたら、後は頭部が爆ぜて終わりか」
ゾッとするほど冷たく、そして素っ気ない口調で男は呟くと、組んでいた腕を解き、そして右手をアルッティに向けた。
上に向けていた掌を、グッと握る。
ベシャッ!
青いネモフィラが、血の色に染まる。
月明かりのみの闇夜の中で、どす黒い血の色で染め上げられた。
アルッティが事切れたことを確認し、月の光を浴び続けた男は、淡く白い光に溶け込むようにして、この場から消えた。
ケウルーレを襲った凄まじい殺意。その時シグネは鏡台の前で髪を梳かしていたが、弾かれたように立ち上がって部屋を飛び出した。
従業員たちは皆震え上がって、身動きすら取れない。
殺意で宿が、島が震撼するなど初めての体験である。
従業員たちには、宿と宿泊客たちの安全を確認しに行くよう申し付け、シグネは急いで宿を出た。
(嫌な予感がする…)
ネモフィラの咲く丘へと急いだ。
鼻を掠める血臭に顔をしかめ、そして、
「…なんてことを…」
原型などとどめない、誰かもわからないほどに潰された死体を見つけた。
シグネはグッと目を強く瞑り、眉間を指で押さえる。そしてゆっくりと目を開き、丘全体を見渡す。
「そう、ですか。そういうことで、ございましたか」
幻視の力で、この場に残る記憶を視た。
死体の残酷さよりも、この場にくすぶり続けるベルトルドの怒りを、シグネは怖れた。
こんな怒りは見たことがない。それだけに、愛は深く大きい。
アルッティが何をしたかは、シグネの幻視でも視ることはできないが、あの男をここまで突き動かしたほどの大罪を犯したのだろう。
シグネは残念そうにため息をつくと、アルッティの死体に背を向けた。
「さて、早急にこの場を清めなくては」
(念…力)
意志の力で物体を動かし、破壊するサイ《超能力》の力の一つ。
彼の周りには、そんな凄いレアスキル〈才能〉を持つ者はいない。まさか今宿に泊まりに来ている客たちのほとんどが、レアスキル〈才能〉持ちだらけだとは知らない。
そして目の前に立つ男が、Overランクという、前代未聞の力を備えているとは想像も出来ないことだ。
本来ランク付けはトリプルSまでで、Overランクなど他にアルカネットの魔法スキル〈才能〉があるだけなのだ。
(僕は、殺されるのか…。目の前の、この男に)
幼い頃の過ちのせいで。
キュッリッキという、片翼の無様な同族を殺しかけた罪で。
(誰が、詫びてやるもんか)
修道女(おとな)たちだって、孤児(なかま)たちだって、誰も自分を責めたりしなかった。褒めてくれた。
(死んで当然だった!)
そう思った瞬間、胴が突然反り始めた。
「うが……が…」
背骨がバキッと音を立てて折れた。
折れた骨が身体を突き破り、内蔵を傷つけ、大量の血を吐き出した。それなのに、意識はしっかりと保たれ、痛みはあるが、麻痺はしない。
(殺してくれ……殺してくれ…)
アルッティは死を願った。この想像を絶する苦痛から解放されたくて。狂って、何もかも手放して、魂すら手放し解放されたい。
「奇岩の上から地面に叩きつけられたら、後は頭部が爆ぜて終わりか」
ゾッとするほど冷たく、そして素っ気ない口調で男は呟くと、組んでいた腕を解き、そして右手をアルッティに向けた。
上に向けていた掌を、グッと握る。
ベシャッ!
青いネモフィラが、血の色に染まる。
月明かりのみの闇夜の中で、どす黒い血の色で染め上げられた。
アルッティが事切れたことを確認し、月の光を浴び続けた男は、淡く白い光に溶け込むようにして、この場から消えた。
ケウルーレを襲った凄まじい殺意。その時シグネは鏡台の前で髪を梳かしていたが、弾かれたように立ち上がって部屋を飛び出した。
従業員たちは皆震え上がって、身動きすら取れない。
殺意で宿が、島が震撼するなど初めての体験である。
従業員たちには、宿と宿泊客たちの安全を確認しに行くよう申し付け、シグネは急いで宿を出た。
(嫌な予感がする…)
ネモフィラの咲く丘へと急いだ。
鼻を掠める血臭に顔をしかめ、そして、
「…なんてことを…」
原型などとどめない、誰かもわからないほどに潰された死体を見つけた。
シグネはグッと目を強く瞑り、眉間を指で押さえる。そしてゆっくりと目を開き、丘全体を見渡す。
「そう、ですか。そういうことで、ございましたか」
幻視の力で、この場に残る記憶を視た。
死体の残酷さよりも、この場にくすぶり続けるベルトルドの怒りを、シグネは怖れた。
こんな怒りは見たことがない。それだけに、愛は深く大きい。
アルッティが何をしたかは、シグネの幻視でも視ることはできないが、あの男をここまで突き動かしたほどの大罪を犯したのだろう。
シグネは残念そうにため息をつくと、アルッティの死体に背を向けた。
「さて、早急にこの場を清めなくては」
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