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美人コンテスト編
episode613
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追い出されたリュリュとシ・アティウスは、空き部屋を探しながら廊下をウロウロ歩いた。
「以前から気になっていたが、アルカネットとじゃ、イヤなのか?」
物凄くシンプルに直球を投げつけられたリュリュは、垂れ目を眇めてシ・アティウスを睨みつける。
「イ・ヤ・よ! アタリマエじゃない!」
「そうなのか」
プイッと顔を背けると、リュリュはゲッソリと肩を落とす。
「アイツはね、微笑みながら女を犯し、笑いながら人を殺せる男よ。顔はイイけど、昔から好きになれないわ」
「ふむ…」
ストレートな表現だが、リュリュの言っている意味は、シ・アティウスにも理解できる。
アルカネットは得体が知れない部分があると、常に思っていた。
そつのない笑顔の下に潜んでいる、別の顔とでもいうのだろうか。そんなものを感じるのだ。
誰でも他人に隠している顔はある。だが、そういったものとは違う。
「いずれにせよ、空き部屋が見つからないな」
リュリュたちを追い出し、テーブルの上に乱雑に置かれたグラスやつまみの皿などを、盆の上に置いて片付ける。そして、部屋全体とベランダを照らすランプを消した。灯りはベッドサイドの小さなランプのみとなる。
上着を脱いでベッドに腰掛けると、もう片方のベッドには、もうベルトルドが横たわっている。
仰向けに横になっているベルトルドは、両手を頭の下に敷いて枕替りにして、じっと天井を見ていた。
「さきほどの殺意は、一体なんだったのです? 私の代わりにメルヴィンでも殺してくれましたか?」
「そんなことをしたら、リッキーに嫌われる」
「じゃあなんです」
薄暗い天井を睨むようにして、ベルトルドは「フンッ」と鼻息をつく。
「幼い頃、リッキーが過ごした奇岩の上の修道院、そこにいた孤児を殺してきた」
「え?」
何のことかと、一瞬アルカネットは目を見張る。
「お前にも視せただろう、リッキーがあの修道院を出るきっかけとなった事件を」
「ええ…」
孤児たちに追い立てられ、崖に追い詰められたキュッリッキは、孤児の一人に突き飛ばされて崖から落ちたのだ。
「幸いフェンリルのおかげで助かりましたが、あのまま助けがなければと思うと、ゾッとします」
「なんの因果か、この宿で働いていたんだ、あの孤児は」
「…のうのうと、生き延びていたのですか」
「ケシカランことにな」
キュッリッキの顔を暫く思い出せずにいたアルッティ。そして、詫びることなく逃げ出した。
「だから殺してやった」
何でもないことのように言うと、ベルトルドは起き上がって、シーツをめくって入り直した。
「以前から気になっていたが、アルカネットとじゃ、イヤなのか?」
物凄くシンプルに直球を投げつけられたリュリュは、垂れ目を眇めてシ・アティウスを睨みつける。
「イ・ヤ・よ! アタリマエじゃない!」
「そうなのか」
プイッと顔を背けると、リュリュはゲッソリと肩を落とす。
「アイツはね、微笑みながら女を犯し、笑いながら人を殺せる男よ。顔はイイけど、昔から好きになれないわ」
「ふむ…」
ストレートな表現だが、リュリュの言っている意味は、シ・アティウスにも理解できる。
アルカネットは得体が知れない部分があると、常に思っていた。
そつのない笑顔の下に潜んでいる、別の顔とでもいうのだろうか。そんなものを感じるのだ。
誰でも他人に隠している顔はある。だが、そういったものとは違う。
「いずれにせよ、空き部屋が見つからないな」
リュリュたちを追い出し、テーブルの上に乱雑に置かれたグラスやつまみの皿などを、盆の上に置いて片付ける。そして、部屋全体とベランダを照らすランプを消した。灯りはベッドサイドの小さなランプのみとなる。
上着を脱いでベッドに腰掛けると、もう片方のベッドには、もうベルトルドが横たわっている。
仰向けに横になっているベルトルドは、両手を頭の下に敷いて枕替りにして、じっと天井を見ていた。
「さきほどの殺意は、一体なんだったのです? 私の代わりにメルヴィンでも殺してくれましたか?」
「そんなことをしたら、リッキーに嫌われる」
「じゃあなんです」
薄暗い天井を睨むようにして、ベルトルドは「フンッ」と鼻息をつく。
「幼い頃、リッキーが過ごした奇岩の上の修道院、そこにいた孤児を殺してきた」
「え?」
何のことかと、一瞬アルカネットは目を見張る。
「お前にも視せただろう、リッキーがあの修道院を出るきっかけとなった事件を」
「ええ…」
孤児たちに追い立てられ、崖に追い詰められたキュッリッキは、孤児の一人に突き飛ばされて崖から落ちたのだ。
「幸いフェンリルのおかげで助かりましたが、あのまま助けがなければと思うと、ゾッとします」
「なんの因果か、この宿で働いていたんだ、あの孤児は」
「…のうのうと、生き延びていたのですか」
「ケシカランことにな」
キュッリッキの顔を暫く思い出せずにいたアルッティ。そして、詫びることなく逃げ出した。
「だから殺してやった」
何でもないことのように言うと、ベルトルドは起き上がって、シーツをめくって入り直した。
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