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美人コンテスト編
episode606
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「あっ」
ハッとして、メルヴィンは後ろに飛んでいったボールを目で追う。
「先に一点取られちゃいました……」
肩を落として残念そうに呟くと、ふんぞり返ったベルトルドが、ホールに轟くほどの笑い声を上げた。
「判ったか青二才! これが俺と貴様の決定的な差だ、リッキーへの愛の深さのな!」
「そ、そうなんですか…」
メルヴィンは心にグサッと刺さったような表情を、ドヤ顔のベルトルドに向けた。しかし、
(愛じゃなく、嫉妬の粘り強さじゃ…)
と、リュリュとシ・アティウスは胸中で呟く。
「ずぇったいに貴様になど点はやらん! 覚悟せいっ!!」
「メルヴィンどんまいだよ! まだ一点なんだからねっ! 頑張ってなの~!」
「ありがとうございますリッキー。頑張ります」
一生懸命応援してくれるキュッリッキに、メルヴィンは嬉しそうに微笑んだ。
速攻2人の世界が出来上がり、ベルトルドとアルカネットのこめかみに青筋が走る。
「ベルトルド様、こんな青二才に手加減など無用なのですよ? 悠長にラリーなどせず、とっとと沈めてしまいなさい」
「言われるまでもない、後が詰まっているからな」
キュッリッキがメルヴィンを応援するものだから、ベルトルドとアルカネットは本気で拗ねている。
ベルトルドはラケットを強く握ると、ボールを構えた。
「さあ、次いくぞ、次!」
しょんぼりというより、酷く疲れた顔のメルヴィンが、竹のベンチに座ってため息をついていた。
「お疲れ、メルヴィン」
「はは、負けちゃいました」
ルーファスから差し出された湯呑を受け取り、メルヴィンは中身をすすった。グリーンティーの爽やかな香りが、疲れた身体にほっこりと沁みる。
「キューリちゃんは?」
「ベルトルド様に奪われちゃいました」
「ありゃりゃ」
ルーファスは奥の方を見ると、アルカネット対ガエルの台の近くで、キュッリッキを膝に乗せてベルトルドは観戦している。キュッリッキは「相変わらずしょーがないなーもう」という表情を浮かべ、おとなしく膝に抱かれていた。
ベルトルドの嬉しそうな顔を見て、ルーファスは苦笑する。先ほどの気迫はすっかり鳴りを潜め、キュッリッキをベタベタ触れて上機嫌だ。
結局ベルトルド対メルヴィンの試合は、メルヴィンの全敗で終わった。
周りが呆気にとられるほど、ベルトルドの猛攻凄まじく、最後まで緩まぬフットワーク押せ押せで、メルヴィンのほうが根気負けしたのである。
「まさか、一点も取れないとはさすがに思いませんでした…」
「有言実行しちゃうベルトルド様が凄すぎたって感じだね~。まあ、ご褒美と言わんばかりにキューリちゃん持ってっちゃってるし」
「ええ…」
ガクッとメルヴィンは項垂れた。
「それにしても、ガエルも勝つのは難しそうだなー。アルカネットさん相手に一点も取れてないよ」
「当初の予想が大きくハズレましたね」
「ホントダヨー」
2人は揃って、情けないため息を長々と吐き出した。
ハッとして、メルヴィンは後ろに飛んでいったボールを目で追う。
「先に一点取られちゃいました……」
肩を落として残念そうに呟くと、ふんぞり返ったベルトルドが、ホールに轟くほどの笑い声を上げた。
「判ったか青二才! これが俺と貴様の決定的な差だ、リッキーへの愛の深さのな!」
「そ、そうなんですか…」
メルヴィンは心にグサッと刺さったような表情を、ドヤ顔のベルトルドに向けた。しかし、
(愛じゃなく、嫉妬の粘り強さじゃ…)
と、リュリュとシ・アティウスは胸中で呟く。
「ずぇったいに貴様になど点はやらん! 覚悟せいっ!!」
「メルヴィンどんまいだよ! まだ一点なんだからねっ! 頑張ってなの~!」
「ありがとうございますリッキー。頑張ります」
一生懸命応援してくれるキュッリッキに、メルヴィンは嬉しそうに微笑んだ。
速攻2人の世界が出来上がり、ベルトルドとアルカネットのこめかみに青筋が走る。
「ベルトルド様、こんな青二才に手加減など無用なのですよ? 悠長にラリーなどせず、とっとと沈めてしまいなさい」
「言われるまでもない、後が詰まっているからな」
キュッリッキがメルヴィンを応援するものだから、ベルトルドとアルカネットは本気で拗ねている。
ベルトルドはラケットを強く握ると、ボールを構えた。
「さあ、次いくぞ、次!」
しょんぼりというより、酷く疲れた顔のメルヴィンが、竹のベンチに座ってため息をついていた。
「お疲れ、メルヴィン」
「はは、負けちゃいました」
ルーファスから差し出された湯呑を受け取り、メルヴィンは中身をすすった。グリーンティーの爽やかな香りが、疲れた身体にほっこりと沁みる。
「キューリちゃんは?」
「ベルトルド様に奪われちゃいました」
「ありゃりゃ」
ルーファスは奥の方を見ると、アルカネット対ガエルの台の近くで、キュッリッキを膝に乗せてベルトルドは観戦している。キュッリッキは「相変わらずしょーがないなーもう」という表情を浮かべ、おとなしく膝に抱かれていた。
ベルトルドの嬉しそうな顔を見て、ルーファスは苦笑する。先ほどの気迫はすっかり鳴りを潜め、キュッリッキをベタベタ触れて上機嫌だ。
結局ベルトルド対メルヴィンの試合は、メルヴィンの全敗で終わった。
周りが呆気にとられるほど、ベルトルドの猛攻凄まじく、最後まで緩まぬフットワーク押せ押せで、メルヴィンのほうが根気負けしたのである。
「まさか、一点も取れないとはさすがに思いませんでした…」
「有言実行しちゃうベルトルド様が凄すぎたって感じだね~。まあ、ご褒美と言わんばかりにキューリちゃん持ってっちゃってるし」
「ええ…」
ガクッとメルヴィンは項垂れた。
「それにしても、ガエルも勝つのは難しそうだなー。アルカネットさん相手に一点も取れてないよ」
「当初の予想が大きくハズレましたね」
「ホントダヨー」
2人は揃って、情けないため息を長々と吐き出した。
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