片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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美人コンテスト編

episode597

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「やはり、リッキーさんはメルヴィンと一緒だったのですね」

 浴衣の裾を翻し、裸足でドタドタ木の廊下を走りながら、アルカネットの全身は怒りで燃えていた。

「無垢で幼気なリッキーさんのところへ無理矢理押しかけるなど、言語道断、万死に値します!」

 自分本位の想像で激怒しているが、概ね大正解である。

「恋人同士で普段イチャついているとしても、風呂場に押し入られれば怖がるのは当然です。今頃どれだけ恐怖に震え怯えているか、考えただけでも胸が張り裂けてしまう」

 非力なキュッリッキが、メルヴィンの力に抗うのは無理だ。床に押し倒され、全身を押さえつけられ、メルヴィンにいいように裸体を弄ばれているに違いない。

 メルヴィンが悲鳴をあげていた事実は、アルカネットの思考から完全除去されている。自らの思い描く哀れなキュッリッキを想像し、メルヴィンへの殺意を増幅させていた。

「リッキーさんの処女を守らねば!」

 いくらあの2人が恋人同士であっても、そんなことはアルカネットには関係ない。

 キュッリッキは自分だけのものであり、誰よりも深く愛している。メルヴィンに汚されるなど、考えただけで発狂しそうだ。

 キュッリッキがどの部屋を使っているかは知らないが、彼女の気配のする方へと進み、鳳凰の間に到着した。

 ノックもせずに荒々しくドアを開き、部屋へ踏み込んだ瞬間、アルカネットは我が目を疑った。

「あ! アルカネットさんいいところにきたの! あのねあのね、メルヴィンの股間にミミズが生えてるんだよ! 引っこ抜くの手伝って!!」

 ほっそりとした白い裸体で浴槽に立ち、湯の中に両手を沈めて何やら引っ張っている。

「リ……リッキー……さん!?」

 なにか、よく似た光景を以前見たような気がする。そう、アルカネットの心は呟く。

「リッキーそれはミミズじゃありませんから、引っ張らないでください!!」

 どうしていいか判らず、キュッリッキの行動を阻止するべく喚きたてるメルヴィン。そして、ミミズと信じて疑っていない必死のキュッリッキ。

 2人の様子を遠巻きに見て、アルカネットは目の前が暗くなりそうになり、慌てて頭を振った。

(お、落ち着くのです、落ち着くのですよ自分!)

 そう、以前ベルトルドの暴れん棒をミミズと勘違いして、必死に引っこ抜こうとしていた光景が脳裏に蘇る。

 その後、ヴィヒトリに押し付けて、男女の身体の仕組みなどについて講義をさせたはずだ。それなのに何故、また同じようなことをしているのだろうか。

 というより、2人が裸で一緒に露天風呂に浸かっていることこそ大問題だ。

「おいメルヴィン生きてるか!?」

「大丈夫か助けに来たぞ!」

 追いついてきたライオン傭兵団が部屋に乱入し、室内は一気に騒然となる。

「きゃあああみんなのエッチー!」

「エッチどころじゃねえよ! メルヴィンどうしたんだよっ」

「ザカリーのバカ! 見ないであっち向いててよ!!」

「なんでオレだけっ」

「メルヴィン白目むいてんぞ! ランドン早く」

「あんたもー何してんのよ!」

「キューリさんにタオルタオル」

 アルカネットはすっかり置いてけぼり状態になり、大騒ぎになる一同を呆然と見やる。

(えー……)

 とにかく、とアルカネットは深呼吸を一つして、

「そこをどきなさい!!」

 憤然とライオン傭兵団を押しのけベランダに出ると、

「さあリッキーさん、手を洗いましょう!!」

「ほえ」

 ファニーにタオルを巻かれていたキュッリッキは、アルカネットに羽交い締めにされ浴槽から取り出されてしまった。

「あーん、まだミミズ引っこ抜けてないのお~~」

「それはミミズじゃありません!」
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