片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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美人コンテスト編

episode596

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(なんだか、いつもよりも、ずっと気持ちがいいキスかも…)

 露天風呂に一緒に入り、辺はほんのりとした灯りのみで薄暗く、お互い裸というシチュエーションが、気持ちを盛り上げている。ムードは最高だ。

(もっともっと、こうしていたい)

 呼吸をするのも惜しむほど唇を貪り合いながら、メルヴィンの大きな手が、素肌の肩や背中を忙しなく触れていく。

 その度に、胸の奥がキュンキュンして、キュッリッキは積極的にメルヴィンの首に腕を絡めて、ぴったりと身体を密着させた。

(ん?)

 何やら脚に硬いものが触れて、なんだろうと気になって唇を離す。

「リッキー?」

 急にキスすることを止めたキュッリッキに、メルヴィンは小さく首をかしげる。

「なんか、あたったの」

 メルヴィンから身体を離して、そして湯の中を覗き込んだ。

「あっ、あの、リッキー」

 急に慌てるメルヴィンをチラッと見て、手を伸ばしてそれを思いっきり掴んだ。

「はっ!」

 キュッリッキは大きく目を見張り、

「メルヴィンの股間にでっかなミミズが生えてる!!」

 そう、大きな声で叫んだ。



 朝顔の間では、念話ネットワークで生中継を見ていた面々が、盛大にズッコケていた。

 テーブルに突っ伏していたギャリーは、ゆっくり顔を上げると、

「どうしてそこでミミズになる!!!」

 理不尽を吠えるように叫んで、ドンッと拳でテーブルを叩く。なにかよく判らない怒りの感情に、身体がむずむずと痒くなった。

「確か以前も、ベルトルド様のアレをナマコとか言って、ガン泣きしてたことあったよねえ~」

 ルーファスは天井に目を向けながら、懐かしそうに苦笑う。どうしてナマコに見えたのかが、いまだに不思議だ。そこは大きなフランクフルトくらいでよくないかと思ってしまう。

「もうあの子ったら、まったく…」

 ファニーは呆れ顔で、ゆるゆると首を振った。ハドリーも額を抑えて、ため息を連打している。

 濃密なキスで高め合い、もう次のステップに移ろうとしていたまさにその時、キュッリッキの天然が炸裂したのである。

「メルヴィン……気の毒な」

 妖艶な顔を歪め、タルコットは腕を組む。あれではムードもぶち壊し、メルヴィンもさぞ吃驚していることだろう。

 とそこへ、

 ――落ち着いてリッキーーーーーーーーーーーっ!

 宿中に轟くほどのメルヴィンの絶叫が聴こえてきて、

「なんだどうした!?」

 みんなは弾かれたように、一斉に立ち上がる。

 更に、アルカネットを閉じ込めていた箱が、煙と破片を撒き散らしながら、木っ端微塵に吹き飛んだ。

 ぎょっと一同が煙の方へ顔を向けると、浴衣を乱し、冷酷なまでの恐ろしい表情を浮かべたアルカネットが、ゼーハーと荒々しい息を吐き出しがら姿を現した。よほど魔法を使ったのだろう、呼吸の乱れが激しい。

「この私を、あの程度の箱に、閉じ込めようとは、ゼェ……なめられたものですね」

 顔が美しいだけに、壮絶を極めた表情だ。

(――Overランクの魔法使いハンパねーっす!!)

 ライオン傭兵団は失神寸前の意識の中で、命乞いの祈りを捧げた。あの顔を見ただけで、心臓が止まりそうである。

 ――お願いですから止めてくださいリッキ~~~~~!

 二度目のメルヴィンの悲鳴が宿中にこだました。かなり切羽詰りまくる絶叫だ。

「とっ、とりあえず、メルヴィンを助け?に行くぞ!」

 踵を返したギャリーの横をヒュッと脱兎の如く、猛然とした勢いでアルカネットが駆け抜けていった。

 決してメルヴィンを助けに行ったわけではない。それに気づいてギャリーは叫ぶ。

「オイやっべーぞ! アルカネットの野郎が」

 これはマズイ、と皆は慌ててアルカネットを追いかけた。
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