658 / 882
美人コンテスト編
episode595
しおりを挟む
「この酒は、なかなかイケるなあ」
「フルーティーな香りとクセのない甘さで、とても飲みやすいですね」
「スーッと身体に沁みていくのもいい」
ベルトルドとアルカネットは、夕食の席で振舞われた米で作ったという酒が大いに気に入り、食事もそこそこに飲み明かし中だ。
「そういえば、リッキーを見かけないな。もう寝てしまったのかな?」
「お風呂に入りたいと言っていましたね。あまり食事は摂っていないようでしたが、口に合わなかったわけではなく、すぐに満腹感を得てしまったようです」
「ふむう…。リッキーの少食は、幼い頃の悪影響からきている感じだからな…」
「そうですね。貧しい幼少期を過ごされていたようですから、少量でも身体が慣れてしまっているのでしょう」
「うむ。――美味いものが目の前に並んでいても、胃が受け付けず、食べられないというのは不憫だ」
グラスの中の酒を揺らし、ベルトルドは眉をしかめた。
「病気ではないので騒ぎ立てるほどのことではありませんが、今後のためにも、ヴィヒトリ先生に相談しておきましょうか」
「うん、そうしてくれ」
「判りました」
「ところでな、メルヴィンも見当たらんぞ」
「そういえば、さっきからいませんね」
すると、朝顔の間に、ハッとした空気が漂う。
ベルトルドはテーブルにグラスを置くと、顎を引いて眉を寄せた。
「考えたくはないが、まさか、リッキーと一緒にいるんじゃないだろうな?」
アルカネットの顔から温和な表情が消え、冷たい険しさがジワジワと広がっていく。
「この私を差し置いて、不埒な真似をしているのではないでしょうね」
――気づかれた!!
ルーファスとマリオンのサイ《超能力》による、ライオン傭兵団の間だけの専用念話ネットワーク――今回はゲストでファニー、ハドリー、アリサも加わっている――内では、メルヴィンとキュッリッキのイチャイチャっぷりを、透視で生中継している。
(まだキスしかしてないんだよ~、ここで邪魔されたら、せっかくの2人の初夜が拝めないじゃない)
ルーファスが酷く残念そうに言うと、無言の頷きが念話内でかわされる。
(いや、オレ頼んでねーし!?)
ザカリーの反論は却下された。
(キューリちゃんがオトナになるこのメデタイ夜なんだから、断固オッサンたちを阻止しないとね!)
(それにぃ、耐えて堪えて我慢してきたメルヴィンにとってもぉ、やあ~っとキューリちゃんと結ばれる大事な夜なのよぉ~。成就させてあげてこそ仲間ってもんよお!)
オーッ!と念話内で気合が漲り出す。
「リッキーと一緒に温泉に入っているんじゃないだろうな…」
「混浴風呂がいくつかありましたね」
「俺のリッキーと…………ケシカラン!!」
「私のリッキーさんですよ! ブチ殺して差し上げます」
嫉妬パワーで、2人は憤然と立ち上がる。すると、
「ベルぅ~、今夜はアタシたちも、しっぽり、グッちょり、ねっとり、熱ぅい夜を過ごしましょう」
しなを作ったリュリュが、ガバッとベルトルドを羽交い締めにする。
「うおおおおっ!? やめんか馬鹿者!! 離せこらっ!」
「死んでも離さないっ!」
「私の勝ちですね。せいぜいリュリュと楽しみなさい」
「こらアルカネットずるいぞっ!」
泣きべそ顔で喚くベルトルドに、輝くばかりの笑顔を向け、アルカネットは身を翻した。しかし、
「綺麗なおにーさん、ちょいとあたしたちの芸の手伝いをしてくださいな」
5人の若い芸者たちが、アルカネットを取り囲み、芸を披露していた座敷の奥へと引っ張ってく。
「ちょ、ちょっと何事ですか!? 私は急いでいるのです!」
「ほらほら、こっちですよ」
抵抗することもできず、アルカネットはあっという間に大きな箱の中に詰め込まれてしまった。
「この木箱は一体なんなんですか! 魔法が効かないですよっ!? 開けなさい!!」
ドン、バシッ、ゲシッと箱を叩く音がするが、アルカネットはしっかり閉じ込められたようだ。
「離せリュー!!」
「さあ、藤の間へ行くわヨ!」
ベルトルドのほうは、リュリュに羽交い締めにされたまま連れ出されてしまった。
「これで、2人の初夜は守られた!」
オッシャー! と、皆思い思い勝利のポーズを決める。
あらかじめこの計画をリュリュとシグネに持ちかけ、2人が邪魔してこないように協力を取り付けていたのだ。
ちなみにアルカネットの入れられた箱は、スキル〈才能〉による力が及ばない特殊建材で作られた、特別仕様の箱である。
「さあて、2人はどうなっているかな~」
透視が再開され、皆の脳裏に2人の様子が浮かぶ。
「え!?」
「フルーティーな香りとクセのない甘さで、とても飲みやすいですね」
「スーッと身体に沁みていくのもいい」
ベルトルドとアルカネットは、夕食の席で振舞われた米で作ったという酒が大いに気に入り、食事もそこそこに飲み明かし中だ。
「そういえば、リッキーを見かけないな。もう寝てしまったのかな?」
「お風呂に入りたいと言っていましたね。あまり食事は摂っていないようでしたが、口に合わなかったわけではなく、すぐに満腹感を得てしまったようです」
「ふむう…。リッキーの少食は、幼い頃の悪影響からきている感じだからな…」
「そうですね。貧しい幼少期を過ごされていたようですから、少量でも身体が慣れてしまっているのでしょう」
「うむ。――美味いものが目の前に並んでいても、胃が受け付けず、食べられないというのは不憫だ」
グラスの中の酒を揺らし、ベルトルドは眉をしかめた。
「病気ではないので騒ぎ立てるほどのことではありませんが、今後のためにも、ヴィヒトリ先生に相談しておきましょうか」
「うん、そうしてくれ」
「判りました」
「ところでな、メルヴィンも見当たらんぞ」
「そういえば、さっきからいませんね」
すると、朝顔の間に、ハッとした空気が漂う。
ベルトルドはテーブルにグラスを置くと、顎を引いて眉を寄せた。
「考えたくはないが、まさか、リッキーと一緒にいるんじゃないだろうな?」
アルカネットの顔から温和な表情が消え、冷たい険しさがジワジワと広がっていく。
「この私を差し置いて、不埒な真似をしているのではないでしょうね」
――気づかれた!!
ルーファスとマリオンのサイ《超能力》による、ライオン傭兵団の間だけの専用念話ネットワーク――今回はゲストでファニー、ハドリー、アリサも加わっている――内では、メルヴィンとキュッリッキのイチャイチャっぷりを、透視で生中継している。
(まだキスしかしてないんだよ~、ここで邪魔されたら、せっかくの2人の初夜が拝めないじゃない)
ルーファスが酷く残念そうに言うと、無言の頷きが念話内でかわされる。
(いや、オレ頼んでねーし!?)
ザカリーの反論は却下された。
(キューリちゃんがオトナになるこのメデタイ夜なんだから、断固オッサンたちを阻止しないとね!)
(それにぃ、耐えて堪えて我慢してきたメルヴィンにとってもぉ、やあ~っとキューリちゃんと結ばれる大事な夜なのよぉ~。成就させてあげてこそ仲間ってもんよお!)
オーッ!と念話内で気合が漲り出す。
「リッキーと一緒に温泉に入っているんじゃないだろうな…」
「混浴風呂がいくつかありましたね」
「俺のリッキーと…………ケシカラン!!」
「私のリッキーさんですよ! ブチ殺して差し上げます」
嫉妬パワーで、2人は憤然と立ち上がる。すると、
「ベルぅ~、今夜はアタシたちも、しっぽり、グッちょり、ねっとり、熱ぅい夜を過ごしましょう」
しなを作ったリュリュが、ガバッとベルトルドを羽交い締めにする。
「うおおおおっ!? やめんか馬鹿者!! 離せこらっ!」
「死んでも離さないっ!」
「私の勝ちですね。せいぜいリュリュと楽しみなさい」
「こらアルカネットずるいぞっ!」
泣きべそ顔で喚くベルトルドに、輝くばかりの笑顔を向け、アルカネットは身を翻した。しかし、
「綺麗なおにーさん、ちょいとあたしたちの芸の手伝いをしてくださいな」
5人の若い芸者たちが、アルカネットを取り囲み、芸を披露していた座敷の奥へと引っ張ってく。
「ちょ、ちょっと何事ですか!? 私は急いでいるのです!」
「ほらほら、こっちですよ」
抵抗することもできず、アルカネットはあっという間に大きな箱の中に詰め込まれてしまった。
「この木箱は一体なんなんですか! 魔法が効かないですよっ!? 開けなさい!!」
ドン、バシッ、ゲシッと箱を叩く音がするが、アルカネットはしっかり閉じ込められたようだ。
「離せリュー!!」
「さあ、藤の間へ行くわヨ!」
ベルトルドのほうは、リュリュに羽交い締めにされたまま連れ出されてしまった。
「これで、2人の初夜は守られた!」
オッシャー! と、皆思い思い勝利のポーズを決める。
あらかじめこの計画をリュリュとシグネに持ちかけ、2人が邪魔してこないように協力を取り付けていたのだ。
ちなみにアルカネットの入れられた箱は、スキル〈才能〉による力が及ばない特殊建材で作られた、特別仕様の箱である。
「さあて、2人はどうなっているかな~」
透視が再開され、皆の脳裏に2人の様子が浮かぶ。
「え!?」
0
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
クラスで一人だけ男子な僕のズボンが盗まれたので仕方無くチ○ポ丸出しで居たら何故か女子がたくさん集まって来た
pelonsan
恋愛
ここは私立嵐爛学校(しりつらんらんがっこう)、略して乱交、もとい嵐校(らんこう) ━━。
僕の名前は 竿乃 玉之介(さおの たまのすけ)。
昨日この嵐校に転校してきた至極普通の二年生。
去年まで女子校だったらしくクラスメイトが女子ばかりで不安だったんだけど、皆優しく迎えてくれて ほっとしていた矢先の翌日……
※表紙画像は自由使用可能なAI画像生成サイトで制作したものを加工しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる