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アン=マリー女学院からの依頼編
episode555
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ベルトルドとは正反対に、口を閉じて黙っていれば、アルカネットは優しそうな好い人、と周りには見られている。表情が淡々としていても、端整で穏やかな顔をしているので他人受けがいい。しかしその仮面の下に、サドッ気溢れる別の顔が潜んでいることは、身内以外は知らない。
魔法部隊(ビリエル)の軍服で長身を包み、片方の手を腰に当て、じっと前方を見据えて立っている。時折風がマントをそっと凪いでいくが、微動だにしなかった。
その後ろに控えるように、なよっと腰をくねらせて立つリュリュは、前方の空間に歪みを感じて目を眇めた。
「来たわねん」
アルカネットも少し顎を上げる。
「着いたぞ!」
「いやあ、ホントらくでいいっすね~」
「ありがとうございます」
騒々しい声が突如現れた。
「ご機嫌よう、ベルトルド様」
「ん?」
聴き慣れた声に名前を呼ばれ、顔を上げてベルトルドはひきつった。
(何故、アルカネットがこんなところにいる!?)
到着したのはトゥルーク王国首都、ヴァルテルの王宮前。
アルカネットの後ろに立つリュリュを見つけ、ベルトルドは瞬時に理解し、背中でダラダラ汗をかいた。
「無事、王女を連れてきれくれたようで、ようございました。先程から宰相や王宮の方々が、大変心配なさって、お待ちおいでです」
業務連絡を告げるように淡々とアルカネットが言うと、背後からざわざわと人々の声が近づいてきた。
「イリニア殿下!」
ずっとメルヴィンに寄り添っていたイリニア王女は、名前を呼ばれてハッと顔を向けた。
「叔父様!」
イリニア王女は叔父、ニコデムス宰相に駆け寄り抱きついた。
「おお、心配しましたぞ殿下。ご無事のご帰還、心よりお慶び申し上げます」
「心配をかけて申し訳ありません。わたくしが学院へ留学したいと我が儘を言わなければ、こんなことには」
「勉学に熱心な殿下ですから。しかし本当に、ご無事で良かった」
「ありがとうございます、叔父様」
感動の再会劇を目の端に捉えつつ、ベルトルドはキュッリッキをしっかり抱きしめたまま、アルカネットを引き攣りながら睨みつけていた。
「ハーメンリンナで会議中のあなたが、何故こんなところにいらっしゃるのでしょう?」
「……ライオンの連中の、手伝い?」
「ほほう、あなたがそんなにあの連中を可愛がっているとは知りませんでした。素晴らし親心ですが、会議をすっぽかしてすることではありませんよ?」
「…………」
「おまけに、リッキーさんをそんなに泣かせて、どういうおつもりですか??」
「俺が泣かせたんじゃないぞ! メルヴィンが悪い!!」
「えっ」
「メルヴィン悪くないんだよ! ヘンなこと言わないでベルトルドさんのバカ!!」
バシッと顔面を叩かれて、ベルトルドは鼻を押さえた。あちこちから「ぷっ」と吹き出す声がする。
「あのイケスカナイ女が全部悪いんだから! アタシのメルヴィンにちょっかい出して、ああいうの、泥棒猫って言うんだよ。マリオンが言ってたもん」
イリニア王女をビシッと指差して、ベソ顔のキュッリッキが言うと、
「殿下に向かってなんという口の利き方をする! 無礼な小娘が!」
速攻ニコデムス宰相が大声で怒鳴った。すると、
「誰に向かって怒鳴るか無礼者!!」
と、ベルトルドとアルカネットが異口同音に怒鳴り返した。これにニコデムス宰相は驚き、目を瞬かせる。
魔法部隊(ビリエル)の軍服で長身を包み、片方の手を腰に当て、じっと前方を見据えて立っている。時折風がマントをそっと凪いでいくが、微動だにしなかった。
その後ろに控えるように、なよっと腰をくねらせて立つリュリュは、前方の空間に歪みを感じて目を眇めた。
「来たわねん」
アルカネットも少し顎を上げる。
「着いたぞ!」
「いやあ、ホントらくでいいっすね~」
「ありがとうございます」
騒々しい声が突如現れた。
「ご機嫌よう、ベルトルド様」
「ん?」
聴き慣れた声に名前を呼ばれ、顔を上げてベルトルドはひきつった。
(何故、アルカネットがこんなところにいる!?)
到着したのはトゥルーク王国首都、ヴァルテルの王宮前。
アルカネットの後ろに立つリュリュを見つけ、ベルトルドは瞬時に理解し、背中でダラダラ汗をかいた。
「無事、王女を連れてきれくれたようで、ようございました。先程から宰相や王宮の方々が、大変心配なさって、お待ちおいでです」
業務連絡を告げるように淡々とアルカネットが言うと、背後からざわざわと人々の声が近づいてきた。
「イリニア殿下!」
ずっとメルヴィンに寄り添っていたイリニア王女は、名前を呼ばれてハッと顔を向けた。
「叔父様!」
イリニア王女は叔父、ニコデムス宰相に駆け寄り抱きついた。
「おお、心配しましたぞ殿下。ご無事のご帰還、心よりお慶び申し上げます」
「心配をかけて申し訳ありません。わたくしが学院へ留学したいと我が儘を言わなければ、こんなことには」
「勉学に熱心な殿下ですから。しかし本当に、ご無事で良かった」
「ありがとうございます、叔父様」
感動の再会劇を目の端に捉えつつ、ベルトルドはキュッリッキをしっかり抱きしめたまま、アルカネットを引き攣りながら睨みつけていた。
「ハーメンリンナで会議中のあなたが、何故こんなところにいらっしゃるのでしょう?」
「……ライオンの連中の、手伝い?」
「ほほう、あなたがそんなにあの連中を可愛がっているとは知りませんでした。素晴らし親心ですが、会議をすっぽかしてすることではありませんよ?」
「…………」
「おまけに、リッキーさんをそんなに泣かせて、どういうおつもりですか??」
「俺が泣かせたんじゃないぞ! メルヴィンが悪い!!」
「えっ」
「メルヴィン悪くないんだよ! ヘンなこと言わないでベルトルドさんのバカ!!」
バシッと顔面を叩かれて、ベルトルドは鼻を押さえた。あちこちから「ぷっ」と吹き出す声がする。
「あのイケスカナイ女が全部悪いんだから! アタシのメルヴィンにちょっかい出して、ああいうの、泥棒猫って言うんだよ。マリオンが言ってたもん」
イリニア王女をビシッと指差して、ベソ顔のキュッリッキが言うと、
「殿下に向かってなんという口の利き方をする! 無礼な小娘が!」
速攻ニコデムス宰相が大声で怒鳴った。すると、
「誰に向かって怒鳴るか無礼者!!」
と、ベルトルドとアルカネットが異口同音に怒鳴り返した。これにニコデムス宰相は驚き、目を瞬かせる。
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