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アン=マリー女学院からの依頼編
episode541
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シエンの街を出て早4日、ノーテリエ山地の広さに辟易しながらも、イリニア王女の護衛御一行は元気に旅を続けていた。
「そういえば王女様、何か召喚って出来ないんです?」
やや色づき始めた緑豊かな山の中を歩きながら、ふと思いついたようにルーファスが言った。
「何か、でございますか?」
「うん。大きな鳥とか大きな狼とか」
考え込むように小さく首をかしげ、ゆるゆると首を横に振った。
「そんなことは出来ませんわ。どうしてですの?」
逆に不可解そうに聞かれて、ルーファスはきょとんと目をぱちくりさせる。
「いや、召喚スキル〈才能〉をお持ちだから、色んなものを、アルケラ? ってところから召喚できるのかなーって」
自分たちのよく知る召喚スキル〈才能〉を持つ少女は、あらゆるものを召喚して見せてくれた。
「確かにアルケラと思しきところを視ることは出来るのですが……これまで何かを召喚したことはありませんの。――そういえば、先月のモナルダ大陸での戦争で、ハワドウレ皇国の副宰相様の中継映像で、この世のものとは思えないものを呼び出していた女の子が映っていましたわね」
記憶を辿るように、僅かに目を眇めながらイリニア王女は頷いた。
「わたくし、召喚スキル〈才能〉を持つ者が、あんな化物を呼び出すことが出来るなんて初めて知りましたのよ」
「ほほお……、そうなんだあ」
「スキル〈才能〉のレベルに応じて、出来る人と出来ない人がいるんですかねえ?」
興味がわいたようにシビルが呟く。
「それならば、わたくし落ちこぼれなのですね…」
ガッカリしたように言うイリニア王女に、シビルは慌てて手を振った。
「いえいえ、そういう意味じゃありませんって」
「シビルって時々キツイよなあ」
「なっ、違いますって!」
ツッコむルーファスに、シビルはますます慌てて抗議する。その様子にイリニア王女はクスクスと笑う。
「皆様、召喚士にお詳しいのですね」
本来召喚スキル〈才能〉を持つ者は、スキル〈才能〉判定を受ける幼い頃に、国によって召し上げられる。そのため一般の目に触れることはほぼなくなるので、召喚スキル〈才能〉を持つ者と知己を得ることは難しい。
「オレたちの仲間に、召喚士がいるのよ。王女様と同い年の女の子なんだけどね」
「え? 召喚士が傭兵をしているのですか?」
イリニア王女はびっくりしてルーファスを振り返った。
「驚くでしょ。でもホントなんだよね。フリーの傭兵をしていたところを、ウチのボスがスカウトしてきたんだ」
「まあ…」
召喚士が傭兵をしている、そんなことは前代未聞だとイリニア王女は唸った。生国なりに大切に保護され、危険などとは無縁の生活を送るだろう召喚士が、どうして傭兵をしているのだろうか。
「その方の生まれた国は、何故そんな危険な真似をさせるのでしょうか。可哀想ですわ」
ルーファスをはじめ、ライオン傭兵団の皆は、キュッリッキからの告白でそれらの経緯も全て知っている。アジトに帰ってきた翌日、一生懸命話してくれた辛い告白を、皆で聞いたのだ。
「ホント、酷いよね」
苦笑にも似た表情でルーファスは言ったが、その表情は複雑な色も含んでいた。
「そういえば王女様、何か召喚って出来ないんです?」
やや色づき始めた緑豊かな山の中を歩きながら、ふと思いついたようにルーファスが言った。
「何か、でございますか?」
「うん。大きな鳥とか大きな狼とか」
考え込むように小さく首をかしげ、ゆるゆると首を横に振った。
「そんなことは出来ませんわ。どうしてですの?」
逆に不可解そうに聞かれて、ルーファスはきょとんと目をぱちくりさせる。
「いや、召喚スキル〈才能〉をお持ちだから、色んなものを、アルケラ? ってところから召喚できるのかなーって」
自分たちのよく知る召喚スキル〈才能〉を持つ少女は、あらゆるものを召喚して見せてくれた。
「確かにアルケラと思しきところを視ることは出来るのですが……これまで何かを召喚したことはありませんの。――そういえば、先月のモナルダ大陸での戦争で、ハワドウレ皇国の副宰相様の中継映像で、この世のものとは思えないものを呼び出していた女の子が映っていましたわね」
記憶を辿るように、僅かに目を眇めながらイリニア王女は頷いた。
「わたくし、召喚スキル〈才能〉を持つ者が、あんな化物を呼び出すことが出来るなんて初めて知りましたのよ」
「ほほお……、そうなんだあ」
「スキル〈才能〉のレベルに応じて、出来る人と出来ない人がいるんですかねえ?」
興味がわいたようにシビルが呟く。
「それならば、わたくし落ちこぼれなのですね…」
ガッカリしたように言うイリニア王女に、シビルは慌てて手を振った。
「いえいえ、そういう意味じゃありませんって」
「シビルって時々キツイよなあ」
「なっ、違いますって!」
ツッコむルーファスに、シビルはますます慌てて抗議する。その様子にイリニア王女はクスクスと笑う。
「皆様、召喚士にお詳しいのですね」
本来召喚スキル〈才能〉を持つ者は、スキル〈才能〉判定を受ける幼い頃に、国によって召し上げられる。そのため一般の目に触れることはほぼなくなるので、召喚スキル〈才能〉を持つ者と知己を得ることは難しい。
「オレたちの仲間に、召喚士がいるのよ。王女様と同い年の女の子なんだけどね」
「え? 召喚士が傭兵をしているのですか?」
イリニア王女はびっくりしてルーファスを振り返った。
「驚くでしょ。でもホントなんだよね。フリーの傭兵をしていたところを、ウチのボスがスカウトしてきたんだ」
「まあ…」
召喚士が傭兵をしている、そんなことは前代未聞だとイリニア王女は唸った。生国なりに大切に保護され、危険などとは無縁の生活を送るだろう召喚士が、どうして傭兵をしているのだろうか。
「その方の生まれた国は、何故そんな危険な真似をさせるのでしょうか。可哀想ですわ」
ルーファスをはじめ、ライオン傭兵団の皆は、キュッリッキからの告白でそれらの経緯も全て知っている。アジトに帰ってきた翌日、一生懸命話してくれた辛い告白を、皆で聞いたのだ。
「ホント、酷いよね」
苦笑にも似た表情でルーファスは言ったが、その表情は複雑な色も含んでいた。
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