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アン=マリー女学院からの依頼編
episode530
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「どーしてアタシは一緒に行っちゃいけないのよ!!」
予想通りの反応に、皆沈黙で答えた。
ガエルと共に戻ってきたキュッリッキに、護衛仕事の件を話すと、速攻噴火した。
ベルトルドと皇王から内々に釘を刺されていることは伏せている。知られればハーメンリンナに怒鳴り込みに行きかねない剣幕だ。
「アタシもその王女とやらの護衛任務行くのっ!!」
持っていたクッションで、足元に座っているギャリーの頭をバフバフ叩きながら、キュッリッキは大癇癪を炸裂させる。小さな火山からマグマが噴き出さないよう、ギャリーはおとなしく叩かれていた。
「だいたい、アタシが召喚したものに乗せてったら、一日もかからず仕事終わるじゃない! 乗っけてる間アタシの護衛はメルヴィンがすればすむことでしょ」
両手を腰に当ててカーティスをジロリと睨む。そんなことも判らないの!?と、不思議な光彩に彩られた黄緑色の瞳が物語っている。
「いえ……この仕事、ただの護衛で終わらないような感じなんですよ。危険な臭いがものすご~くするというかなんというか」
「そんなの仕事に危険とイレギュラーはつきものじゃない」
「それはそうですが。でもキューリさんは召喚士です。召喚士を守りながら護衛任務は無駄に人数を増やすだけですしぃ…」
「アタシのお守りはフェンリルとフローズヴィトニルがいるもん!」
「不測の事態もありますし」
「そしたらメルヴィンに守ってもらうもん!」
「護衛に行ってる傭兵を護衛してたら、護衛任務が矛盾だろ……」
「ギャリーはうっさい!」
「すンません」
「とにかくアタシも行くったら行くの!!」
「リッキー、聞き分けて留守番しててほしいな」
これ以上噴火させないように優しく言うが、キュッリッキはふいに悲しそうな表情(かお)でメルヴィンを見上げる。
「なんで? メルヴィンはアタシと一緒にいたくないの?」
――そうくるか。
皆一斉に引きつる。
「いえ、一日でもリッキーと離れてるのは嫌です。でも、これは仕事だから」
キュッリッキはふくれっ面でメルヴィンを睨みつけて、ぷいっと横を向いた。
こんなところは、どうしようもなくまだ子供だ。そんな拗ねるキュッリッキに、メルヴィンは苦笑する。
メルヴィン自身も離れ離れになっているのは嫌だった。しかし、依頼内容が護衛任務のため、危険な場面に遭えば、最優先で守るのは依頼の護衛主だ。それを考えると、今回内容がはっきりしないため、ますますキュッリッキを連れて行くわけにはいかない。
メルヴィンがこの仕事へ行かないということもできるが、そんなことではこの先仕事にならなくなる。
どうキュッリッキを説得するか、各々思案していると。
「夫の帰りをじっと耐えて待つのも、妻のだいじな役目なんですよ」
そこへ飲み物と軽食を運んできたキリ夫人が、にっこりとキュッリッキに笑いかけた。
「キューリちゃんは、いずれメルヴィンさんのお嫁さんになるんでしょう? だったら、今のうちに慣れておかないとね」
「お、お嫁さん………!」
「そうそう。これも立派な花嫁修業よ」
途端、キュッリッキは真っ赤になって、照れなが手にしていたクッションで遠慮がちにギャリーの頭をぽふっぽふっと叩く。急にソフトタッチになって、ギャリーは疲れたように薄く笑った。
「花嫁修業……、すっごくいい響き……きゃあっ」
キュッリッキはクッションを放り出して顔を両手で覆うと、嬉しそうに身体をくねらせた。
――う、ウマイ!!
にこにこ微笑むキリ夫人を、皆尊敬の眼差しで見つめた。
予想通りの反応に、皆沈黙で答えた。
ガエルと共に戻ってきたキュッリッキに、護衛仕事の件を話すと、速攻噴火した。
ベルトルドと皇王から内々に釘を刺されていることは伏せている。知られればハーメンリンナに怒鳴り込みに行きかねない剣幕だ。
「アタシもその王女とやらの護衛任務行くのっ!!」
持っていたクッションで、足元に座っているギャリーの頭をバフバフ叩きながら、キュッリッキは大癇癪を炸裂させる。小さな火山からマグマが噴き出さないよう、ギャリーはおとなしく叩かれていた。
「だいたい、アタシが召喚したものに乗せてったら、一日もかからず仕事終わるじゃない! 乗っけてる間アタシの護衛はメルヴィンがすればすむことでしょ」
両手を腰に当ててカーティスをジロリと睨む。そんなことも判らないの!?と、不思議な光彩に彩られた黄緑色の瞳が物語っている。
「いえ……この仕事、ただの護衛で終わらないような感じなんですよ。危険な臭いがものすご~くするというかなんというか」
「そんなの仕事に危険とイレギュラーはつきものじゃない」
「それはそうですが。でもキューリさんは召喚士です。召喚士を守りながら護衛任務は無駄に人数を増やすだけですしぃ…」
「アタシのお守りはフェンリルとフローズヴィトニルがいるもん!」
「不測の事態もありますし」
「そしたらメルヴィンに守ってもらうもん!」
「護衛に行ってる傭兵を護衛してたら、護衛任務が矛盾だろ……」
「ギャリーはうっさい!」
「すンません」
「とにかくアタシも行くったら行くの!!」
「リッキー、聞き分けて留守番しててほしいな」
これ以上噴火させないように優しく言うが、キュッリッキはふいに悲しそうな表情(かお)でメルヴィンを見上げる。
「なんで? メルヴィンはアタシと一緒にいたくないの?」
――そうくるか。
皆一斉に引きつる。
「いえ、一日でもリッキーと離れてるのは嫌です。でも、これは仕事だから」
キュッリッキはふくれっ面でメルヴィンを睨みつけて、ぷいっと横を向いた。
こんなところは、どうしようもなくまだ子供だ。そんな拗ねるキュッリッキに、メルヴィンは苦笑する。
メルヴィン自身も離れ離れになっているのは嫌だった。しかし、依頼内容が護衛任務のため、危険な場面に遭えば、最優先で守るのは依頼の護衛主だ。それを考えると、今回内容がはっきりしないため、ますますキュッリッキを連れて行くわけにはいかない。
メルヴィンがこの仕事へ行かないということもできるが、そんなことではこの先仕事にならなくなる。
どうキュッリッキを説得するか、各々思案していると。
「夫の帰りをじっと耐えて待つのも、妻のだいじな役目なんですよ」
そこへ飲み物と軽食を運んできたキリ夫人が、にっこりとキュッリッキに笑いかけた。
「キューリちゃんは、いずれメルヴィンさんのお嫁さんになるんでしょう? だったら、今のうちに慣れておかないとね」
「お、お嫁さん………!」
「そうそう。これも立派な花嫁修業よ」
途端、キュッリッキは真っ赤になって、照れなが手にしていたクッションで遠慮がちにギャリーの頭をぽふっぽふっと叩く。急にソフトタッチになって、ギャリーは疲れたように薄く笑った。
「花嫁修業……、すっごくいい響き……きゃあっ」
キュッリッキはクッションを放り出して顔を両手で覆うと、嬉しそうに身体をくねらせた。
――う、ウマイ!!
にこにこ微笑むキリ夫人を、皆尊敬の眼差しで見つめた。
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