片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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番外編・2

コッコラ王国の悲劇・43

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 空はとても澄んでいて、青く明るい。

 ジーネット王女は寝台のサイドテーブルの上に置かれ、た宝石箱の蓋を開けた。そこには小さなガラス瓶が収められていて、王女はそっとガラス瓶を取り出す。

 コルクの栓を抜いて、中身の液体をワイングラスの中に注いた。

 乳母も侍女たちも下がらせていて、寝室には自分ひとりしかいない。

 ワイングラスを両手で持ち、暫くグラスの中身を見つめていた。

 初めての恋を、異国人にした。

 一度も話しかけたこともないし、話しかけられたこともない。

 踊ったこともないし、遠くからひっそりと見つめているだけだった。

 それでもジーネット王女は幸せだった。いつかは勇気を出して、1曲だけでも踊ってもらえたら良いと、控えめな想いを心の中で育んでいた。

 自分のしでかした愚行で、ベルトルドにも大迷惑をかけているに違いない。

 ジーネット王女は、ひっそりとため息をついた。

「このような方法でしか、責任を取る術を知らないのです」

 ジーネット王女は切なげに呟くと、

「愛しております、ベルトルド様」

 そう恥ずかしそうに唇を僅かに震わせ言うと、ワイングラスの中身を一気に飲み干した。



 大急ぎで後を追ってきたブルーベル将軍と、合流したベルトルドとアルカネットは、ブルーベル将軍率いる大隊と共に、首都エルマスに乗り込んだ。

 抵抗してくるコッコラ王国民を、容赦なく排除して王宮へ乗り込む。

 調査のため散った部下たちから、次々と残念な報告を受けて、ブルーベル将軍はため息しかつけなかった。

「これで、真相は闇の中になってしまいましたねえ…」

 首謀者である国王は、玉座で自害し果てていたという。そして王太子は戦場にてベルトルドに倒され、王女もまた後宮で自害して亡くなり、後宮に仕える女性たちも全て自害していた。



 赤を基調とした室内の窓は全て開け放たれ、そよ風とともにバラのかぐわしい香りが漂ってきていた。

 豪奢な寝台の上に横たわるジーネット王女の亡骸を見おろしながら、ベルトルドは痛ましそうに呟いた。

「美人が死ぬと、なんか勿体無いな」

「かりにも一国の王女に対して、無礼な発言ですよ」

 アルカネットから窘められて、ベルトルドは小さく頷いた。

 まさかこの王女が自分を想い焦がれるあまり、このような出来事に発展してしまったことなど思いもよらないベルトルドは、中庭に咲くバラの花々を一瞥して王女の寝室をあとにした。



 コッコラ王国の謀反から2週間ばかり経った頃、ハワドウレ皇国は正式にコッコラ王国の国名を削除し、領土を接収した。そして王家の者たちの自害により、この度の事件の真相が判らず、皇国への反逆罪という形でかたをつけた。

 これが後の世で言われる『コッコラ王国の悲劇』の真相だ。

 惑星ヒイシから一つの国が消え、ハワドウレ皇国と17の小国、5つの自由都市のみとなった。
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