片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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番外編・2

コッコラ王国の悲劇・39

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「閣下を追わなくてはなりませんね」

 呆気にとられる10人の大将たちを見渡しながら、ブルーベル将軍は副官のハギに指示を出す。

 ブルーベル将軍は正規部隊の中でも、とりわけ規律を重んじる部下たちを選りすぐり、即席の大隊を作ると、自ら率いてベルトルドの後を追った。

 一部の正規部隊には戦場の後始末を命じ、残りは皇都に帰還させる。

 あらかじめベルトルドからは「全て任せろ」と言われていたが、軍部の長であるブルーベル将軍は丸なげするわけにもいかず、大慌てでベルトルドを追いかけた。

 いらぬ心配だが、一国の副宰相を共の者一人だけで、敵国へ向かわせるわけにはいかないからだ。



 アルカネットのみを伴って、ベルトルドは逃げ惑う傭兵たちを徹底的に追い回しては、片っ端から殺処分していた。日頃のストレス解消も兼ねて、ベルトルドの攻撃には遠慮がない。

 それでもさすがに3万人全てをとっ捕まえることは無理なため、諦め感を漂わせ途中で飽きて立ち止まった。

「逃げ足だけは一流だな。追い掛け回す身にもなれと」

「雑魚傭兵なんかを追い回したところで、しょうがないでしょう」

「だって、いかにも『俺は一生懸命仕事してきました!』て、ボケジジイに言える程度はしとかんと」

 ベルトルドはむっすりと口をへの字に曲げてぼやく。そんなベルトルドに、アルカネットは小さく首を傾げる。

「だったら、即首都エルマスに行って、今回の首謀者であるメティン国王の首をはねてくればすむことでしょう」

「メンドくさいじゃないか」

「如何にも仕事してきました、と胸を張って言えるじゃないですか。労力はずっといりませんよ」

「うっ……」

 溜息混じりにアルカネットに言われ、ベルトルドは駄々っ子のように唇を尖らせた。



 泣くだけ泣いて、やがてジーネット王女は寝台の上に座り込むと、焦点の定まらない目を花咲き乱れる中庭へ向けた。

 赤やピンク色の綺麗なバラが咲き誇っている。

 ――いつか、自分で育てたこのバラの花を、ベルトルド様に差し上げたい。

 そう内に秘めた想いをバラの花に注いで、大切に育ててきたのだ。

 しかしもう、このバラの花をベルトルドに贈ることは出来ないだろう。

 今回の戦争を起こしたのは、ほかならぬ自分なのだから。

 自分が漏らした言葉のせいで、父王と兄君が憤慨してのことなのだ。

 祖国を、民を、家族を、世界中の傭兵たちを、ハワドウレ皇国の民をも巻き込んだ、この戦争責任は全て自分にある。

 ジーネット王女は数週間前の出来事に、思いを馳せていた。
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