片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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番外編・2

コッコラ王国の悲劇・35

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「サイ《超能力》は”想い”の力だ。念じれば念じるほど威力は上がる。お前たちの力も中々だが、雑念が多いぞ。もっと戦いに集中せんか!!」

 ベルトルドは僅かに顎を引くと、右手をあげてマリオンとルーファスのほうへ掌を向けた。すると、2人は思いっきり後方に吹っ飛ばされ、ガエルによってその身を受け止められ転がらずにすんだ。

「おっさん手加減しなさすぎぃ~~」

「戦いで手加減なんぞするか、馬鹿者!!」

 目を回すマリオンの愚痴は、ごもっともな言葉で一蹴された。

 それまで黙っていたヴァルトとガエルが前に出た。2人はカーティスとシビルから強化と防御の魔法を念入りに仕込まれていた。そしてランドンによって回復魔法で疲労を和らげられている。

「ぶっ飛ばしてやる!!」

 掌にバチンと拳を叩きつけながら、ヴァルトは美麗な顔を怒らせ元気よく叫んだ。あまりにも顔が綺麗なため、どうにも迫力に欠ける。それで戦闘中は怒ったような表情(かお)をするよう心がけていた。しかしあまり効果がないことは当人だけは気づいてない。ヴァルトは”凄む”という表情がうまく作れないのだ。

「魔法も魔剣もサイ《超能力》もお手上げなら、俺たちの出番だ」

 ガエルも拳を掌に叩きつけながら、ニヤリと笑む。クマのトゥーリ族であるガエルは、ブルーベル将軍の甥でもある。しかし白クマのブルーベル将軍とは対照的に、ガエルは黒毛をしていて毛足も短い。黒い顔は不敵に笑んだだけで凄みが増す。

 ヴァルトとガエルは同時に駆け出し、拳を突き出した。

「ふんっ」

 ベルトルドは楽しそうに笑顔で掌をかざし、念力で見えない壁を作る。

 誰もが2人は同じように弾き飛ばされる、と思っていた。しかし2人は拳を突き出したままその場に踏ん張って立っていた。

「ほほう、やるじゃないか」

 嬉しそうに言うベルトルドに、ヴァルトはベーッと舌を出す。

「後ろのフヌケどもといっしょにすんな!」

「なんだとごるぁっ!!」

 ギャリーとハーマンがいきり立つ。タルコットも不愉快そうに顔を歪めていた。

「ははは、確かにお前たちの方が吹っ飛ばされないだけ筋がいい。けどな、こういう防ぎ方もあるということを、教えといてやろう」

 そう言うと、ベルトルドはかざしていた手を、人差し指一本だけ立てて形を変えた。すると、突然ヴァルトとガエルの拳が、スカッと空を凪いでたたらを踏んだ。

「あれれ?」

 ヴァルトは自分の拳を見つめながら首をかしげる。

 すっかりギャラリーと化した他の傭兵たちも、同様に首をかしげた。

「力が流された……?」

 目の前の防御壁が消えたわけではないらしい。目には見えないが、気配のようなものは感じる。ガエルは見えない防御壁に叩きつけていた己の力が、どこかに流され消されたのを感じていた。

「もっかいだー!!」

 今度は左拳を突き出すが、同じように力のみが消されて拳はから回った。ヴァルトは眉根を寄せて唸った。力は消され当たらないのでは意味がない。

 その場に唖然と佇む2人の間から、突然ベルトルドめがけて襲いかかる物体があった。

「これならどーよ!」
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