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番外編・2
コッコラ王国の悲劇・13
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ライオン傭兵団に集まっている猛者たちは、一人当千の実力を備え、またそれに匹敵するほどの知識や能力を持つ人々だ。そんな中、特殊スキル〈才能〉に分類される魔法を持つマーゴットだが、これが申し訳ないほど扱いが下手なのである。
低級レベルの魔法すら満足に扱えず、しかもマーゴット自身は回復系魔法が得意だと思い込んでいた。当然扱いが下手なのは魔法全般なので、マーゴットが回復魔法を使えば擦り傷すら悪化し、重症人に使えば死人を出す有様だ。しかしマーゴットは自身が下手なことをけっして認めない。もはや可愛げがないとかそういうレベルではない。
メンバーを集める際、一流で凄腕ばかりを望んだ手前、マーゴットの存在はライオン傭兵団にとっては唯一の汚点である。それでもあえて彼女を入れているのは、カーティスの恋人だからであり、それが判っているから皆も我慢してくれている。これでせめてマーゴットが空気を読んでしおらしく振舞ってくれればまだよかったが、強情で頑固、つんけんして態度も女王様気取りな部分が大きい。
今も与えられた分け前を当然のように自分の荷物にしまっているので、皆の抑えた反感を買ってることにも気づいていないのだった。
自分が望んだこととは言え、少しは気を使って欲しい、そうカーティスも思っている。
「分配完了しましたよ、カーティスさん」
シビルが余った50枚くらいの金貨を、袋に詰め直してカーティスに渡す。この残金で、当分の食費やら酒代が支払われることになる。
「ありがとうございます」
「母屋のほうから朝食は振舞われるらしいですが、昼食と夕食は自分たちで何とかして欲しい、とのことでした」
交渉にあたったブルニタルからの報告に、カーティスは頷いた。
「明日にでも戦端が開かれるというわけではないようですから、5日間くらいはのんびりできそうです」
「なんで5日?」
ギャリーが首をかしげると、カーティスは前金と一緒に受け取っていた書類をギャリーに手渡す。
「なんでぇ、えらく大雑把だな」
書類に視線を走らせたギャリーは、不精ひげの生える顎を摩りながら、眉間にシワを寄せる。
「4日後までは傭兵を募る期間、5日後に戦端を開く。て、オイオイ、一体何時軍を編成するんだ? ある程度は体裁を整えないとマズイだろ。それに作戦説明とかはどーすんだよ」
「準備まるでナシ、だね」
ルーファスが肩をすくめた。
「コッコラ王国領内に皇国軍が来るまでは、当然準備に追われるんでしょうが、こちらの都合に合わせて皇国軍が待ってくれるんか?」
「皇国軍にきてもらうのが前提なんだな。遠征するとか全く予定はない感じだ」
「つか、予定通りに皇国軍が5日後にくんの?」
皆は呆れ顔を見合わせて視線を上に向ける。ライオン傭兵団のメンバーは、ほぼ元軍人だったのだ。コッコラ王国の杜撰すぎる様子に、ツッコミどころ満載である。国同士が闘うというより、街の縄張り争いのような稚拙さが浮き彫りだ。
せっかく募集に乗っかってみたのはいいが、開始前からすでにグデグデなのには正直恐れ入る。
「これは私の想像ですが…、作戦なんてないと思います」
にっこりと言うカーティスの顔を見て、全員ゲソーッと表情を歪ませた。
低級レベルの魔法すら満足に扱えず、しかもマーゴット自身は回復系魔法が得意だと思い込んでいた。当然扱いが下手なのは魔法全般なので、マーゴットが回復魔法を使えば擦り傷すら悪化し、重症人に使えば死人を出す有様だ。しかしマーゴットは自身が下手なことをけっして認めない。もはや可愛げがないとかそういうレベルではない。
メンバーを集める際、一流で凄腕ばかりを望んだ手前、マーゴットの存在はライオン傭兵団にとっては唯一の汚点である。それでもあえて彼女を入れているのは、カーティスの恋人だからであり、それが判っているから皆も我慢してくれている。これでせめてマーゴットが空気を読んでしおらしく振舞ってくれればまだよかったが、強情で頑固、つんけんして態度も女王様気取りな部分が大きい。
今も与えられた分け前を当然のように自分の荷物にしまっているので、皆の抑えた反感を買ってることにも気づいていないのだった。
自分が望んだこととは言え、少しは気を使って欲しい、そうカーティスも思っている。
「分配完了しましたよ、カーティスさん」
シビルが余った50枚くらいの金貨を、袋に詰め直してカーティスに渡す。この残金で、当分の食費やら酒代が支払われることになる。
「ありがとうございます」
「母屋のほうから朝食は振舞われるらしいですが、昼食と夕食は自分たちで何とかして欲しい、とのことでした」
交渉にあたったブルニタルからの報告に、カーティスは頷いた。
「明日にでも戦端が開かれるというわけではないようですから、5日間くらいはのんびりできそうです」
「なんで5日?」
ギャリーが首をかしげると、カーティスは前金と一緒に受け取っていた書類をギャリーに手渡す。
「なんでぇ、えらく大雑把だな」
書類に視線を走らせたギャリーは、不精ひげの生える顎を摩りながら、眉間にシワを寄せる。
「4日後までは傭兵を募る期間、5日後に戦端を開く。て、オイオイ、一体何時軍を編成するんだ? ある程度は体裁を整えないとマズイだろ。それに作戦説明とかはどーすんだよ」
「準備まるでナシ、だね」
ルーファスが肩をすくめた。
「コッコラ王国領内に皇国軍が来るまでは、当然準備に追われるんでしょうが、こちらの都合に合わせて皇国軍が待ってくれるんか?」
「皇国軍にきてもらうのが前提なんだな。遠征するとか全く予定はない感じだ」
「つか、予定通りに皇国軍が5日後にくんの?」
皆は呆れ顔を見合わせて視線を上に向ける。ライオン傭兵団のメンバーは、ほぼ元軍人だったのだ。コッコラ王国の杜撰すぎる様子に、ツッコミどころ満載である。国同士が闘うというより、街の縄張り争いのような稚拙さが浮き彫りだ。
せっかく募集に乗っかってみたのはいいが、開始前からすでにグデグデなのには正直恐れ入る。
「これは私の想像ですが…、作戦なんてないと思います」
にっこりと言うカーティスの顔を見て、全員ゲソーッと表情を歪ませた。
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