片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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勇気と決断編

episode522

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 風呂から上がって部屋に戻ると、そこにアルカネットが居てキュッリッキはびっくりした。

「ア、アルカネットさん」

「お風呂に入っていたんですね」

「もお、勝手に入っちゃダメって言ったでしょ!」

「すみません…」

 元気のない様子で、アルカネットは苦笑した。

「何か用なの?」

 バスローブの襟をかきあわせ、キュッリッキは訝しげに問う。

 数日前までは、素直にそばに駆け寄って甘えられたのに、今は警戒してしまう。

 アルカネットは自分からキュッリッキの前までくると、手にしていた箱を差し出した。

「これを持って行きなさい」

 アルカネットの顔を見上げて、そして素直に箱を受け取る。

「開けてもいい?」

「はい」

 箱を腕に抱えるようにして、蓋を開ける。中にはさらに白い箱が入っていた。

 首をかしげながらさらに蓋を開けると、キュッリッキは目を見張って「うわあ」と声を上げた。

「お化粧品がいっぱい!」

「これから必要になっていくでしょう。いつか渡そうと用意していました」

「ありがとう」

 目を輝かせるキュッリッキを見て、アルカネットは穏やかに微笑んだ。

「お化粧のやり方は、マリオンにでも習うといいでしょう。そして、お化粧をしたら、寝る前には必ず落としてから寝るのですよ。肌があれてしまいますから。リッキーさんの肌はまだこんなに綺麗ですから、薄く化粧をするくらいで大丈夫です」

「うん」

 そしてたまらず、アルカネットはキュッリッキを抱きしめた。

「いつでも帰ってきていいのですよ。ここはあなたの家でもあるのですから。待っていますからね」

「はい」

「体調には気をつけるんですよ。あれだけの大怪我をしたのです、完治したといっても、何がきっかけで体調を崩すか判りませんから。あなたの身体に負担がかからないよう、カーティスにはよく言っておきます。絶対に、無理はしないでください」

「うん」

 まるで今生の別れのようだとキュッリッキは思った。

 さっきは2人の態度に思わずカッとなったが、こんなにも心配してくれる。いつだって過剰なくらい、アルカネットは体調を気遣ってくれているのだ。それはとても嬉しかった。

「また遊びに来るね」

 アルカネットはキュッリッキから離れると、にっこりと笑った。

「はい。楽しみに待っています」
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