片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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勇気と決断編

episode518

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「小娘を大人2人がかりで、何イジメてンのよ」

「人聞きの悪い言い方をするな…」

 バツの悪そうな顔で、ベルトルドがぼやく。

「何をしに来たんですかリュリュ?」

 心外そうな顔でアルカネットに言われ、リュリュは肩をすくめた。

「仕事ほっぽり出してきたあーたたちが、エラソーに言ってくれてんじゃないわよ」

 リュリュはツカツカとキュッリッキの傍らに行って、そして涙に濡れる顔を覗き込んだ。

「せっかくの美少女ぶりが台無しよ。そんな泣きっ面でアジトへ帰ったら、みんな心配するでしょ」

 しゃくり上げながらリュリュを見上げ、キュッリッキは僅かに首をかしげた。

「今日はもう遅いし、メルヴィンには明日迎えに来るよう約束したんでしょ」

 小さくウィンクされて、キュッリッキは小さく頷いた。

 リュリュもサイ《超能力》使いだということを、うっすら思い出す。

「今からそんな顔でアジトへ帰っても、あっちも明日の予定で待っているんだろうしネ。ちゃんと食べて、お風呂に入って、寝て、笑顔たっぷりの抜群のコンディションで帰りなさい」

「う、うん」

「こら、リュー」

「おだまり。小娘にフラレた腹いせに、2人がかりで八つ当たりすんじゃないよっ!」

 思わずグッとなるベルトルドとアルカネットに、リュリュは目を細め、冷ややかな一瞥をくれる。

「みっともないったらありゃしない。こんなに小娘泣かせて、あーたたち幾つの大人なのよ! 好きなコにイジワルする領域をはるかに越えまくってるわよ。恥を知りなさいナ!」

 逆に説教を食らう羽目になり、ベルトルドもアルカネットも困ったように固まった。

 キュッリッキが泣き出しても、気にもならないほど嫉妬で我を忘れ、怒り心頭だったのだ。

「あ…」

 ふいにキュッリッキは尻餅をつくようにソファに座り込んだ。ベルトルドの力が解けたのだ。

 リュリュが口を閉ざすと、室内に沈黙が漂う。

 テーブルに視線を貼り付けていたベルトルドが、やがて深々としたため息をついて立ち上がった。そして、キュッリッキの傍らに座る。

「………無理な仕事は行くんじゃないぞ」

 どこか子供のように拗ねた顔をするベルトルドを、涙で濡れた顔で見上げ、キュッリッキは頷く。それを横目でチラリと見て、ベルトルドはキュッリッキをぎゅっと抱きしめた。

「もう二度と、危険なめには合わせたくない。リッキーが心身共に傷つくことも嫌だ。こうして俺の手元に置いて、ずっと守ってやりたい。俺はリッキーが誰よりも大好きで愛している。それだけは判ってほしい」

「うん……」

 ベルトルドの腕の中でじっとしながら、キュッリッキは小さく返事をした。
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