片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

文字の大きさ
上 下
533 / 882
勇気と決断編

episode514

しおりを挟む
 唇から全身に波のように広がっていく、甘くとろけるような感覚に、キュッリッキは頭の芯が痺れて恍惚となった。身体の力が抜けて、メルヴィンの両手に支えられながら、ようやく座っていられるほどだ。

 メルヴィンの手が身体に触れるものとはまた違う。柔らかで甘美な刺激が、心の奥底をくすぐるようだった。

 以前薬を口移しで飲ませてきたアルカネットや、ベルトルドが喜ぶだろうとお礼の気持ちで唇を押し付けた時には、けっしてこんな感覚はわかなかった。

(キスって、相手が違うだけで、こんなにも違うもの……なのかな………)

 やがてメルヴィンがそっと唇をはなすと、キュッリッキは急に唇に孤独を感じて、さみしい気分に襲われた。

(もっと、して欲しいのに…)

 恍惚の光が揺蕩う瞳が、甘えるようにメルヴィンに向けられる。せがむように、求めるように。それを感じ取り、メルヴィンは再び唇を重ねた。今度はより深く、柔らかな唇を味わうように貪った。

 細い肩をさらに抱き寄せ、忍ばせるようにそっと舌を差し入れる。

 うっすらと目を開くと、キュッリッキは目を閉じていた。白い頬をほんのりと紅潮させ、全てをメルヴィンに委ねるような、無防備な表情。そして、メルヴィンの舌に応えるように、恐る恐るといったようにキュッリッキの舌が絡んできた。その瞬間、愛おしいと思う気持ちが強く高鳴り、細い背に手を回して抱きしめた。胸の奥が熱くなり、激しくキュッリッキを求める気持ちが全身を襲った。しかし自制心が、徐々にはやる気持ちを鎮めていく。

(焦ってはだめだ……)

 まだ、キスを交わしたばかりなのだから。

 名残惜しむように2人は唇を離すと、暫く見つめ合い、そしてキュッリッキはメルヴィンの胸に顔をうずめた。

 心がキュンっと高鳴るような、生まれて初めてのキス。まだ唇に残るメルヴィンの唇の感触。

 恥ずかしいと思う気持ちを上回るほどの、甘美で優しい時間。細胞のひとつひとつにまで刻まれたメルヴィンの想い。

 そして、愛していると言ってもらえた。

 かつてベルトルドやアルカネットに言われた時とはまた違う。

 ベルトルドやアルカネットの愛は、キュッリッキにとって、親の愛情のようなものだった。2人は恋愛感情だと言い張るが、キュッリッキにはそういう感覚はいまだに湧いてこない。たとえ血のつながりはなくても、父親のような存在だから。

 しかしメルヴィンは違う。キュッリッキが初めて異性を意識した相手なのだ。

(メルヴィン大好き。とってもとっても大好き、一番大好き!)

 メルヴィンの体温を快く感じながら、キュッリッキはいつまでもこの時間が続けばいいのに。そう、心の底から願っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

処理中です...