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勇気と決断編
episode490
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キュッリッキはドレッサーの前に座り、髪型が乱れていないかなどをアルカネットがチェックして、ベルトルドはソファに座って将軍たちから色々と報告などを聞いていた。
「新しい知事が決まるまでは、当面サロモンが行政、軍事、治安諸々やることになる。どう見ても本物の無能者だから、知事が決まるまでの間、優秀な事務官たちを送るよう明日手配する。そうじゃないとすぐに現場が混乱するのは、目に見えているからな」
「そうですね。新知事が決まるまで閣下がご滞在なら、速やかにつつがなく移行しそうですが」
「モナルダ大陸にだけかまけていると、本国の行政が滞るからな。俺が10人いればテキパキ回るんだが」
「あなたみたいな不誠実な男が10人もいたら、目も当てられません」
横からアルカネットにつっこまれ、ベルトルドが噛み付きそうな表情を向ける。
「世界中の女どもが、ありがたがって涙を流して濡れるだけだっ!」
「ベルトルドさんの助平」
「リッキぃ……」
またもやキュッリッキから軽蔑の眼差しを向けられ、ベルトルドが泣きそうな顔で身を乗り出した。そこへノックがして、ヤーコッピが扉を開ける。
「お時間になりましたので、皆様ホールへお越し下さい」
「やっとか。では、チョー面倒だが行くぞ」
皆席を立ち、キュッリッキも緊張顔で立ち上がった。
「ちゃんとできるかな…」
胸元を両手で押さえて、ドキドキを沈めようとしていると、ベルトルドとアルカネットがキュッリッキの前に立ち、いきなり、
「最初はグー、じゃんけん」
「ぽいっ」
「ほいっ」
「ぽぽいっ!」
「おしゃあっ!!」
ジャンケンをやり始め、ベルトルドがチョキをだしてアルカネットに勝った。
「サイ《超能力》は使ってないぞ。愛の力だ、愛の!」
「くっ!」
そしてベルトルドがニコニコとキュッリッキに腕を差し出す。
「では、参りましょうか、麗しい姫君」
エスコート役を決めていたらしい。キュッリッキはひきつった笑みを浮かべると、ベルトルドの腕に手を回した。
大きな扉の前まで来ると、案内をしていたヤーコッピが深々と頭を下げる。
「陛下や他の招待客の皆様は、すでにお待ちしております。まっすぐ玉座前までお進みください」
「わかった」
「では、楽しいひとときを」
ヤーコッピが指を鳴らすと、扉が内側に大きく開かれた。
一瞬白い光が目に飛び込んできて、キュッリッキは眩しさに目を細めた。そして目が慣れてくると、目の前には左右に紳士淑女が道を開けて壁のように立ち、床には赤いカーペットがまっすぐ敷かれている。
「行くぞ、リッキー」
「う、うん」
キュッリッキの歩幅に合わせるように、ベルトルドはゆっくりと歩みを進める。その2人の後ろに、アルカネット、ブルーベル将軍、フォヴィネン大将、エクルース大将が続いた。
「新しい知事が決まるまでは、当面サロモンが行政、軍事、治安諸々やることになる。どう見ても本物の無能者だから、知事が決まるまでの間、優秀な事務官たちを送るよう明日手配する。そうじゃないとすぐに現場が混乱するのは、目に見えているからな」
「そうですね。新知事が決まるまで閣下がご滞在なら、速やかにつつがなく移行しそうですが」
「モナルダ大陸にだけかまけていると、本国の行政が滞るからな。俺が10人いればテキパキ回るんだが」
「あなたみたいな不誠実な男が10人もいたら、目も当てられません」
横からアルカネットにつっこまれ、ベルトルドが噛み付きそうな表情を向ける。
「世界中の女どもが、ありがたがって涙を流して濡れるだけだっ!」
「ベルトルドさんの助平」
「リッキぃ……」
またもやキュッリッキから軽蔑の眼差しを向けられ、ベルトルドが泣きそうな顔で身を乗り出した。そこへノックがして、ヤーコッピが扉を開ける。
「お時間になりましたので、皆様ホールへお越し下さい」
「やっとか。では、チョー面倒だが行くぞ」
皆席を立ち、キュッリッキも緊張顔で立ち上がった。
「ちゃんとできるかな…」
胸元を両手で押さえて、ドキドキを沈めようとしていると、ベルトルドとアルカネットがキュッリッキの前に立ち、いきなり、
「最初はグー、じゃんけん」
「ぽいっ」
「ほいっ」
「ぽぽいっ!」
「おしゃあっ!!」
ジャンケンをやり始め、ベルトルドがチョキをだしてアルカネットに勝った。
「サイ《超能力》は使ってないぞ。愛の力だ、愛の!」
「くっ!」
そしてベルトルドがニコニコとキュッリッキに腕を差し出す。
「では、参りましょうか、麗しい姫君」
エスコート役を決めていたらしい。キュッリッキはひきつった笑みを浮かべると、ベルトルドの腕に手を回した。
大きな扉の前まで来ると、案内をしていたヤーコッピが深々と頭を下げる。
「陛下や他の招待客の皆様は、すでにお待ちしております。まっすぐ玉座前までお進みください」
「わかった」
「では、楽しいひとときを」
ヤーコッピが指を鳴らすと、扉が内側に大きく開かれた。
一瞬白い光が目に飛び込んできて、キュッリッキは眩しさに目を細めた。そして目が慣れてくると、目の前には左右に紳士淑女が道を開けて壁のように立ち、床には赤いカーペットがまっすぐ敷かれている。
「行くぞ、リッキー」
「う、うん」
キュッリッキの歩幅に合わせるように、ベルトルドはゆっくりと歩みを進める。その2人の後ろに、アルカネット、ブルーベル将軍、フォヴィネン大将、エクルース大将が続いた。
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