片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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勇気と決断編

episode480

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 しかし一体どこから忍び込んでくるのだろうか。キュッリッキは食いつかれていないし、たぶんアルカネットも無事だろう。なのにどうして2度もベルトルドに――。

 キュッリッキはベビードールの裾をキュッと握り締め、硬い表情のまま生唾を飲み込んだ。気持ち悪いしおっかないけど、噛まれたらきっと痛い。

「退治して………やるんだからっ!」

 意を決して真剣に頷くと、キュッリッキはベルトルドのパジャマのズボンとパンツに手をかけ、一気に引き下ろした。



 身支度をきちんと整えたアルカネットは、食堂で新聞を広げながら、白い湯気の立つ紅茶を優雅に口に含んだ。

 ――ぎぃやああああああああああああああああっ!!

「!!!??」

 瞬間、ブバッと下品に紅茶を吹き出し、弾かれるように立ち上がった。

「な、なんですか今の悲鳴は!?」

 給仕のために食堂にいた使用人たちも、目を瞬かせながら仕事の手を止めていた。

「アルカネットさま!?」

 血相を変えたセヴェリとリトヴァが、食堂に飛び込んでくる。

 再び屋敷を震撼させるほどの悲鳴が轟いて、3人は顔を見合わせると食堂を飛び出した。

 普段なら厳しい叱責が飛ぶところだが、それどころではない。3人は大急ぎで屋敷の中をドタバタと走り回り、扉をバンッと開いて部屋に飛び込んだ。そして、ありえないほどの驚愕のシーンを目撃し、目をひん剥いて口を大きく開けたまま固まった。

「あ! アルカネットさんも手伝ってー!!!」

「いだだだだだだ痛い痛いリッキー止めなさーーーい!!」

 アルカネットたちに気づいたキュッリッキが、必死な面持ちでヘルプを求めた。一方、ベルトルドは本気で泣きながら悲鳴を喚き散らしている。

「リ……リッキーさん……?」

 アルカネットはよろりと倒れそうになるのを、かろうじて踏ん張った。

 そのシーンを、どう解釈すればいいのだろう。

「あのね、あのね、タイヘンなのー! ベルトルドさんの股間におっきなミミズが生えてたの!!」

「だからそれはミミズじゃないんだリッキー!! お願いだから引っ張るなああっ」

「だってムクムク大きくなってくるんだよ! これは寄生虫のミミズだと思うのっ! 痛いと思うけど引っこ抜けるまで頑張ってベルトルドさん!!」

 キュッリッキはベルトルドの股間のミミズ――暴れん棒を両手でしっかり握り締め、額に汗して必死な形相で、渾身の力を込めて引っ張っていた。

「前はナマコに襲われたり、今度はミミズが生えてくるとか、ベルトルドさんばっかり可哀想なのーーー!」

 この光景をライオン傭兵団の皆が目撃したら、涙を流しながら腹を抱えて笑い転げるだろう。それほど奇妙で凄まじい光景が展開されていた。
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