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勇気と決断編
episode476
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思わずベルトルドが下官に愚痴をこぼしたところで、立派な成りをした小太りな男が室内に入ってきた。
「王宮が政治の拠点となるのは、気に入ったのであるよ」
顎を反らせ、やたらと細い目を細くさせて言い放ったのはサロモン子爵だった。
ブルーベル将軍や大将たちが席を立ち、子爵に敬礼する。ベルトルドは顎の下で手を組んで、眉間を寄せて子爵を見る。立場的にはベルトルドが上なのだが、サロモン子爵はベルトルドの態度が気に入らないようだった。
「相変わらずそなたは、態度がデカイのう」
「恐れ入る」
サロモン子爵は後ろで窮屈そうに手を組むと、さらに顎を反らせてベルトルドをじろりと睨んだ。
「平民の若僧は、礼を知らぬで困る」
「貴族に頭を下げなくてもいい地位にいるからな、無理にご機嫌取りはせん。――着任ご苦労、正式な知事が任命される間は任せる。んで、能無しボケジジイから何か伝言はないか?」
能無しボケジジイ、とは現皇王のことである。この場に居るリュリュ以外の人々がギョッと目を見張った。サロモン子爵は不快感を貼り付けた顔で眉をしかめる。
「陛下のことを愚弄するとは……」
「心配しなくても、面と向かっていつも言っていることだ。んで、伝言はないな?」
「不心得者めが……。――陛下からは、明日、戦勝を祝い、ねぎらうパーティを催すため、副宰相と将軍たちも共に出席するよう命じておられる」
「パーティー!?」
モロ嫌そーにベルトルドが言うと、リュリュがぷっと吹き出した。
「王宮の中の連中は暇だな相変わらず。……フォヴィネンとエクルース、そしてブルーベル将軍、大変お手数おかけして超絶申し訳ないが、ジジイの命令だからしょうがなく聞いて、パーティに出席するよう」
お手数、超絶、ジジイ、をことさら強調して言い放つ。これに、指名された3人は苦笑を滲ませ敬礼した。
「それと、件の召喚士の少女も同席させるように言っておられた」
「リッキーを?」
「少女の名は知らぬが、連れてくるようにとのことだ」
その瞬間、ベルトルドは椅子を蹴って立ち上がった。その勢いに思わずサロモン子爵は後ろに倒れそうになってたたらを踏む。
「俺は今すぐ帰る!!」
バンッと机に両手のひらを打ち付けて、猛然とベルトルドが叫ぶ。それに動じずリュリュは首をかしげた。
「別に急がなくても、明日のパーティ前に戻ればいいんじゃない? お仕事たっくさん残ってるんだから」
「そんなモンは、こいつがやればいい」
子爵をビシッと指差し断言する。
「リッキーのドレスを選ぶという、大事な使命が俺にはある!」
腹の底から振り絞るような大声で、握り拳できっぱり言い放つベルトルドに、室内のいたるところから複雑な視線が投げかけられた。皇都に帰る大義名分が出来たので、それにかこつけて早く帰りたいのだ。
「てことで、あとは勝手にやれ!」
そうハッキリ言って、リュリュが呼び止めるのもスルーし、その場からベルトルドは消えた。
「ンもーー! お仕置きよベルッ!!」
仕事の引き継ぎやら何やら雑務があるため、秘書官まで仕事を放棄して帰るわけにもいかない。リュリュは親指の爪を噛みながら、サロモン子爵をジロリと睨んだ。
「晩飯返上で引継ぎするから、覚悟おし!!」
オカマの最凶の顔を向けられ、今度こそサロモン子爵は後ろにひっくり返ってしまった。
「王宮が政治の拠点となるのは、気に入ったのであるよ」
顎を反らせ、やたらと細い目を細くさせて言い放ったのはサロモン子爵だった。
ブルーベル将軍や大将たちが席を立ち、子爵に敬礼する。ベルトルドは顎の下で手を組んで、眉間を寄せて子爵を見る。立場的にはベルトルドが上なのだが、サロモン子爵はベルトルドの態度が気に入らないようだった。
「相変わらずそなたは、態度がデカイのう」
「恐れ入る」
サロモン子爵は後ろで窮屈そうに手を組むと、さらに顎を反らせてベルトルドをじろりと睨んだ。
「平民の若僧は、礼を知らぬで困る」
「貴族に頭を下げなくてもいい地位にいるからな、無理にご機嫌取りはせん。――着任ご苦労、正式な知事が任命される間は任せる。んで、能無しボケジジイから何か伝言はないか?」
能無しボケジジイ、とは現皇王のことである。この場に居るリュリュ以外の人々がギョッと目を見張った。サロモン子爵は不快感を貼り付けた顔で眉をしかめる。
「陛下のことを愚弄するとは……」
「心配しなくても、面と向かっていつも言っていることだ。んで、伝言はないな?」
「不心得者めが……。――陛下からは、明日、戦勝を祝い、ねぎらうパーティを催すため、副宰相と将軍たちも共に出席するよう命じておられる」
「パーティー!?」
モロ嫌そーにベルトルドが言うと、リュリュがぷっと吹き出した。
「王宮の中の連中は暇だな相変わらず。……フォヴィネンとエクルース、そしてブルーベル将軍、大変お手数おかけして超絶申し訳ないが、ジジイの命令だからしょうがなく聞いて、パーティに出席するよう」
お手数、超絶、ジジイ、をことさら強調して言い放つ。これに、指名された3人は苦笑を滲ませ敬礼した。
「それと、件の召喚士の少女も同席させるように言っておられた」
「リッキーを?」
「少女の名は知らぬが、連れてくるようにとのことだ」
その瞬間、ベルトルドは椅子を蹴って立ち上がった。その勢いに思わずサロモン子爵は後ろに倒れそうになってたたらを踏む。
「俺は今すぐ帰る!!」
バンッと机に両手のひらを打ち付けて、猛然とベルトルドが叫ぶ。それに動じずリュリュは首をかしげた。
「別に急がなくても、明日のパーティ前に戻ればいいんじゃない? お仕事たっくさん残ってるんだから」
「そんなモンは、こいつがやればいい」
子爵をビシッと指差し断言する。
「リッキーのドレスを選ぶという、大事な使命が俺にはある!」
腹の底から振り絞るような大声で、握り拳できっぱり言い放つベルトルドに、室内のいたるところから複雑な視線が投げかけられた。皇都に帰る大義名分が出来たので、それにかこつけて早く帰りたいのだ。
「てことで、あとは勝手にやれ!」
そうハッキリ言って、リュリュが呼び止めるのもスルーし、その場からベルトルドは消えた。
「ンもーー! お仕置きよベルッ!!」
仕事の引き継ぎやら何やら雑務があるため、秘書官まで仕事を放棄して帰るわけにもいかない。リュリュは親指の爪を噛みながら、サロモン子爵をジロリと睨んだ。
「晩飯返上で引継ぎするから、覚悟おし!!」
オカマの最凶の顔を向けられ、今度こそサロモン子爵は後ろにひっくり返ってしまった。
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