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エルアーラ遺跡編
episode459
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「申し訳ございません!」
オルヴォ大将が頭を下げたまま、叫ぶように言う。
「閣下の先見の識によるものと気づかず、またお考えを察することもせず、感情のままに先走り、責めるがごとき態度に出ましたこと、自らを恥、お詫びの言葉もございませんっ」
同じように詫びの言葉を口にしながら、各々の大将たちが深々と叩頭する。
(まるで三文芝居の時代劇を見ているようですねえ……)
ブルーベル将軍は呆れながらそう胸中で思い、チラリとベルトルドとリュリュを見る。
案の定、2人は全力で爆笑を堪えているのが、嫌でも判る表情を浮かべていた。ふきださないよう、ある意味ここが踏ん張りどころだ、などとつい思ってしまう。
しかしこのまま出来の悪い時代劇じみたノリが続くと、オルヴォ大将が真っ先に「かくなるうえは、腹をかっ捌いてお詫び致す!」とか言い出しそうな雰囲気になっている。
「総帥閣下のお考えが、あなたたちにも判ったでしょう。いつまでも伏してないでお座りなさい。今後の方針を決めて、閣下にはお休みいただかないと、自ら王たちの討伐に出向かれてだいぶお疲れのようです」
やんわりとブルーベル将軍が助け舟を出すと、大将たちは今一度深い礼をしたのち、椅子に座り直した。確かにいつも余裕の表情を浮かべているベルトルドには珍しく、疲労の色が濃かった。
実際ベルトルドは疲労の極みにある。寝不足に加え、身体に負担が大きい空間転移を多用し、大技に必殺技を連打したのだ。それにアルカネットに一任しているキュッリッキのことも大いに気がかりだし、戦後処理のことも考えると、さすがに心身ともに疲れ果てる。
サイ《超能力》は精神力が全てだ。いくら常人よりもタフな精神力を自負するベルトルドでも、限界はあるのだ。
今回の戦争は、何も先見の明からきたものでは決してない。あくまでベルトルドの個人的な思惑から、規模を拡大したものである。
発端はソレル王国が、アルケラ研究機関ケレヴィルの研究員たちを、不当に逮捕したことにある。
ナルバ山の遺跡に手を出し、軍を動かしてきたことで、ソレル国王の背景に不審な影を見出し、反乱を企てていることに気づいた。更にエルアーラ遺跡に押し入り、ケレヴィルの職員を皆殺しにして立てこもった。そしてエルアーラ遺跡からわざわざ宣戦布告などを出すものだから、ベルトルドが慌てたのだ。
エルアーラ遺跡は、あまり世間に広く知られたくないものだ。必要以上に情報が漏れることは、なんとしても阻止しなければならない重大事。
召喚士であるキュッリッキの怪我の原因を捏造して国民感情を煽り、モナルダ大陸に大軍団を投入する大義名分を打ち立てた。それによってエルアーラ遺跡の存在を、戦争という形で世間から関心を逸らし、遺跡を取り戻すために自ら乗り込み速攻ケリをつけた。
全てはエルアーラ遺跡――フリングホルニを世界中から隠すためだ。
まさかそれを、大将たちに話すわけにはいかない。
だが、戦争という形を借りた目隠しを成功させるためには、内部の更に上層にどうしても協力者が必要だ。そこで日頃から信頼を寄せているブルーベル将軍には全てを打ち明けて、協力してもらっていたのである。
そしてブルーベル将軍は、個人的にベルトルドに大きな借りがある。
将軍の座を狙う野心家キャラウェイに、裏工作により罪を捏造されて将軍職を逐われたことがあった。それをベルトルドに救われ、罪は晴らされ復職させてもらったのだ。
どちらも個人的都合によるものだったが、納得の上協力し合い、大将たちには麗しき未来図から来たものだと信じさせることに成功した。
オルヴォ大将が頭を下げたまま、叫ぶように言う。
「閣下の先見の識によるものと気づかず、またお考えを察することもせず、感情のままに先走り、責めるがごとき態度に出ましたこと、自らを恥、お詫びの言葉もございませんっ」
同じように詫びの言葉を口にしながら、各々の大将たちが深々と叩頭する。
(まるで三文芝居の時代劇を見ているようですねえ……)
ブルーベル将軍は呆れながらそう胸中で思い、チラリとベルトルドとリュリュを見る。
案の定、2人は全力で爆笑を堪えているのが、嫌でも判る表情を浮かべていた。ふきださないよう、ある意味ここが踏ん張りどころだ、などとつい思ってしまう。
しかしこのまま出来の悪い時代劇じみたノリが続くと、オルヴォ大将が真っ先に「かくなるうえは、腹をかっ捌いてお詫び致す!」とか言い出しそうな雰囲気になっている。
「総帥閣下のお考えが、あなたたちにも判ったでしょう。いつまでも伏してないでお座りなさい。今後の方針を決めて、閣下にはお休みいただかないと、自ら王たちの討伐に出向かれてだいぶお疲れのようです」
やんわりとブルーベル将軍が助け舟を出すと、大将たちは今一度深い礼をしたのち、椅子に座り直した。確かにいつも余裕の表情を浮かべているベルトルドには珍しく、疲労の色が濃かった。
実際ベルトルドは疲労の極みにある。寝不足に加え、身体に負担が大きい空間転移を多用し、大技に必殺技を連打したのだ。それにアルカネットに一任しているキュッリッキのことも大いに気がかりだし、戦後処理のことも考えると、さすがに心身ともに疲れ果てる。
サイ《超能力》は精神力が全てだ。いくら常人よりもタフな精神力を自負するベルトルドでも、限界はあるのだ。
今回の戦争は、何も先見の明からきたものでは決してない。あくまでベルトルドの個人的な思惑から、規模を拡大したものである。
発端はソレル王国が、アルケラ研究機関ケレヴィルの研究員たちを、不当に逮捕したことにある。
ナルバ山の遺跡に手を出し、軍を動かしてきたことで、ソレル国王の背景に不審な影を見出し、反乱を企てていることに気づいた。更にエルアーラ遺跡に押し入り、ケレヴィルの職員を皆殺しにして立てこもった。そしてエルアーラ遺跡からわざわざ宣戦布告などを出すものだから、ベルトルドが慌てたのだ。
エルアーラ遺跡は、あまり世間に広く知られたくないものだ。必要以上に情報が漏れることは、なんとしても阻止しなければならない重大事。
召喚士であるキュッリッキの怪我の原因を捏造して国民感情を煽り、モナルダ大陸に大軍団を投入する大義名分を打ち立てた。それによってエルアーラ遺跡の存在を、戦争という形で世間から関心を逸らし、遺跡を取り戻すために自ら乗り込み速攻ケリをつけた。
全てはエルアーラ遺跡――フリングホルニを世界中から隠すためだ。
まさかそれを、大将たちに話すわけにはいかない。
だが、戦争という形を借りた目隠しを成功させるためには、内部の更に上層にどうしても協力者が必要だ。そこで日頃から信頼を寄せているブルーベル将軍には全てを打ち明けて、協力してもらっていたのである。
そしてブルーベル将軍は、個人的にベルトルドに大きな借りがある。
将軍の座を狙う野心家キャラウェイに、裏工作により罪を捏造されて将軍職を逐われたことがあった。それをベルトルドに救われ、罪は晴らされ復職させてもらったのだ。
どちらも個人的都合によるものだったが、納得の上協力し合い、大将たちには麗しき未来図から来たものだと信じさせることに成功した。
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