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エルアーラ遺跡編
episode456
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炎の中で灰に転じていくヒューゴの姿を冷ややかに見おろすベルトルドの横に、シ・アティウスが並んで立った。
「幽霊退治が終わりましたね」
「ああ、これでフリングホルニは完全に俺のものだ」
戦いの間、ベルトルドが動力部に防御を張り巡らせていたので、どこにも損傷はなかった。それが判って、シ・アティウスは小さく安堵の吐息を漏らす。
「それと、アルカネットが放置してある3人の王の死体、あれの掃除はどうしてくれるんですか?」
「………ダエヴァを呼ぼうか……警備も兼ねて」
わざわざ呼びつけられて、腐った死体の後始末をさせられるダエヴァには、同情しか湧いてこないとシ・アティウスは肩をすくめる。かといって、自分でやるのは絶対嫌だった。
「仕事のうちだ! 仕事!!」
引き攣りながら断言すると、ベルトルドは身体を後ろに向ける。
蚊帳の外に置かれたままのライオン傭兵団が、情けない表情(かお)でぽかんとこちらを見ている。
可哀想に、とシ・アティウスは思っていた。
遺跡に入ったらキュッリッキがいきなり行方不明になり、Encounter Gullveig Systemに追い掛け回され、キュッリッキがアイオン族で片翼だと知ってしまい、いきなり1万年前の思念体と戦わされ、挙句上司の大技から必殺技まで見せつけられたのだ。
これを不憫と思わずしてなんと言う。
「お前たちご苦労だったな。出口まではシ・アティウスに案内させるから、歩いてエグザイルシステムのあるところまで行け。それからアジトに戻ってイイぞ。俺の屋敷においてきてある私物は使用人たちに送らせる」
ツッコミもなく、ただ黙って皆頷いた。
「シ・アティウス、お前はダエヴァがくるまでここで待機しながら、システムなどのチェックをしておけ。近場にいるアルヴァーの部隊を寄越す」
「ケレヴィルの職員を幾人か呼んでもいいですか」
「うん。最終チェックもさせとけ」
「判りました」
「俺はアルイールへ行って、現場の大将どもの不満と愚痴を根性で聞いてやらねばならん。これから戦後処理で頭が痛くなる」
「仕方ありませんよ、自分で撒いたことです」
「………フンッ!」
子供のようなふくれっ面で、ベルトルドはシ・アティウスを睨んだ。
「じゃあ俺は行く!」
そう言って、ベルトルドは空間転移した。
どこか曇天の雰囲気を貼り付けたライオン傭兵団を引率しているシ・アティウスは、黙々と出口を目指して歩いていた。
当初動力部の幽霊退治は彼らに一任する予定だった。ところがEncounter Gullveig Systemの騒動でキュッリッキを欠いたため、急遽ベルトルドも出張ることになってしまったのである。
幽霊の正体が1万年前に存在した騎士の残留思念体だったことから、断片的にではあるが衝撃的な話が飛び交い、居合わせたライオン傭兵団にしてみたら青天の霹靂のようなものだ。
案の定彼らは疲れた頭を回転させながら、飛び交っていた謎の会話の数々に疑問や関心を向けてカーティスが真っ先に口を開いた。
「シ・アティウスさんあの……」
「幽霊退治が終わりましたね」
「ああ、これでフリングホルニは完全に俺のものだ」
戦いの間、ベルトルドが動力部に防御を張り巡らせていたので、どこにも損傷はなかった。それが判って、シ・アティウスは小さく安堵の吐息を漏らす。
「それと、アルカネットが放置してある3人の王の死体、あれの掃除はどうしてくれるんですか?」
「………ダエヴァを呼ぼうか……警備も兼ねて」
わざわざ呼びつけられて、腐った死体の後始末をさせられるダエヴァには、同情しか湧いてこないとシ・アティウスは肩をすくめる。かといって、自分でやるのは絶対嫌だった。
「仕事のうちだ! 仕事!!」
引き攣りながら断言すると、ベルトルドは身体を後ろに向ける。
蚊帳の外に置かれたままのライオン傭兵団が、情けない表情(かお)でぽかんとこちらを見ている。
可哀想に、とシ・アティウスは思っていた。
遺跡に入ったらキュッリッキがいきなり行方不明になり、Encounter Gullveig Systemに追い掛け回され、キュッリッキがアイオン族で片翼だと知ってしまい、いきなり1万年前の思念体と戦わされ、挙句上司の大技から必殺技まで見せつけられたのだ。
これを不憫と思わずしてなんと言う。
「お前たちご苦労だったな。出口まではシ・アティウスに案内させるから、歩いてエグザイルシステムのあるところまで行け。それからアジトに戻ってイイぞ。俺の屋敷においてきてある私物は使用人たちに送らせる」
ツッコミもなく、ただ黙って皆頷いた。
「シ・アティウス、お前はダエヴァがくるまでここで待機しながら、システムなどのチェックをしておけ。近場にいるアルヴァーの部隊を寄越す」
「ケレヴィルの職員を幾人か呼んでもいいですか」
「うん。最終チェックもさせとけ」
「判りました」
「俺はアルイールへ行って、現場の大将どもの不満と愚痴を根性で聞いてやらねばならん。これから戦後処理で頭が痛くなる」
「仕方ありませんよ、自分で撒いたことです」
「………フンッ!」
子供のようなふくれっ面で、ベルトルドはシ・アティウスを睨んだ。
「じゃあ俺は行く!」
そう言って、ベルトルドは空間転移した。
どこか曇天の雰囲気を貼り付けたライオン傭兵団を引率しているシ・アティウスは、黙々と出口を目指して歩いていた。
当初動力部の幽霊退治は彼らに一任する予定だった。ところがEncounter Gullveig Systemの騒動でキュッリッキを欠いたため、急遽ベルトルドも出張ることになってしまったのである。
幽霊の正体が1万年前に存在した騎士の残留思念体だったことから、断片的にではあるが衝撃的な話が飛び交い、居合わせたライオン傭兵団にしてみたら青天の霹靂のようなものだ。
案の定彼らは疲れた頭を回転させながら、飛び交っていた謎の会話の数々に疑問や関心を向けてカーティスが真っ先に口を開いた。
「シ・アティウスさんあの……」
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