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29話:訓練の成果
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私をまじえて≪分身≫の訓練の成果を披露するとかで、スニタ先生の授業がナシになった。やったね! 心の中で万歳三唱よ!
この頃、式典とかパーティーとかの作法や何やら難しいことが増えて、全然頭に入らなくてお手上げだったのだ。
覚えないと恥をかくのは私だけど、もうこんな面倒なことは止めて、アルジェン王子をどうぶっ殺すかみんなで計画いっぱい練ったほうがいい気がするよ。
アールシュの≪分身≫と一緒に中庭へ行くと、ソティラスたちとカルリトス老師、シャムが待っていた。
「同じ敷地内にいたのに、なんかみんな久しぶりだね~」
「お久しぶりです、姫様」
相変わらず可愛い顔で、嬉しそうにカイラが挨拶をしてくれた。
「元気そうでよかった。それに、なんだか顔つきが頼もしくなったよネ」
「えへへ」
アヤンが照れ臭そうに鼻の下を指で擦る。初めて出会ったときの弱弱しい印象はもうなかった。
「あたしも頑張ってます!」
「エライエライ!」
酷い扱いを受けていたニシャも、すっかり明るく元気になったみたい。
「では、皆≪分身≫を出すのじゃ」
私の肩の上に乗ったカルリトス老師が言うと、みんなの≪分身≫が影から立ち上がった。
ああ、見目麗しい≪分身≫たち。
若干一名除く。
「セスやっぱ見た目を変えようみんなと外見揃えようよ!!」
「うるさいぞ人間! わしゃこれでいいんじゃ!」
「ちィっ」
セスの説得敗北まくっている。
「そなたも粘るな」
「見た目大事」
セスとのやり取りを、いつもアールシュは笑いながら見ている。
同じ闇の異形でも、アールシュは話が判る。エライ、アールシュ!
「ところでね老師、前から思っていたんだけど」
「なんじゃ」
「こうしてソティラスと≪分身≫が揃っていると、呼び名に困るというか、ゴチャゴチャになって判りづらいというか…」
「そうか?」
「ジョブ名で呼ぼうとすると、ルドラとセス、アールシュとニシャはかぶるじゃん」
「ルドラの≪分身≫、とかでイイと思うがのう」
「≪分身≫にも名前を付けてあげると呼びやすいと思うんです!」
「そっちのほうが紛らわしいぞ…」
「ダメか」
太郎とか千代丸とか、和名をつけたらきっと区別つけやすいって思ってたんだけどなあ。私だけか。
「では、始めようかの」
セスとアールシュが敵役となり、それぞれの≪分身≫と本体とで敵が4人いる想定で模擬戦が始まった。
中庭の周囲は建物が吹っ飛ばないように結界が張られているので、みんな全力で力を奮えるように舞台は整えられていた。
シャムが私の代わりとなり、子供たちはシャムを守り抜くのが勝利の条件。
「俺に一発でも当たらないように頑張れガキども」
地面に寝転がってタバコをぷかぷかふかして、シャムはあくびをしながら言う。私の代役もっとマジメにヤレ。
「はいっ」
生真面目にカイラが返事をした。ホント好い子!
「ではいくぞ」
アールシュは両腕に黒い触手を生やし、ルドラとカイラの≪分身≫に攻撃を開始した。
ルドラの≪分身≫は6本の剣のうち、3本の剣を盾のようにして触手攻撃を防ぐ。すかさずカイラの≪分身≫がアールシュめがけて飛び出した。
「うわっ、凄い早くなってる!」
まさに弾丸のような勢いでアールシュに拳が届くが、寸でで触手によって拳は防がれた。
次にセスの≪分身≫が10本の剣を操り、シャム目掛けて飛び出した。しかしそれはアヤンの≪分身≫の弓矢攻撃で全て防がれ、剣は地面に落とされた。
「凄い、矢がてんでバラバラに飛んで撃ち落としたように見えたんだけど?」
「いくらなんでもそれは無理じゃ。ダミニの銃弾も加勢して撃ち落としておる」
「わお」
2丁拳銃をカッコよく構えたダミニの≪分身≫がウインクする。
アールシュの≪分身≫とニシャの≪分身≫は、仲間たちの援護や防御をしながら攻撃魔法で交戦していた。
「なんだか凄すぎる光景です、老師」
「まだまだ特訓が必要じゃが、この短期間でよくぞここまで成長出来ておる」
肩の上の老師は、とっても満足そうに髭をそよがせた。
ホント、凄い。アニメかゲームのような光景だよ…。
この頃、式典とかパーティーとかの作法や何やら難しいことが増えて、全然頭に入らなくてお手上げだったのだ。
覚えないと恥をかくのは私だけど、もうこんな面倒なことは止めて、アルジェン王子をどうぶっ殺すかみんなで計画いっぱい練ったほうがいい気がするよ。
アールシュの≪分身≫と一緒に中庭へ行くと、ソティラスたちとカルリトス老師、シャムが待っていた。
「同じ敷地内にいたのに、なんかみんな久しぶりだね~」
「お久しぶりです、姫様」
相変わらず可愛い顔で、嬉しそうにカイラが挨拶をしてくれた。
「元気そうでよかった。それに、なんだか顔つきが頼もしくなったよネ」
「えへへ」
アヤンが照れ臭そうに鼻の下を指で擦る。初めて出会ったときの弱弱しい印象はもうなかった。
「あたしも頑張ってます!」
「エライエライ!」
酷い扱いを受けていたニシャも、すっかり明るく元気になったみたい。
「では、皆≪分身≫を出すのじゃ」
私の肩の上に乗ったカルリトス老師が言うと、みんなの≪分身≫が影から立ち上がった。
ああ、見目麗しい≪分身≫たち。
若干一名除く。
「セスやっぱ見た目を変えようみんなと外見揃えようよ!!」
「うるさいぞ人間! わしゃこれでいいんじゃ!」
「ちィっ」
セスの説得敗北まくっている。
「そなたも粘るな」
「見た目大事」
セスとのやり取りを、いつもアールシュは笑いながら見ている。
同じ闇の異形でも、アールシュは話が判る。エライ、アールシュ!
「ところでね老師、前から思っていたんだけど」
「なんじゃ」
「こうしてソティラスと≪分身≫が揃っていると、呼び名に困るというか、ゴチャゴチャになって判りづらいというか…」
「そうか?」
「ジョブ名で呼ぼうとすると、ルドラとセス、アールシュとニシャはかぶるじゃん」
「ルドラの≪分身≫、とかでイイと思うがのう」
「≪分身≫にも名前を付けてあげると呼びやすいと思うんです!」
「そっちのほうが紛らわしいぞ…」
「ダメか」
太郎とか千代丸とか、和名をつけたらきっと区別つけやすいって思ってたんだけどなあ。私だけか。
「では、始めようかの」
セスとアールシュが敵役となり、それぞれの≪分身≫と本体とで敵が4人いる想定で模擬戦が始まった。
中庭の周囲は建物が吹っ飛ばないように結界が張られているので、みんな全力で力を奮えるように舞台は整えられていた。
シャムが私の代わりとなり、子供たちはシャムを守り抜くのが勝利の条件。
「俺に一発でも当たらないように頑張れガキども」
地面に寝転がってタバコをぷかぷかふかして、シャムはあくびをしながら言う。私の代役もっとマジメにヤレ。
「はいっ」
生真面目にカイラが返事をした。ホント好い子!
「ではいくぞ」
アールシュは両腕に黒い触手を生やし、ルドラとカイラの≪分身≫に攻撃を開始した。
ルドラの≪分身≫は6本の剣のうち、3本の剣を盾のようにして触手攻撃を防ぐ。すかさずカイラの≪分身≫がアールシュめがけて飛び出した。
「うわっ、凄い早くなってる!」
まさに弾丸のような勢いでアールシュに拳が届くが、寸でで触手によって拳は防がれた。
次にセスの≪分身≫が10本の剣を操り、シャム目掛けて飛び出した。しかしそれはアヤンの≪分身≫の弓矢攻撃で全て防がれ、剣は地面に落とされた。
「凄い、矢がてんでバラバラに飛んで撃ち落としたように見えたんだけど?」
「いくらなんでもそれは無理じゃ。ダミニの銃弾も加勢して撃ち落としておる」
「わお」
2丁拳銃をカッコよく構えたダミニの≪分身≫がウインクする。
アールシュの≪分身≫とニシャの≪分身≫は、仲間たちの援護や防御をしながら攻撃魔法で交戦していた。
「なんだか凄すぎる光景です、老師」
「まだまだ特訓が必要じゃが、この短期間でよくぞここまで成長出来ておる」
肩の上の老師は、とっても満足そうに髭をそよがせた。
ホント、凄い。アニメかゲームのような光景だよ…。
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