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26話:シャムの出自

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「ねえアールシュ、シャムってさ、どんな奴なの?」
「どんな、とは?」
 不思議そうに訊き返されて、思わず言葉に詰まる。
 シャムのことを知ってるような口ぶりだから、とっても訊きたくてしょうがない。

「あいつってさ、見た目ズボラだし頼りなさそうだけど、格闘出来たり素早かったり、なんか人間離れしたような動きするからさ」

 ふいッと視線をそらし、アールシュの≪分身トイネン≫はちょっと考え込んだ。話していいのか少し悩んでいる様子だ。

「あやつは、我々闇の異形と呼ばれる者と人間の女の混血なのだ」
「なぬ」
「バークティ妃の母親の血縁の女で、あれもだいぶ苦労していた」

 ななななナント! シャムとシャンティって親戚筋になるのか!

「本来我々は人間とは交わらん。だが、稀に人間に情を移す者もいて、あまり数は多くないが混血児が誕生することもある」
「うへえ…」
 シャムの強さの秘密はそれなのか。

 うううん、私がこの秘密を知ったこと、シャム怒るだろうなあ。

「まあ、混血であること自体はさほど気にしてはいないようだ。子供の時分にはそれなりにごたついたこともあったようだが」
「え、そうなの?」
「深刻になるほどではなかったようだ。この館の者たちはみな知っていることだしな」
「そ、そうなんだ…」
 マドゥを見ると、目配せで肯定した。

「じゃ、じゃあさ、その……シャンティ王女がどんな事故死だったのか、それにどうシャムが関わっていたのか、それもみんな知ってたりするの?」
 アールシュの≪分身トイネン≫とマドゥは顔を見合わせ、そして黙り込んだ。
 やっぱみんな知ってるんだね。
 アールシュの≪分身トイネン≫をジロリと睨むと、困ったような表情をされてしまった。

「どうしても知りたければ、直接シャムに訊くがいいだろう。他人があれこれ言うことではないしな」
 ごもっともだけど、それが出来ないから訊いてるのに。
 直接訊くしかないのか。


***


 自ら重い課題を背負いこんでしまったことにゲッソリする。
 シャムにあんな言い方されたら知りたいじゃん。それにどうせ護身術習うなら、強いシャムに教わったほうがイイもの。
 思えば私って、昔から友達に打ち明け話とか悩み相談とかされたことないんだよね。話しづらかったのか、話しても無駄だと思われていたのか。どんだけお気楽能天気にみられていたんだろう。普通は誰にでも一つや二つ、そういう相談されるとか経験あるものよね。
 経験なさすぎて、今更ながらニューショックに打ちのめされた。でも、凹んでてもしょうがない。スニタ先生の授業から解放される午後、思い切ってシャムに訊いてみようと決意をしたのに。

「今日から私の授業は午後も続きますので、頑張りましょうねシャンティ様」
「…な」
 なんですとおおおお!?
 表情と心の中で力いっぱいエコーする。

「無事ソティラスも揃ったとのことで、午後の時間を私の授業に回していただけることになりました。残り3か月、キッチリみっちり叩き込んで差し上げますわ!」

 ソティラスになったあの子たちは、訓練を積み重ねないといけない。それをしっかり指導していくためにカルリトス老師せんせいは時間を割く。
 私はソティラスたちにしてあげられることはないし、午後はもう空き時間になってしまった。当然スニタ先生の授業を割り込ませるのは当たり前で。

 平和で自由な午後よ、サヨウナラ。

 ていうか、いつシャムに訊けばいいの!
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