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13話:奴隷という身分
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愛のムチと金切り声を乱舞させるスニタ先生の姿勢の授業、相変わらず進展が見られなくて先生ヒートアップ。
それでも初めてやらされた日よりかは、多少、微々たる進化はある、はず。
そもそも16年身につけてきた姿勢の悪さが、たった数日で治るほど世の中甘くないんだぞ。
とか思っていたら、埒があかないと思ったのか試練はさらに厳しさを増した。
「いいでしょう、講義の授業と姿勢を正す授業をミックスさせましょう。時間は効率よく使わなくては」
「…なっ」
かくして、椅子に座ることなく立ったまま、頭に分厚い本を乗せて講義を聴く羽目になった。
「本日はこの国の構成についてお話をしておきましょう」
「は…い…」
頭に本を乗せ、立ったままの受講に。
ムチウチになりそうです、先生。
「まずイリスアスール王国は、既存の20領と隷属させた小国7つを加えた規模を誇る大国です。
20領には各領主を置き、中でも主要な領には側室の王妃様たちが領主となり派遣されています。ここカリオフィラス領にはバークティ様が。
小国には元の王がそれぞれ治める形をとっていますが、身分的には奴隷と同じです」
「王様なのに奴隷なの…」
「所詮は征服され支配下に置かれ、奴隷として成り下がった国々です。イリスアスール王国から見れば、その国全てが奴隷と同じなのです」
バークティ妃がここにいたら、殺されそうなことをきっぱりと言い切ったよ先生。
「唯一フェレイロ王国だけは、ハンシカ陛下が后であらせられるので、友好国としての体裁を取っておられます。もっとも、征服された国の一つでもあるので、イリスアスール王国からしてみると奴隷と変わりはないのですが」
(うわあ…すげー皮肉…)
これだけ皮肉るってことは、そういえば先生はどこの出身なんだろう。
「先生、先生の出身はこの国ですか?」
「いいえ、ミラージェス王国です」
「なぬ」
ついさっき、身もふたもない言い方してませんでしたか先生!
「この館で働いている者たちは、全てミラージェス王国の出身者で統一されているのです。そうでなければ、シャンティ様の秘密が王にバレてしまいますからね」
「ああ、そうなんだ…」
「バークティ様の計画は、我々ミラージェス王国に生まれた者全ての悲願! それがたとえ友好国という名ばかりの扱いでも、奴隷国よりはるかにマシなのです」
スニタ先生の鋭い眼差しが、痛い程射貫いてくる。
私が世継ぎの座を勝ち取って、奴隷の身分から解放されることを切に願ってる。
あんまり実感していなかったけど、奴隷扱いの国出身だと、もともとイリスアスール王国の人たちからは奴隷のように見られちゃってるってことなのね。
奴隷であるカイラは私たちに平伏していたけど、でも結局はカイラと同じ奴隷身分なんだ。バークティ妃がイリスアスール王の側室だから、カリオフィラス領の領主だから表立っては奴隷のようには見られないけど。
王の子供である私も、半分は奴隷の子でもあるんだ。
奴隷がどんなものか、どんなふうに扱われるのか私は知らないし、本当のコトは何もわからない。
私の祖国日本も、昔大きな戦争で負けた。でも、あんな風に奴隷扱いされたことはないし、今では戦争に負けたんだって実感しないくらい平和だ。
時間が経てば変わるものじゃないのかな。いつまでも奴隷のままなんて、なんか悲しい。
「ねえ先生、私がいつか王になったら、奴隷身分ってなくすことできるかな?」
「どうでしょうか…。奴隷を使えば賃金が発生しません。それゆえタダ同然の力で色々なことができています。最低限の食糧を与えるだけで、便利な労働力が得られていますから。庶民層ですら奴隷を使っています。なくすことは一代では難しいと思いますよ」
「デスヨネ…」
ならせめて、奴隷たちが上の階級に対して平伏せず、普通に話が出来るようにするくらいはやれないかなあ。
「シャンティ様、まずは世継ぎとなることを第一に考えなさいませ。今のままでは、王の子供の一人という身分です。世継ぎとなれば、思うことも色々実行する機会が与えられます」
「うん、そうだね。まずは打倒アルジェン・ルディヤーナだね!」
「そのためにも身につけていただかないといけないものが山積しております。ほら、姿勢が崩れてきていますよ!」
「はいい…」
それでも初めてやらされた日よりかは、多少、微々たる進化はある、はず。
そもそも16年身につけてきた姿勢の悪さが、たった数日で治るほど世の中甘くないんだぞ。
とか思っていたら、埒があかないと思ったのか試練はさらに厳しさを増した。
「いいでしょう、講義の授業と姿勢を正す授業をミックスさせましょう。時間は効率よく使わなくては」
「…なっ」
かくして、椅子に座ることなく立ったまま、頭に分厚い本を乗せて講義を聴く羽目になった。
「本日はこの国の構成についてお話をしておきましょう」
「は…い…」
頭に本を乗せ、立ったままの受講に。
ムチウチになりそうです、先生。
「まずイリスアスール王国は、既存の20領と隷属させた小国7つを加えた規模を誇る大国です。
20領には各領主を置き、中でも主要な領には側室の王妃様たちが領主となり派遣されています。ここカリオフィラス領にはバークティ様が。
小国には元の王がそれぞれ治める形をとっていますが、身分的には奴隷と同じです」
「王様なのに奴隷なの…」
「所詮は征服され支配下に置かれ、奴隷として成り下がった国々です。イリスアスール王国から見れば、その国全てが奴隷と同じなのです」
バークティ妃がここにいたら、殺されそうなことをきっぱりと言い切ったよ先生。
「唯一フェレイロ王国だけは、ハンシカ陛下が后であらせられるので、友好国としての体裁を取っておられます。もっとも、征服された国の一つでもあるので、イリスアスール王国からしてみると奴隷と変わりはないのですが」
(うわあ…すげー皮肉…)
これだけ皮肉るってことは、そういえば先生はどこの出身なんだろう。
「先生、先生の出身はこの国ですか?」
「いいえ、ミラージェス王国です」
「なぬ」
ついさっき、身もふたもない言い方してませんでしたか先生!
「この館で働いている者たちは、全てミラージェス王国の出身者で統一されているのです。そうでなければ、シャンティ様の秘密が王にバレてしまいますからね」
「ああ、そうなんだ…」
「バークティ様の計画は、我々ミラージェス王国に生まれた者全ての悲願! それがたとえ友好国という名ばかりの扱いでも、奴隷国よりはるかにマシなのです」
スニタ先生の鋭い眼差しが、痛い程射貫いてくる。
私が世継ぎの座を勝ち取って、奴隷の身分から解放されることを切に願ってる。
あんまり実感していなかったけど、奴隷扱いの国出身だと、もともとイリスアスール王国の人たちからは奴隷のように見られちゃってるってことなのね。
奴隷であるカイラは私たちに平伏していたけど、でも結局はカイラと同じ奴隷身分なんだ。バークティ妃がイリスアスール王の側室だから、カリオフィラス領の領主だから表立っては奴隷のようには見られないけど。
王の子供である私も、半分は奴隷の子でもあるんだ。
奴隷がどんなものか、どんなふうに扱われるのか私は知らないし、本当のコトは何もわからない。
私の祖国日本も、昔大きな戦争で負けた。でも、あんな風に奴隷扱いされたことはないし、今では戦争に負けたんだって実感しないくらい平和だ。
時間が経てば変わるものじゃないのかな。いつまでも奴隷のままなんて、なんか悲しい。
「ねえ先生、私がいつか王になったら、奴隷身分ってなくすことできるかな?」
「どうでしょうか…。奴隷を使えば賃金が発生しません。それゆえタダ同然の力で色々なことができています。最低限の食糧を与えるだけで、便利な労働力が得られていますから。庶民層ですら奴隷を使っています。なくすことは一代では難しいと思いますよ」
「デスヨネ…」
ならせめて、奴隷たちが上の階級に対して平伏せず、普通に話が出来るようにするくらいはやれないかなあ。
「シャンティ様、まずは世継ぎとなることを第一に考えなさいませ。今のままでは、王の子供の一人という身分です。世継ぎとなれば、思うことも色々実行する機会が与えられます」
「うん、そうだね。まずは打倒アルジェン・ルディヤーナだね!」
「そのためにも身につけていただかないといけないものが山積しております。ほら、姿勢が崩れてきていますよ!」
「はいい…」
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