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反撃の行進曲
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「今度はここから追い出して仲間外れにする気ね! ひどい、ひどいわっ! 悪魔みたいにひどい人っ!」
手で顔を覆って、わんわんと泣き出してカルミアが喚き散らす。それを見てイミテ王子が、憤怒の形相で叫びを上げる。
「エルーシャ! カルミアを侮辱するな!」
「「「「そうだそうだ!」」」」
イミテ王子の声に追従する取り巻き達。
「愚かですわね」
首を振り、エルーシャは呟く。自分から紐無しバンジージャンプをする彼等を、エルーシャが見捨てた瞬間だった。
「貴様ああああ!! 王子っ、抜刀の許可を!」
真っ先に血迷ったのは、カルステンだった。直情型ナンバーワンらしい行動力だ。
「殺れカルステン!」
次に血迷ったのは、イミテ王子である。
「カルステンが命じる、炎の剣よ出でよ!」
右手に大きな刃を持つ大剣の炎の魔剣を作り出すと、カルステンは駆け出しエルーシャに一直線に斬りかかって来た。
「「「「ーーーーーーッ!?」」」」
周囲の人達の悲鳴と、困惑と、驚愕の叫びが上がる。
「お嬢様!」
反撃しようと構えたファルクスをすっと右手を動かして制止して、そのままその手を自身の顔の辺りまで上げる。
「天空神盾展開」
エルーシャが一言そう言うと、翳した手のひらを中心に、ブオンッと透明な壁が出現する。二メートルほどの高さと横幅幅も同じくらいの青い壁は、真四角とは言えず四隅は丸みを帯びていて、下部部分は少し尖っている。表面は微細な紋様が浮かんでいる。
近くで見ると壁? と思ってもおかしくないが、離れているものにはそれが盾である事が理解できた。
ガツン! と鈍い音がしたが、それだけだった。炎の魔剣は溶かす事も焦がす事もなかった。盾は無傷で、その一撃を防いでいた。
透明な盾の向こう側で、眼を見開き唖然としたカルステンの表情が、エルーシャにははっきりと見えた。
「なん……だと?!」
少しの間頭の中が真っ白になって、次いで羞恥と恥辱がカルステンを襲ったのが、エルーシャには理解出来た。真正面からその色を変える様相を見れば、はっきりと手に取る様に分かるのだから。
属性魔法が一切使えない、誰よりも劣る義妹だと信じて疑わなかったその者に、自身の魔法剣が止められてしまっている。
思いもよらない展開に皆が声を失って、しん……とホールは静寂に満ちる。
驚いていないのは、盾を出した本人のエルーシャと、従者のファルクスの二人だけだった。
手で顔を覆って、わんわんと泣き出してカルミアが喚き散らす。それを見てイミテ王子が、憤怒の形相で叫びを上げる。
「エルーシャ! カルミアを侮辱するな!」
「「「「そうだそうだ!」」」」
イミテ王子の声に追従する取り巻き達。
「愚かですわね」
首を振り、エルーシャは呟く。自分から紐無しバンジージャンプをする彼等を、エルーシャが見捨てた瞬間だった。
「貴様ああああ!! 王子っ、抜刀の許可を!」
真っ先に血迷ったのは、カルステンだった。直情型ナンバーワンらしい行動力だ。
「殺れカルステン!」
次に血迷ったのは、イミテ王子である。
「カルステンが命じる、炎の剣よ出でよ!」
右手に大きな刃を持つ大剣の炎の魔剣を作り出すと、カルステンは駆け出しエルーシャに一直線に斬りかかって来た。
「「「「ーーーーーーッ!?」」」」
周囲の人達の悲鳴と、困惑と、驚愕の叫びが上がる。
「お嬢様!」
反撃しようと構えたファルクスをすっと右手を動かして制止して、そのままその手を自身の顔の辺りまで上げる。
「天空神盾展開」
エルーシャが一言そう言うと、翳した手のひらを中心に、ブオンッと透明な壁が出現する。二メートルほどの高さと横幅幅も同じくらいの青い壁は、真四角とは言えず四隅は丸みを帯びていて、下部部分は少し尖っている。表面は微細な紋様が浮かんでいる。
近くで見ると壁? と思ってもおかしくないが、離れているものにはそれが盾である事が理解できた。
ガツン! と鈍い音がしたが、それだけだった。炎の魔剣は溶かす事も焦がす事もなかった。盾は無傷で、その一撃を防いでいた。
透明な盾の向こう側で、眼を見開き唖然としたカルステンの表情が、エルーシャにははっきりと見えた。
「なん……だと?!」
少しの間頭の中が真っ白になって、次いで羞恥と恥辱がカルステンを襲ったのが、エルーシャには理解出来た。真正面からその色を変える様相を見れば、はっきりと手に取る様に分かるのだから。
属性魔法が一切使えない、誰よりも劣る義妹だと信じて疑わなかったその者に、自身の魔法剣が止められてしまっている。
思いもよらない展開に皆が声を失って、しん……とホールは静寂に満ちる。
驚いていないのは、盾を出した本人のエルーシャと、従者のファルクスの二人だけだった。
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