39 / 93
第3章 恋は刹那の嵐のようで
11.
しおりを挟む
はじめてのときよりも引きつっている気がする。いつもと違うきつさに怯えて、環和は少し委縮したかもしれない。滑らかさはなく、やわらかい粘膜が響生のオスに張りついてひどい摩擦を生んでいる。そうなれば快感から遠ざかり、ぬめりかけていたそこも乾いていくような、はじめての感触に見舞われる。かろうじて、オスが環和の唾液に塗れていたことが緩和剤になっているけれど、それも尽きそうな気配だ。
くっ。
環和は息を詰めていて、それなら聞こえた呻き声は響生のものだ。目を開けると、環和に覆いかぶさった響生の顔が真上にあった。
果てそうなとき、響生はいまみたいに耐えきれないといった様で呻く。陶酔した、まるで無防備な面持ちになるけれど、いまは違う。快楽からきている表情ではないように感じた。環和がそうであるように摩擦が痛むのか、それとも同じであることを求める環和の幻想なのか。
少なくとも環和への気遣いは皆無で、響生はがむしゃらに腰を前後させる。環和は手を上げて響生の眉間に触れた。両手の中指の腹で撫で、すっと鼻を伝ってくちびるへと滑らせる。口が開いたかと思うと、指先が咥えられた。甘噛みして、それから吸いつかれた。
あっ。
指先に甘い痺れを感じ、そこに性感があるとは思えないのに、体内を伝っておなかの奥に届いた。響生は指先に舌を絡め、また吸いつくと、環和は躰をよじった。すると、いままで引きつったきつさしかなかった繋がりが、快感を呼び覚ました。
あ、あっ……。
指先への吸着が繰り返されるたびに環和なの口から嬌声が漏れ――
ぅ……っ。
指を咥えたまま響生が呻く。それはのぼせたような面持ちで、熱い吐息が指先に纏わりつく。律動が一段と激しくなり、そうして環和の指先を放した一瞬後、響生は中心を密着させてぶるっと腰をふるわせた。
躰の奥がくすぐられ、熱く濡れそぼつ。はじめてのじかの感触に環和のお尻までふるえてしまう。
いつもとは反対に環和を置いてけぼりにして、一方的に快楽を放った響生はそれで終わるかと思ったのに、呼吸が荒くも少し落ち着いた頃、腰を引きかけ、そしてまた突いてきた。
あっ。
ぐちゅっと音が立ったのは、響生が放った慾のしるしがもたらしているに違いなく、それは環和の中を滑らかにして快感を覚醒させた。いったんは力尽きた響生の慾もまたオス化している。動いているうちに環和の中を満たして、余すところなく弱点が摩撫され、感度は上昇していく一方だ。
奥を突かれれば体内が痙攣して、出ていく寸前まで抜けだせば、引き止めるように腰が浮く。全身にわたり脱力感に似た快感に塗れ、環和の躰は無防備に開いた。息づいているのは響生で埋め尽くされた中心だけだった。
環和の中で発生する快楽音は恥ずかしいほど大きくなって、耳をも侵す。響生の慾の痕だからとはもう云い逃れができない。体内ではおさまりきれず、溢れだしているに違いなく、入り口はしとどに濡れた感触がある。
「響生っ、も……イっちゃ……ぅ」
環和の背中がのけ反った。
「くっ……隙だらけ、だ。それで……大丈夫、なのか」
響生は息を切らしながら、責めるように吐く。まるで果てることを咎めているようで、けれどそれとは裏腹に響生は律動を激しくしていく。スピードを増すのではなく、どこもかしこも刺激するように腰をうごめかして最奥まで穿ってくる。
「ぃ、やぁっ」
快楽と引き替えに思考力が融けだしそうな喪失感に襲われた。
響生がそれを拒絶と受けとるわけはなく――受けとったとしても強硬ないまの響生がやめるはずはなく、環和を容赦なく追いつめた。
「あ、あ、あ、……っぁあっ、だ、めっ……――」
びくっと腰を跳ねちらし、巻きこまれた響生が二度めの唸り声を放つ。熱く迸る慾のしるしは快楽に浸かった躰をさらに嬲るようで、環和は嗚咽を漏らした。
「環和」
響生は環和の上に伏せ、ふたりの躰をぴたりと密着させた。荒い呼吸がぶつかり合って、それも快楽を持続させる。すぎる快楽はやはり苦痛と紙一重だ。環和の嗚咽がひどくなり、響生はくちびるの端に口づけてなだめるように頭に手を添えた。頬を合わせ、包みこむようなしぐさは守られているようでもあった。
ぴくりとした反応はまだ繋がっているせいで、なかなかおさまらない。ただ、だんだんと快楽から満ち足りた感覚へと変化していった。
環和はやがて深く、長い息をついた。
「響生……響生が好き」
云いたくてたまらなかったことをやっと素直に云えて、環和はくすっと独り笑う。
最初に告白に答えたのはため息だった。
「懲りないな。男にいいようにされて付け込まれる」
「響生は悪い人じゃないから。それだけはわかってる」
おなかが揺れたのは笑ったのか、耳もとにも短い吐息が連続する。くすぐったさとも快感とも見紛う感覚に環和は喘いだ。
それと入れ替わりに、今度は長い吐息がひとつこぼれ、そうして――
「ガキの頃、川にさらわれたことがある」
環和は想像もしなかった告白に目を見開いた。
頬を合わせていてその表情を見ることはかなわなかったけれど、響生の声は淡々としていながら、強靱なはずの躰が怯えたようにふるえた。
くっ。
環和は息を詰めていて、それなら聞こえた呻き声は響生のものだ。目を開けると、環和に覆いかぶさった響生の顔が真上にあった。
果てそうなとき、響生はいまみたいに耐えきれないといった様で呻く。陶酔した、まるで無防備な面持ちになるけれど、いまは違う。快楽からきている表情ではないように感じた。環和がそうであるように摩擦が痛むのか、それとも同じであることを求める環和の幻想なのか。
少なくとも環和への気遣いは皆無で、響生はがむしゃらに腰を前後させる。環和は手を上げて響生の眉間に触れた。両手の中指の腹で撫で、すっと鼻を伝ってくちびるへと滑らせる。口が開いたかと思うと、指先が咥えられた。甘噛みして、それから吸いつかれた。
あっ。
指先に甘い痺れを感じ、そこに性感があるとは思えないのに、体内を伝っておなかの奥に届いた。響生は指先に舌を絡め、また吸いつくと、環和は躰をよじった。すると、いままで引きつったきつさしかなかった繋がりが、快感を呼び覚ました。
あ、あっ……。
指先への吸着が繰り返されるたびに環和なの口から嬌声が漏れ――
ぅ……っ。
指を咥えたまま響生が呻く。それはのぼせたような面持ちで、熱い吐息が指先に纏わりつく。律動が一段と激しくなり、そうして環和の指先を放した一瞬後、響生は中心を密着させてぶるっと腰をふるわせた。
躰の奥がくすぐられ、熱く濡れそぼつ。はじめてのじかの感触に環和のお尻までふるえてしまう。
いつもとは反対に環和を置いてけぼりにして、一方的に快楽を放った響生はそれで終わるかと思ったのに、呼吸が荒くも少し落ち着いた頃、腰を引きかけ、そしてまた突いてきた。
あっ。
ぐちゅっと音が立ったのは、響生が放った慾のしるしがもたらしているに違いなく、それは環和の中を滑らかにして快感を覚醒させた。いったんは力尽きた響生の慾もまたオス化している。動いているうちに環和の中を満たして、余すところなく弱点が摩撫され、感度は上昇していく一方だ。
奥を突かれれば体内が痙攣して、出ていく寸前まで抜けだせば、引き止めるように腰が浮く。全身にわたり脱力感に似た快感に塗れ、環和の躰は無防備に開いた。息づいているのは響生で埋め尽くされた中心だけだった。
環和の中で発生する快楽音は恥ずかしいほど大きくなって、耳をも侵す。響生の慾の痕だからとはもう云い逃れができない。体内ではおさまりきれず、溢れだしているに違いなく、入り口はしとどに濡れた感触がある。
「響生っ、も……イっちゃ……ぅ」
環和の背中がのけ反った。
「くっ……隙だらけ、だ。それで……大丈夫、なのか」
響生は息を切らしながら、責めるように吐く。まるで果てることを咎めているようで、けれどそれとは裏腹に響生は律動を激しくしていく。スピードを増すのではなく、どこもかしこも刺激するように腰をうごめかして最奥まで穿ってくる。
「ぃ、やぁっ」
快楽と引き替えに思考力が融けだしそうな喪失感に襲われた。
響生がそれを拒絶と受けとるわけはなく――受けとったとしても強硬ないまの響生がやめるはずはなく、環和を容赦なく追いつめた。
「あ、あ、あ、……っぁあっ、だ、めっ……――」
びくっと腰を跳ねちらし、巻きこまれた響生が二度めの唸り声を放つ。熱く迸る慾のしるしは快楽に浸かった躰をさらに嬲るようで、環和は嗚咽を漏らした。
「環和」
響生は環和の上に伏せ、ふたりの躰をぴたりと密着させた。荒い呼吸がぶつかり合って、それも快楽を持続させる。すぎる快楽はやはり苦痛と紙一重だ。環和の嗚咽がひどくなり、響生はくちびるの端に口づけてなだめるように頭に手を添えた。頬を合わせ、包みこむようなしぐさは守られているようでもあった。
ぴくりとした反応はまだ繋がっているせいで、なかなかおさまらない。ただ、だんだんと快楽から満ち足りた感覚へと変化していった。
環和はやがて深く、長い息をついた。
「響生……響生が好き」
云いたくてたまらなかったことをやっと素直に云えて、環和はくすっと独り笑う。
最初に告白に答えたのはため息だった。
「懲りないな。男にいいようにされて付け込まれる」
「響生は悪い人じゃないから。それだけはわかってる」
おなかが揺れたのは笑ったのか、耳もとにも短い吐息が連続する。くすぐったさとも快感とも見紛う感覚に環和は喘いだ。
それと入れ替わりに、今度は長い吐息がひとつこぼれ、そうして――
「ガキの頃、川にさらわれたことがある」
環和は想像もしなかった告白に目を見開いた。
頬を合わせていてその表情を見ることはかなわなかったけれど、響生の声は淡々としていながら、強靱なはずの躰が怯えたようにふるえた。
0
お気に入りに追加
109
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
隠れ御曹司の手加減なしの独占溺愛
冬野まゆ
恋愛
老舗ホテルのブライダル部門で、チーフとして働く二十七歳の香奈恵。ある日、仕事でピンチに陥った彼女は、一日だけ恋人のフリをするという条件で、有能な年上の部下・雅之に助けてもらう。ところが約束の日、香奈恵の前に現れたのは普段の冴えない彼とは似ても似つかない、甘く色気のある極上イケメン! 突如本性を露わにした彼は、なんと自分の両親の前で香奈恵にプロポーズした挙句、あれよあれよと結婚前提の恋人になってしまい――!? 「誰よりも大事にするから、俺と結婚してくれ」恋に不慣れな不器用OLと身分を隠したハイスペック御曹司の、問答無用な下克上ラブ!
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる