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第1章 Cross-Border~越境~

13.

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 躰全体が冷たさに総毛立ち、危うく爆ぜそうに太くなっていた中心は一気に委縮した。それでも祐仁は颯天のものを離さず、冷たさを塗りたくる。桃の香りが鼻腔を撫でていく。冷たいという感覚すら麻痺しそうなのをかろうじて防いでいるのは、シャーベットの膜越しに感じる祐仁の手のひらの温度だ。
 敏感な場所で、触られている感触は確かにあり、颯天はその触られているということに意識が集中しておかしな気分になっていく。
 くくっと喉の奥で笑う声がした。
「腰をびくびくさせて卑猥だ。さすがに萎えたけど、颯天はそれでも感じてるんだな。だんだん太くなってる」
 再び含み笑った祐仁はそこから手を離し、今度は颯天の胸に両手をつく。
 ひ、ぅっ……。
 中心が覆われたときのショックよりも軽減されていたが、やはり冷たく、ヘンな声が出そうになって颯天は慌てて下唇を咬んだ。
 祐仁の手がマッサージするように胸を摩擦する。冷たさに慣れると手のひらが乳首を転がす刺激が鮮明になる。部室で襲われたとき、こんな場所がここまで鋭い神経を持っているなど思ったこともなかったが、いままた快楽は簡単に引きだされた。心なしか、硬く大きく尖ったようにも感じる。
 ぁ……くっ。
 声が出そうになり、ぎりぎりのところで下唇を咬んで堪えた。
 すると、上唇に祐仁の吐息が触れる。
「颯天、さっきキスでどうなった? 熱くて蕩けそうだっただろう」
 そう話しかける祐仁の吐息がふたりのくちびるの間で熱くこもる。その間も、手のひらは円を描くように胸を撫でまわしている。
「知らないっ」
 快楽を振り払うように叫び、けれど振り払うことはかなわず、颯天は歯を喰い縛る。
「いい反応だ。おまえはおれを見誤っている。逆らうほど苛めたくなる。おれはそういう性分だ」
 笑壷に入った様子で云い、祐仁は颯天の前で腰をおろすと膝立ちをした。颯天の脇腹に手を当てて距離を詰める。胸もとに顔を寄せ、祐仁は乳首をぺろりと舐めた。
 あぅっ。
 椅子が音を立てて動くほど、堪えきれなかった声をあげながら颯天はびくりと跳ねた。はじめてというだけの理由では足りない、鋭い快感が一瞬の間に躰を突き抜けた。
「やめ……う、ああっ」
 止めかけた言葉は嬌声にすり替わった。
 祐仁は乳首を咥え、そうしたまま舌で自在に弾く。祐仁が支えていなかったら椅子ごとひっくり返っていたかもしれない。それほどの快楽に颯天はのけ反った。そのしぐさは快楽を避けるどころか、どうぞと云わんばかりに胸を突きだすことになって、祐仁に差しだしているのとかわらない。わかっていながらどうしようもなかった。
「本番はこれからだ。いまからどうなるんだろうな。楽しみだ」
 いったん顔を上げた祐仁は興じた笑みを漏らして囁く。颯天は顔を背けた。
 そうして、脇腹から放れていった手は颯天の勢いづいてきたオスをつかんだ。
 くぅっ。
 見なくても触れられたことで自分がどんな状態かは察せられた。祐仁の手は温もりを取り戻しつつあり、冷たいという感触はなかった。それとも自分が冷たすぎるのか。
「颯天」
 我慢することに気を取られ、颯天は呼びかける声に応じてしまった。
 祐仁を見下ろしたと同時に、そのくちびるが颯天の中心に近づきながら開いていく様が視界にクローズアップされた。
「嫌だっ」
 拒絶を叫んだのも虚しく、直後。
「あ、あ、ぅっくぅ……ふっぁああああ――」
 祐仁の口の中は灼熱といってもよかった。ちあがりかけていたオスがびくんと一気に膨張した。くちびるがくびれた部分に嵌まり、先端を舌が這う。
「ああっ、熱いっ、あぅっ、あああ……っ」
 颯天は身をよじって逃れることもできず、祐仁は云ったとおり苛むように刺激を続けた。有り余るほどの快感に颯天の理性は耐えきれず、喘ぐ声を止められない。
 口に含んだまま舌は先端をぐるぐると這いまわり、熱はたまらない疼きに変わっていく。ぬちゃぬちゃとした音はシャーベットと祐仁の唾液のせいか、颯天の耳を侵して性感を煽る。そうして、ある場所が舌先でつつかれたとたん、蕩けていくような感覚がした。
「あ、だめだっ、そこは……っ」
 そう云ったことが間違いだった。弱点を晒したようなもので、祐仁はまるでそこを貫こうとするかのように舌先を硬く尖らせてきた。ねじ込むように弄られ、その孔口が解放を求めて自ら開いていくような錯覚に陥り、蕩ける感覚は現実味を増して次第に大きくなっていく。
「朔間さっ、ああっ……嫌だっ……あふっ、漏れ、るっ」
 颯天は首を激しく振って、上昇していく感度を紛らそうとした。だが、所詮、無駄な抵抗だ。拘束され、ましてやはじめてのことだ、颯天には快感の逃し方も耐え方もわからない。
 祐仁は孔口を舌先で押し開くようにしながら激しく吸着した。いや、実際は激しくなかったのかもしれない。ちょっとした刺激で颯天は快感に翻弄される。吸いだされるような感覚には耐えきれなかった。
「朔間さ、離れっ、て……ふ、ぁっ……くださっ……ぃっ」
 このままだと祐仁の口の中に放ってしまう。そんな背徳感は、耐えなければならない、もしくは逝きたくないという拒絶と逆の効果をもたらし、よけいに颯天を昂ぶらせた。
 祐仁が離れていく気配はない。それどころか深く口の中にオスを含んで、ねっとりとした吸着音を立てながら顔を上げていきながらくちびるの裏で摩擦を引き起こす。裏筋を親指で摩撫され、孔口に集中して吸いつかれた刹那。
「あ――出るっ」
 びくんと腰が飛び跳ねた。せきが切られるまでの一瞬、ふわりと躰全体が心地よくくるまれて、伴い、意識までもが浮遊した。直後、爆ぜる快楽に腰が何度も浮いては落ちるということを繰り返した。
 カタカタと颯天が椅子を揺する音はやむことはない。性遊戯はそれで終わりではなかった。
「う、わああっ……も、やめて……ああっ……やめ……くだ、さ……あああっ」
 まるで爆発するように快楽を放つ間、その果てに囚われていたが、収束していくうちに続けられている刺激に意識が移った。颯天が放ったものを祐仁は飲み下したのか、まだ足りないといったように吸引している。
 何度となく自慰はしてきたが、一度逝けば性欲は引いていく。それがいま、また急激に押し寄せていた。
 祐仁は手を上下させて扱きながら、顔の角度を変えて先端を舐めまわす。舌は孔口で痙攣したようにうごめき、颯天の腰はびくびくしておさまることがなく砕けそうな怖れを抱いた。放つ嬌声は叫び声と紛うようで、体内から漏れだすような感覚が大きくなっていった。
「い、やだっ……」
 さっきとは違う。そんな漠然とした、味わったことのない感覚が生まれている。祐仁が拒絶を聞くはずもなく、無慈悲に颯天は追い詰められていく。
 ひどい吸着音を立てながら祐仁は顔を離した。それに誘導されて体内から管を通って慾の証しが迸る直前、孔口が人差し指の腹で引っ掻くようにいびられた。
「くぅぁああああ――っ」
 白濁した粘液が孔口から飛び散り、それを押しのけるようにしながら水鉄砲さながらに淫水が勢いよく迸った。
 それがなんなのか、快楽は陶酔するものでありつつ、つらさと裏表だということを颯天は教えこまれた。
「颯天、おれのものになれ」
 朦朧もうろうとして息が絶え絶えでありながら、颯天は無自覚に首を横に振った。その無意味な抵抗に祐仁はくつくつと笑う。颯天は祐仁を虚ろに見、腰が抜けたような脱力感に襲われながら、祐仁に逝かされたことを受けとめていた。
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