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epilogue ラリーレイド~走破~

2.

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 精を放ったあとも祐仁のオスはくたびれきったこともなく、触れればまたすぐに復活しそうに見えた。どちらが多く逝けるか競争させられたときのことを思えば、祐仁を快楽の限界まで導くには程遠い。
 颯天はオスの先端部分をつかみ、孔口を親指の腹で撫でた。とたん、祐仁はびくっと躰を波打たせて唸った。祐仁は颯天の目を捉え、けれど、睨みつけるほどの気力は見えない。簡単に果ててしまったことでプライドを手放したのかもしれない。揉みこんでいるうちに祐仁の口から熱っぽい吐息があがり始め、孔口からはまた蜜が出てきた。
 颯天はオスを放すと、祐仁の腹部に散った蜜を右の指先に塗す。
「颯天、ネクタイを、ほどけ」
 命令するも喘ぎながらで強制力に欠ける。ひょっとしたら颯天の意図を読みとっているのだろう。祐仁はどこか注意深くして、息を詰めているようでもあった。
「嫌だ」
 颯天は身を乗りだしながら左手をベッドに着き、祐仁を真上から見下ろした。のぼせたようでありながらその双眸の奥には意思がひそんでいる。なんだろう。
「何をするつもりだ」
「おれはいつも抱かれるだけだ。たまには抱かせてもらう」
 さっきまで敬語を使っていたのは、部下にやられるという屈辱を与えて祐仁の颯天に対するプライドを無効にするため、それをやめたのは対等になるためだ。従順であることに変わりはないが、命令に従っているのではなく、あくまで颯天の自由意志のもと祐仁に尽くすことを示す。
 清道と緋咲の会話を――永礼が云う痴話げんかを聞きながら、颯天は祐仁もまた孤独だということに思い至った。再会してすぐ、『まだガキのままか』と云った祐仁の冷ややかさがそれを裏付けている。春馬に嵌められて、それからどんな心境のもとフィクサーまで伸しあがったのか、その過程で祐仁がますます孤高となったことは確かだ。
「どういうつもりだ」
 颯天はゆっくりと顔をおろして、ふたりの距離を近づけた。間近で見上げてくる、きっとした眼差しもやはり迫力に欠ける。
「祐仁を堕落させる。おれは命令に従うだけのラブドールじゃない。おれの意思はおれのものだ。祐仁はそう知るべきだ」
 囁くように云い、颯天は祐仁のくちびるをふさぐ。
 くちびるの間に舌を割りこませても、咬み合わせた歯が邪魔をする。祐仁の意地か羞恥心か。颯天はくちびるをふさいだまま、祐仁の脚の間に右膝を割りいれた。次いで左膝もそうすると、祐仁の脚を左右に広げていく。再度、右の指先に白濁した粘液を塗し、颯天は中指を臀部の谷間に忍ばせた。
 んんっ。
 後孔を探り当て、入り口のしわに触れたとたん、祐仁はびくっとしてこもった喘ぎ声を吐き、颯天の思惑どおり、伴って口も開いた。すかさず颯天は舌を差し入れた。
 勢い余って奥深くに届いたのかもしれない。祐仁は躰をうねらせながら嘔吐くように呻き、反動で颯天の舌を呑みこむように祐仁の舌がうごめいた。舌だけでなく躰が吸いこまれそうな感覚に陶酔し、今度は颯天が呻いた。痙攣する舌が祐仁の感覚を刺激してまた嘔吐く。
 最初は苦しい嘔吐感も次第に快感に変わることを、颯天は身をもって知っている。おそらくは祐仁もそうだ。拒むなら、颯天の舌を咬み切ればいい。けれど、そうはせず、祐仁の口は呆けたように緩く開いていく。
 キスだけでふたりとも昇りつめるかもしれない。それぞれに口の端から唾液をこぼしながら、甘美なキスを貪った。襲っているのは颯天のほうなのにやめることはかなわず、快楽に引きこまれていく。濡れたキス音のなか祐仁が激しく喘ぎ、颯天の舌に強く絡みついた。後孔に当てた指先に力が入って、祐仁の体内に潜りこむ。直後、祐仁は腰を浮かせてぶるっとふるわせると、オスの口から蜜を噴いた。祐仁は完全に脱力して、されるがまま颯天の口の中で荒っぽく呼吸を繰り返す。颯天はゆっくりと顔を上げた。
「すごいな、祐仁。キスで逝った」
「一端の、口を利く」
 祐仁は荒い呼吸の合間に痞えながら責めるように云う。
「まえに祐仁は云ったよな、育てる側になるために愛人やってたって。おれも男娼として何が快感か、どうすれば気持ちいいか、嫌というほど知ってる。だから祐仁も覚悟したほうがいい」
 祐仁は鼻先で笑った。ばかにするのではなく、二度も颯天から逝かされたくせに、奪ったと思った自尊心を乱すことなく、できるのかと挑発めいている。
 望むところだ。そんな意地を覚えながら颯天は躰を後ろにずらして、祐仁の脚をつかみ膝を立てさせた。少し感じた抵抗は羞恥心からくるものか、颯天は無遠慮に後孔に指の腹を当てる。ぴくりとした生理的反応を快楽に変えるべく、指先をうごめかした。小さくまわすように捏ねながら、入り口を揉みこんでいく。
 ふ、くっ。
 祐仁は喘ぎ声になる寸前で堪えたのだろうが、防ぎきれず、かえって艶めかしく響かせる。それだけ感じているということで、颯天は、つぷりと指先を中に潜らせた。すると、祐仁の腰がうねり、颯天の指が呑みこまれていく。
 それは無意識のしぐさなのか、腸壁の誘導に逆らわず颯天は指を奥へと進めた。体内は思っていたよりも熱がこもり、指先に絡んでくる。自分の快楽点を思いだしながら、ゆっくりと弄っていると、ふいに祐仁が腰を跳ねた。伴ってオスもぴくりと反応した。少し指の位置をずらし、またそこに戻すと、同じ反応が現れる。
「ここだ」
 颯天は独り言のようにつぶやき、快楽点をゆっくりと摩撫する。
 くぅ――っ。
 祐仁はつらそうに呻き、腰を浮かせた。オスは芯を確かにしておもしろいようにだんだんと起ちあがっていく。
 いや、おもしろいというよりも、官能をくすぐられ煽られる。颯天はオスの根もとをぎゅっとつかみ、顔を寄せていった。そうしながら上目遣いで祐仁の顔を見やると目が合う。
 ふっ。
 颯天が口を開いたとたん、祐仁がその刺激を予測して喘いだ。今度は焦らすことなく、颯天は突端を頬張った。口の中で祐仁のオスは一気に膨張して喉の奥を突いてくる。伴って、颯天はそこに吸いついた。自ずと舌がオスに巻きつき、祐仁は嬌声を放った。
 指先をうごめかしつつ、祐仁のオスを軽く吸いあげるようにしながら舌で孔口をまさぐる。
 うぐっ。
 祐仁は痙攣するように腰を揺らし、孔口からは塩辛いような蜜液が滲みでてくる。オスの根もとをつかんだまま、親指で裏筋をつーっと撫でれば、祐仁は腰をせりあげる。逃れようとしているのか、颯天は逆手にとってオスを呑みこみ激しく吸引した。
 どくんとオスが脈を打つ。
 ぐ、ああっ。
 ぶるぶると下半身がふるえ、また祐仁が逝くまでにそう時間はかからないのかもしれない。けれど、颯天は今度は簡単にそうさせないつもりだった。
 颯天はオスを奥深くまで呑みこみ、そうして吸引するように顔を上げると、いったん口から出して孔口を抉るように舌で弄る。それを繰り返して何度めか、孔口に舌をねじ込むようにすると、ぷしゅっと液体がわずかに飛び散った。粘液ではなく、さらっとしていて、それはあの日のように潮を噴く前兆に違いない。
 颯天はくすぐるように孔口で舌をうごめかす。祐仁は躰をよじりながら腰を揺さぶってくる。
「やめて、くれ……」
 朦朧とした声が颯天に希う。
「だめだ。祐仁をめちゃくちゃにする。あのときのように」
 オスを咥えると、ますます硬く太くなっている。目覚めた加虐性は高みに達し、颯天はオスの根もとをしっかりとつかんだ。吸着しながら舌を激しく動かし、指は腸道を広げるようにほぐしながら弱点を責め立てる。
 どれくらいそうしていたのか、吸着するたびにジュルジュルッと淫らな音が立つほど蜜は止めどなく溢れ続ける。舐めきれなかった蜜は孔口へと流れて、そこもまた水浸しの音を嫌らしく繰りだしている。祐仁のオスは破裂しそうなほど太く充血していった。祐仁の吐精感が極まっているのは明らかだ。根もとの締めつけによって不可能なまま、快感だけが膨大になっていく。
「ぐっ、ふっ……颯天、無理だっ」
 祐仁は弱音を吐く。目を上向けて見上げても、いまや颯天を見返す余裕すらもないようで、のぼせた表情のもと、喘いで閉じることのままならない口の端からは唾液が伝っていた。
「逝きたい?」
 颯天は顔を上げ、腸壁を摩撫しながら訊ねた。
「やめ、てく……れ……」
「おれがそう云ってもやめてくれなかった。これはお返しだって云ったはずだ」
「放せ……」
 力なくも祐仁は命じた。そうすれば颯天が云うことを聞くと思っているのか。
「あいにくと、いまはおれに主導権があるんだ。けど、放してみようかな。そうしたら祐仁はどうなる?」
 その問いに応えたのは祐仁のオスだった。怯えたようにひくつく。
 颯天は後孔から指を抜き、孔口にその指の先を当てた。ぐりぐりと弄ると精悍な躰が頼りなく見えるほど全身で痙攣しだす。
「う、あっ、……や、め、ろ……っ」
「やめない。思いっきり逝くのがみたいんだ。祐仁、放すよ」
 あえて教えると、祐仁は息を呑んだ。自分の躰のことだ、祐仁はどうなるかわかっていて、半分は怖れている。あとの半分は――。
 突端に舌を這わせ、孔口に爪を立てるようにしながら抉るように揉みこんだ。
 うっああ――っ。
 祐仁が身悶えするさなか、颯天は締めつけていた手を一気に緩めた。祐仁がかっと目を見開く。
「ぐぅ、わぁあああ――っ」
 ぷしゅと孔口に当てた指のすき間から蜜を噴き、颯天は指先をそこで大きくうごめかした。出口が開放された瞬間、淫水が激しく噴きだした。そのなかに混じって白濁した蜜が迸る。祐仁はがくんがくんと何度も腰を突きあげた。颯天はその間も嬲り続け、噴出は一向におさまらない。颯天の手がべとべとに濡れそぼち、祐仁自らをも濡らし、そしてシーツも淫水が浮くほど濡れていく。
「だ、めだ……」
 祐仁の目は焦点が合っていない。快楽の影響か、くちびるすらもふるわせ、その面持ちはあのときよりも、ずっと淫蕩に見えた。
 颯天はオスの根もとをつかみ、搾るようにしてゆっくりと突端へ滑らせた。
 あ、あ、あ、……くぅっ――。
 乱れた嬌声は、ぴゅっと最後の蜜を吐きだしたのち、ぷっつりと途絶えた。どさりと腰がベッドに落ちる。声は尽きても躰はうねり、跳ねている。
 颯天は伸しかかるように前にのめって祐仁を真上から見下ろした。
「祐仁、どうだ」
 荒っぽい息が颯天のくちびるまで届いて、ふたりの呼吸が絡み、空気を熱く湿らせる。
「男娼の、くせに、やって、くれる」
 だらしない姿を見せても祐仁はやはり祐仁だ。颯天は可笑しそうに笑う。
「まだ終わってない。おれは祐仁に処女を捧げた。もう一つ、童貞も捧げる」
「颯天、もう……」
「無理じゃない。おれと一緒で底なしだって知ってる」
 颯天は躰を起こすと、祐仁のぐったりした脚をつかんでさらに開いた。自分のモノをつかんで祐仁の後孔に宛がう。祐仁を責めている間、そのあられもない乱れた姿を見て颯天も快楽を感じていた。支える必要もないほど硬く太くなり、先端から蜜を溢れさせてしとどに濡れている。わざわざローションをつける必要もなく、自分の蜜をオスに塗し、そうして腰を押しつけた。
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