《勇者》兼《魔王の嫁》

いとま子

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14.嫁に会いに来て何が悪い※

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「……魔王様にも、レイルの謙虚さを見習って欲しいなあ……」
「なにか言ったか?」
「いや、毎晩来る気なのかなって」
「当たり前だろう。自分の嫁に会いに来て何が悪い」

 と、悪びれる様子もなくソティラスはベッドに腰掛ける。
 レイルと別れ、今後の作戦でも考えようかと思ったが、ベッドに横になると、沈み込むように体が重くなった。いつの間にか魔王が側にいたが、驚く元気も怒る気力もない。

「疲れてんだ。嫁の身体を労わるのも大切なんじゃないのか」

 魔王のせいか、近頃は何もしていないにも関わらず、旅をしていた時よりも余計に身体がだるい。敵に囲まれる場で知らずと気を張っているからだろうか、一日が終わる頃にはくたくたになっている。
 一秒でも長く早く寝たいルーチェの心中などお構いなしに、ベッドに横になった途端ソティラスがやってきたのだ。

「確かにそうかもしれないな。大切な体、もはや自分ひとりだけのものとは思うな」

 受け取り方次第で恐ろしい台詞を吐くソティラス、言葉とは裏腹に表情は不服そうだ。

「だが、私も一日働いている間、お前に会いに行くのを我慢しているのだ。夜ぐらい、会いにきてもかまわないだろう?」
「じゃあ、目的は達成したわけだな。俺は寝る。じゃあな、おやすみ、よい夢を」

 身体を反転してソティラスの背を向けると目をつぶった。ここまでそっけない態度を取ればソティラスも手を出さないだろう。

「……そうか、ならば仕方が無いな」

 ソティラスはいたく残念そうに声を落とす。そのまま立ち去ってくれるのを夢見心地で待っていたが、しばらく待っても立ち去る気配が無いことに、嫌な予感を覚え始めたときだった。

「では、前のように眠っていてかまわない」

 ソティラスは覆いかぶさり、ルーチェを見下ろした。

「私も勝手にさせてもらおう」
「はっ? ちょ、」

 予想外の出来事に……いやもう予想通りと言うべきか、ソティラスはにやりと笑うと、ルーチェの身体に手を伸ばし、シャツのボタンに手をかけた。

「そう冷たい態度を取るのは、照れ隠しなのであろう?」
「んなわけあるか!」

 あまりの怒りに眠気は吹き飛び、夜も遅いというのにルーチェは声を荒げた。

「たまにはいい夢ぐらい見させてくれよ!」

 最後はほとほと懇願に近い叫びだったが聞き入れられることは無かった。今宵も悪夢だ。結局いつものごとく魔王の手に落ちることになるらしい。

「ルーチェ、勘違いしているようだが、別に性欲を満たすためだけにお前に触れているわけではない。ゲーティアで過ごすには人間の身体だと少しつらいからな。これは私の力を中に注ぐことで、お前の身体をこの地に慣れさせているのだ」
「……でも、服脱がす必要ないって前に言ってたよな。どっちみち効果は一緒なんだろ?」
「一緒ではない。私のやる気が違う」
「あんたの都合なんか知らねえよ! 結局、自分の性欲を満たすためじゃ――っ」

 ソティラスはルーチェの唇に人差し指を添えた。

「お前も、気持ちいいほうがいいだろう?」

 ソティラスはルーチェの頬を包み込み、唇を重ねる。彼の舌が歯列を割ったとき、ルーチェは顎を少し上げた。前よりも、キスしながらうまく呼吸ができるようになった気がする。長い舌が口内を味わっているときも、あまり舌は動かさないほうがいいことも覚えてしまった。
 唇が触れあうたびに身体の奥が熱くなり、とろりと溶ける感覚がある。すっかりキスでスイッチが入るようになった。身体の芯が炙られたようにだんだんと火照ってくる。
 力を注ぎ込むのにキスをしなければならないのかはわからないが、身体が熱くなり、力が湧いてくるような気がするのは本当だ。

「ふ、ん……ぁ、ん、んっ」

 ルーチェは息苦しくなって、ぐ、とソティラスの裾を握った。口を離し、唇を舐めるソティラスを見ながら、ルーチェは息を整える。

「頬がリンゴのように赤いな。身体が熱くなってきたか」
「……熱くなるのも、力を注がれてるから……?」
「ふふ、それはお前が私との触れあいに興奮しているからだろう?」
「ち、違う、そんなわけっ」

 慌てて否定するルーチェに、ソティラスはくつくつと笑う。

「まったく、素直じゃないな。そこも愛らしいが、嘘はいけない」

 ソティラスはルーチェの中心にそっと手を伸ばした。

「それとも、口づけに夢中で気づいていなかったのか? ならば教えてやろう。お前は、私との口づけに、興奮している」

 噛んで含めるように教えられながら膨らみを撫でられ、ルーチェは耳まで赤く染めた。全身の滾った血液が下腹部へと集まっていく。

「ここも元気になったな。これだけ体力が回復すれば、もう営みの最中に寝落ちすることもなかろう」
「ん……や、ぁ、触んな……っ」
「自分では処理しないのか? もうこんなになって、随分と溜まっているようだが。フッ、若いからな。このままで苦しかろう。楽にしてやる」

 ルーチェはぶんぶんと首を振って否定するが、昂ぶりは誤魔化せない。

「案ずるな。私に身を委ねていればよい。……たっぷり注いでやる」

 艶を帯びた低音で囁かれ、ぞくりと背筋が快感に震えた。
 まともに自分で処理していなかったのは事実で、囁きにすら過剰に反応してしまう。
 再びキスをしながら、ソティラスがルーチェの前をくつろげる。キスをされると力が抜けて、頭がぼうっとする。認めたくはないが、ソティラスとキスするたびに興奮するのは本当だ。

(唇が触れあうだけでも気持ちいいのに、直接触られたら、どうなるんだろ……)

 不安と、それを上回る快楽への期待に、ルーチェの心臓は激しく高鳴った。
 ソティラスの大きな手のひらが、ルーチェの屹立を包み込み、ゆっくりと上下に扱き始めた。

「んぁ、あ、あ……ぅ、んっ……ふぁ、あ」

 自然と声が漏れる。唇を噛んでも、鼻にかかる甘い声は漏れ、声を抑えることを叱責するように、ソティラスがキスをして、口をこじ開ける。
 止めて欲しくないのに、想像以上の気持ちよさに戸惑い、縋るようにソティラスの袖を握った。上下に扱くだけではなく、蜜を零すくぼみやくびれも、隅々まで愛撫される。

「ここがいいか? こっちも反応がいいな」
「あっ、あ……わ、わかんな……って、んっ」

 自慰とは触れ方も感じ方も全然違った。すぐに寸前まで追い詰められる。

「待っ……ん、も……出る、から……、は、なして……あっ」
「このまま出していいぞ」
「やっ、……ん、ふっ――んぁああっ」

 キスをされながら一層強く擦り上げられ、ルーチェは激しく腰を痙攣させた。ソティラスの手の中に勢いよく吐き出される。その白い蜜を、ソティラスは満足げにぺろりと舐めた。

「ふむ、私のほうが注がれたな。だいぶ体力も戻っているようだ」

 肩口まで赤く染めて脱力するルーチェに、ソティラスは楽しそうに再び手を伸ばした。

「この際だ。私が力を注いだ分、すべて吐き出させよう」
「だから寝かせてくれって!」

 ソティラスの手遊びは、ルーチェが寝落ちするまで続いた。
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